ODA(政府開発援助)

令和4年9月26日

評価年月日:令和4年5月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里

1 案件名

1-1 供与国名

 ネパール

1-2 案件名

 タライ東部地域における灌漑施設改修計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、タライ平野東部のサプタリ郡チャンドラナハル灌漑地区において、既存灌漑施設の改修を実施することにより、灌漑用水の効率的利用及び安定的活用を図り、もって同地域の農業生産性の向上を通じてネパールの経済成長及び貧困削減に寄与するもの。
 供与限度額は22.56億円

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる農業セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への好ましくない影響は重大でないと判断されるため、カテゴリBに該当する。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ネパール(一人あたり国民総所得(GNI)1,190ドル(2020年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は、インドと中国の間に位置しており、同国における民主主義の定着、安定と繁栄は、我が国にとって、政治的・経済的に重要な南西アジア地域全体の安定を確保する上で重要である。かかる観点から我が国は、長年主要ドナーとして継続的に同国を支援している。
  • (3)同国は、依然として社会経済インフラ不足等の多くの開発課題を抱えており、農業の生産性向上は同国が取り組んでいる優先課題の1つである。特に、農業は就労人口の約3分の2が従事し、GDPの約26%を占める基幹産業であるものの、灌漑施設の老朽化が進んでおり、施設の整備は急務となっている。
  • (4)同国の重要な穀倉地帯であるサプタリ郡チャンドラナハル灌漑地区は、タライ平野に位置する大規模灌漑システム25か所のうち、受益農家数が2番目に多い(3.5万世帯)灌漑地区であるが、1927年に整備された灌漑システムであるため、幹線水路施設の老朽化が深刻な状態にある。施設の老朽化により安全性に課題があるほか、用水路サイホン及び横断排水工から漏水があるため灌漑地区全体で計画どおりの水供給を受けられなくなっている。また、レンガ、コンクリートの劣化に伴う施設崩落によって通水が停止する危険性が高く、灌漑用水の安定的な供給に課題が生じている。
  • (5)同国は、国家開発計画である第15次5か年計画(2019/20-2023/24年度)において、灌漑整備を通じた農業生産性向上の改善を政策目標の1つとして掲げており、本件支援はその趣旨に合致するものである。また、我が国は、対ネパール国別開発協力方針(2021年9月)において、「経済成長及び貧困削減」を重点分野の1つに掲げており、灌漑整備に関する本計画は、同方針にも合致するものである。
  • (6)本計画の実施は、ネパールの生活改善に直結する社会・経済基盤整備であり、開発協力の観点から意義があり、また、同国政府が重視する農業分野の課題解決に貢献するため、同国政府の期待に応えることで二国間関係の更なる強化につながり、外交的意義も大きい。さらに、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール1(貧困削減)、ゴール2(飢餓撲滅)にも貢献すると考えられることから、事業の実施を支援する必要性は高い。

2-2 効率性

  • (1)協力対象となる構造物について、現地調査等で検討を行った結果、要請のあった構造物全てを対象とするのではなく、先方政府にて対処可能な部分は先方政府負担と整理し、支援の効率化を図っている。
  • (2)また、技術協力プロジェクト「タライ平野灌漑農業振興プロジェクト」(2019年~2025年)との連携によって施設の維持管理能力及び水利組合の能力が強化されることが期待される。
  • (3)さらに、技術協力プロジェクト「種子生産・供給・品質管理システム強化プロジェクト」(2022年~2026年)では、イネ種子の生産・供給・品質管理のシステム強化を図る予定であるが、同プロジェクトで生産される高品質の種子が本計画の灌漑地区で用いられることにより、イネの生産性向上が想定されることから、本計画との相乗効果が期待される。

2-3 有効性

  • 本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成から3年後の2028年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
  • (1)灌漑面積は、雨期作(米)では6,500ヘクタールから7,800ヘクタール、乾期作(小麦)では4,320ヘクタールから5,200ヘクタールに拡大することが期待される。
  • (2)収穫量は、雨期作(米)では30,900トンから32,850トン、乾期作(小麦)では8,900トンから10,700トンに増加することが期待される。
  • (3)対象地域の灌漑施設の崩落を防ぐことによる灌漑用水の安定的供給が実現されることに加え、水路横断橋の整備により、チャンドラナハル灌漑システム内及び近隣住民の安全性・利便性が確保されることが期待される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ネパール政府からの要請書
  • (2)ネパール国別評価報告書(2012年度・第三者評価)
  • (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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