ODA(政府開発援助)

令和4年4月5日

評価年月日:令和4年3月14日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里

1 案件概要

(1)供与国名

 インド

(2)案件名

 チェンナイ地下鉄建設計画(フェーズ2)(第二期)

(3)目的・事業内容

 インド南部タミル・ナド州のチェンナイ都市圏において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通渋滞の緩和と自動車公害減少を支援し、地域経済の発展及び都市環境の改善を通じて、連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与し、また、気候変動対策に資するものである。
 整備区間は、チェンナイ地下鉄の3号線のマドハヴァラム・ミルク・コロニー駅からショリンガナルール駅間(約35キロメートル/40駅)及び5号線のマドハヴァラム・ミルク・コロニー駅からチェンナイ・モフシル・バス・テルミヌス駅間(約16キロメートル/17駅)である。
 今次は、本計画の第二期として2024年3月までの資金需要に対応するもの。

主要事業内容
  • (ア)土木・建築工事
  • (イ)電気・機械工事
  • (ウ)軌道工事
  • (エ)電力設備工事
  • (オ)信号・通信関連工事
  • (カ)自動料金収受システム整備、プラットホームスクリーンドア
  • (キ)車両調達
  • (ク)保守・車両保守基地工事等
  • (ケ)駅構内・駅前開発、交通結節点整備等
  • (コ)コンサルティング・サービス(基本及び詳細設計、詳細設計レビュー、施工監理、環境社会配慮等)
  円借款対象部分は、上記のうち、(ア)~(エ)、(キ)~(コ)の全てと、(オ)及び(カ)の一部。
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
730.00億円 0.20% 40(12)年 タイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる鉄道セクターに該当するため、カテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は、インド国内法上作成が義務付けられていないものの、実施機関により2017年11月に承認済みである。
用地取得及び住民移転
 本計画では、46世帯の住民移転、73ヘクタールの用地取得及び182世帯の経済的移転を伴い、住民移転及び用地取得はインド新土地法及びタミル・ナド州政府の住民移転手続き及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に基づき手続が進められる。なお、本計画実施に対し、住民から特段の反対意見は確認されていない。
外部要因リスク
 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じうる可能性があることから、その対策として、実施機関が案件形成時及び案件実施時に取り組むべき全36項目の対策リストに合意済みである。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進み、自動車の登録台数急増に伴う道路交通需要が拡大する一方で、公共交通インフラの整備が追いついていない。特に、チェンナイ市を含む大都市圏では、道路交通需要の拡大に伴う交通渋滞が重大な問題となっており、経済損失並びに大気汚染・騒音等の自動車公害による健康被害が深刻化している。同国政府はこれらの課題に対応するため、近年の経済成長に伴う輸送需要への対応・交通渋滞の緩和のため、安全性・エネルギー効率等の観点も踏まえつつ、公共交通システムの整備を推進していく方針を掲げている。
 タミル・ナド州チェンナイ都市圏は、インド第4位の人口と第1位の人口密度を有する人口密都市である。人口増加に伴う自動車登録台数の伸びは著しく(2001年の126万台から2016年は494万台に)、市内での車両の平均時速は時速約17キロメートルと、交通渋滞が深刻化している。渋滞による経済損失、大気汚染や騒音といった自動車に起因する公害対策のために、大量高速輸送システムの整備が必要である。
我が国の基本政策との関係
 インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力及び運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえ、2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、(a)連結性の強化、(b)産業競争力の強化及び(c)持続的で包摂的な成長への支援を掲げており、本計画は3つの重点目標のいずれにも関連し、同方針に合致するものである。
 また、インドとは「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下で関係強化を着実に進めており、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化にもつながり、外交上の意義が高い。

(2)効率性

 「デリー高速輸送システム(I)-(VI)」等の先行事業の経験等からも、複数の公共交通機関が体系的な都市交通を構成するよう互いに補完し、収益性を確保しながら公共交通機関全体として効率よく運営されることが重要であることが明らかになっているため、実施機関において、本件地下鉄と支線バスとの連携のとれた運用を進めていく。また、車両・駅での広告、駅構内・周辺スペースの不動産賃貸、キオスクの設置、駅前及び高架下の駐車場管理等を通じて運賃外収入を得ることにより、収益改善が図られる見込みである。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2029年予定)には、当初計画時の2017年比で以下のような成果が期待される。

定量的効果
整備区間において、運行数408本/日・1方向、乗客輸送量1,130万人・キロメートル/日、旅客収入4,870万ルピー/日となる見込みである。(いずれも4号線完成を前提としない上での整備区間を対象とした目標値。)
定性的効果
 本計画の実施により、騒音レベルの緩和、大気汚染の抑制、移動の定時制確保による利便性の向上、チェンナイ都市圏の経済発展、地価の上昇、女性の社会進出促進等に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 インド政府からの要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)JICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAから提出された資料。
 本計画に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要
借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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