ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年4月5日
評価年月日:令和4年3月14日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
北東州道路網連結性改善計画(フェーズ6)
(3)目的・事業内容
インド北東部地域のトリプラ州コワイからサブルームまでを結ぶ国道208号線について既存道路の改良(バイパスの新設等を含む)を行うことにより、北東部地域内及びインド他地域との連結性の強化に寄与し、また、走行性の向上を通じて気候変動対策に資するものである。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)国道208号線(トリプラ州コワイ~サブルーム間)の改良(既存道路(総延長約140キロメートル、橋梁・排水路等を含む)の改修・拡幅(2車線)及び7か所のバイパスの新設(総延長約22キロメートル)を含む)
- (イ)コンサルティング・サービス(施工監理、環境社会配慮等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 231.29億円 1.20% 30(10)年 アンタイド - (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター、影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当するため、カテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は、インド国内法上作成が義務付けられていないものの、2020年11月に実施機関側にて作成済みである。 - イ
- 用地取得及び住民移転
本計画では、約400haの用地取得、463世帯の非自発的住民移転を伴うため、同国国内手続き及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に基づき、取得が行われる予定である。なお、本計画に係る住民協議において住民から本計画実施に対する特段の反対意見がないことを確認している。 - ウ
- 外部要因リスク
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じうる可能性があることから、その対策として、実施機関が案件形成時及び案件実施時に取り組むべき全36項目の対策リストに合意済みである。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドでは、国道開発計画が2001年から道路交通省により開始され、首都デリー、西部のムンバイ、東部のコルカタ、そして南東部のチェンナイを結ぶ「黄金の四角形」を始めとする大都市間の道路整備が進められている。2015年には、2001年次計画の全計画(7,522キロメートル)の道路建設工事が終了する等、主要幹線道路の整備が進みつつある。
一方、北東部地域の道路の舗装率は34.1パーセント(全国平均:71.4パーセント)、国道における2車線以上道路の比率は48.0パーセント(同70.9パーセント)であり、土砂災害対策のための斜面対策や排水路整備が進んでいない地域も多くみられるなど、道路整備の遅れが課題となっている。このような道路整備の遅れは、同地域内及び国内外他地域との安定した人流・物流を阻害し、経済開発の遅れの一因となっている。増加する交通需要への対応と域内外のより円滑な流通の促進による経済発展のため、北東部地域では経済活動の基盤となる道路や橋梁の整備を始めとする道路網改善が急務となっている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力及び運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえ、2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、(a)連結性の強化、(b)産業競争力の強化及び(c)持続的で包摂的な成長への支援を掲げ、(a)「連結性の強化」の中で特に北東部等の地域の連結性の促進を位置付けており、本計画は同方針に合致するものである。
また、インドとは「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下で関係強化を着実に進めており、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化にもつながり、外交上の意義が高い。
(2)効率性
インド円借款案件・道路セクターの先行事業において用地取得・住民移転との兼ね合いで事業完了までに多くの時間を費やした経験等から、実施機関と州政府・NGOとの連携、用地取得の進捗状況等を慎重にフォローすることが重要との教訓を得ている。本計画では先行事業等の教訓を活かし、先行事業において主として実施機関が作成していた住民移転計画を、本計画では実施機関が州政府の協力を受け作成しており、計画段階にて双方間で十分に情報共有がなされていることを確認済みである。また、用地取得・住民移転に関して、移転完了までの間、実施機関にて進捗状況及び移転後の生活状況に係るモニタリング調査を行い、同結果の定期的な報告を受ける体制を構築することとしている。
(3)有効性
本計画の実施により、事業完成2年後(2028年)には、2020年比で以下のような成果が期待される。
- ア
- 定量的効果
- (ア)対象区間の平均移動時間が、245分から115分に短縮される。
- (イ)対象区間の平均移動コストが、乗用車の場合は23.50ルピー/キロメートルから15.84ルピー/キロメートル、トラックの場合は58.62ルピー/キロメートルから42.04ルピー/キロメートルに削減される。
- イ
- 定性的効果
国内外・他地域との連結性改善、北東部地域の社会経済発展、対象区間の移動快適性の向上等に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
インド政府からの要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
本計画に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、
借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。