ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年11月11日
評価年月日:令和4年7月22日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士
1 案件名
1-1 供与国名
セントルシア
1-2 案件名
ショゼール漁港改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、セントルシア南西部に位置するショゼール漁港において、堆砂軽減のための施設改善等を行うことにより、同漁港利用の効率化を図り、もってショゼール地域の水産業の振興に寄与するもの。
供与限度額は、12.63億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)セントルシア(一人当たり国民総所得(GNI)8,790ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、高中所得国に分類される。
- (2)同国においては、年間2,000トンの海産物の水揚げがあり(国際連合食糧農業機関(FAO)、2016年)、これらは、同国民の貴重なタンパク源であり、更には貴重な同国産の食材として同国の観光資源となっている。また、同国において水産業は約2,900人が従事する重要な産業の一つとなっている(FAO、2016年)。
- (3)同国の水産業に対して、我が国は様々な協力を行ってきており、南西部に位置するショゼール漁港も我が国の支援(2001年度無償資金協力「沿岸漁業振興計画」)により整備された漁港の一つであり、事業実施後、市場施設、漁具保管庫等の付帯設備なども含め同国の主要な漁港として利用されている。
- (4)しかしながら、同漁港は、港口部や港内に堆砂が発生しており、漁船が円滑に進入・係留できず、水揚げ作業に障害が生じている。これまで同国政府は、跳堤の建設や港口部や港内の浚渫作業を継続的に実施するなどの対策を行い、漁港機能及び漁業活動を維持してきたが、2010年のハリケーンの影響による陸上の土砂の海中への想定を越える流出増加等もあり、当初の想定よりも頻繁な浚渫作業が必要となっており、これに要する経費が同国にとって重い負担となっている。
- (5)同国政府は、2022年を目標年とする「国家漁業計画2013」において、経済的に利用可能な水産資源を最大限利用することを掲げており、本計画はその趣旨に合致するものである。また、我が国の対セントルシア国別開発協力方針(2016年9月)においても、「脆弱性の克服」を基本方針とした上で、「水産」を重点分野の1つとして定めており、本計画は同開発協力方針にも合致するとともに、SDGsゴール1(貧困削減)、ゴール2(食料安全保障)及びゴール14(海洋資源)にも貢献するものである。
- (6)我が国は、2014年11月に開催された第4回日・カリコム外相会合において採択された日・カリコム共同閣僚声明において、第一の柱として「小島嶼開発途上国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力」を掲げており、2021年7月の第7回日・カリコム外相会合でも右協力の進展を確認していることから、同国政府の重要課題である本計画への我が国の協力を通して、同国との二国間関係を更に強化することが期待できる。
2-2 効率性
- (1)セントルシア政府の要望を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、浚渫機材供与は計画に含まないこととするなど、事業目的達成のために必要最小限のスコープとした。
- (2)現地調査の期間に整備した浚渫工事用仮設道路を本体工事にて建造する第2防砂堤の基礎構造として活用するとともに、現地調達が容易でありコストの縮減につながる陸上機械による施工計画とすることで、コスト削減を図った。
2-3 有効性
- 本計画の実施により、2021年実績値と事業完成3年後の2030年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。
- (1)ショゼール漁港港内への年間漂砂流入量が、約7,000㎥から約500㎥に減少する。
- (2)ショゼール漁港年間水揚げ量が、59トン(2015年~2019年平均値)から68トンに増加する。
- (3)漁船の浜揚げ労務が軽減され、漁業が効率化される。
- (4)堆砂を原因とする漁船及びエンジンの破損がなくなり、漁業経費負担が軽減される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)セントルシア政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)