ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年12月3日
評価年月日:平成30年10月18日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
アフガニスタン・イスラム共和国(以下,「アフガニスタン」という。)
1-2 案件名
小児感染症予防計画(国連児童基金(UNICEF)連携)
1-3 目的・事業内容
本計画は,アフガニスタンで2019年に予定されている定期予防接種活動及びポリオワクチン接種キャンペーンに必要なワクチン調達等の支援を行うことにより,着実な接種活動の実施を通じ乳幼児及び女性の疾病率及び死亡率の低減を図り,もってアフガニスタンの持続的・自立的発展に寄与するもの。供与限度額は10.09億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
今後アフガニスタンの治安状況が著しく悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)アフガニスタンは依然としてテロとの闘いの最前線であり,治安,経済,社会面において多くの課題を抱えており,同国(一人あたり国民所得は580ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類されている。
- (2)同国における母子保健指標は,2016年の5歳未満児死亡率は70人/出生1,000人,乳児(1歳未満児)死亡率は53人/出生1,000人,新生児死亡率は40人/出生1,000人,妊産婦死亡率は396人/出生10万人であるなど,世界で最も状況が悪い国の一つである。これらの指標については,定期予防接種の徹底により改善することが可能とされている一方,医療施設の不足,治安の問題による医療施設へのアクセス困難,コミュニティの予防接種に対する意識・理解の低さ等により,予防接種率が低い。
- (3)また,アフガニスタンは,パキスタン,ナイジェリアとともに,世界で3か国残るポリオ野生株の常在国であり,国際社会からも早期のポリオ撲滅が求められている。同国における発症例は,これまでの,定期予防接種活動及びポリオワクチン接種キャンペーンを中心とした取組の成果により,2015年と比して2018年は半減しているが,治安悪化により,定期予防接種活動及びポリオワクチン接種キャンペーンを継続的に実施できない地域が存在することなどから,撲滅には至っていない。
- (4)これまで我が国を始めとする国際社会は,UNICEFやWHO等と協力して,アフガニスタンにおける結核,麻疹等の感染症予防対策及びポリオ根絶に向けた取組を支援してきている。我が国は直近では平成29年度に同国に対して無償資金協力「小児感染症予防計画」を実施しているが,引き続き国際的な取組が必要な状況にある。
- (5)このような状況を踏まえ,アフガニスタン政府及びUNICEFから,定期予防接種活動及びポリオワクチン接種キャンペーンにおいて必要となるワクチン等の調達にかかる支援要請が我が国に対してなされた。
- (6)我が国はアフガニスタンの国別援助方針(2013年4月)において,「持続的・自立的発展のための支援」を重点分野に定めており,同国の経済成長を支える人づくり支援を継続するため,教育や保健分野も重視するとしており,本計画は同援助方針に合致する。
- (7)2012年7月,我が国及びアフガニスタン政府の共催で開催された「アフガニスタンに関する東京会合」において,我が国を含む国際社会全体として,同国の自立に向けた支援を行うことを確認し,その一環として,開発分野においては,同国の経済戦略を踏まえ,「農業」,「インフラ整備」及び「人づくり」の3つの柱を重視することを表明した。本計画は,その柱の一つである人づくりを支援するものである。
- (8)さらに,我が国は2016年5月のG7伊勢志摩サミットの機会に,中東地域安定のため3年間で総額約60億ドルの包括的支援を表明しており,本計画はその一環として実施するものである。
2-2 効率性
UNICEFは,アフガニスタン政府に代わりワクチン購入資金の管理と調達を担っており,ワクチン調達にかかるニーズに迅速に対応できる機関である。また,治安リスクが高いアフガニスタンにおいて効果的な支援を行うためには,同国政府各機関,地方政府,現地コミュニティ等とのネットワークを持ち,現地での定期予防接種及びポリオワクチン接種キャンペーンについて十分な活動実績と知見を有するUNICEFと連携して本計画を実施することが効率的である。
2-3 有効性
- (1)定期予防接種活動において必要となるワクチン調達を支援することにより,約128万人の1歳未満児及び285万人の妊娠可能な年齢層の女性への接種が可能となる。
- (2)ポリオワクチン接種キャンペーンにおいて必要となるワクチン調達を支援することにより,計1,030万人の5歳未満児の子どもへのポリオワクチン接種が可能となる。
- (3)定期予防接種及びポリオワクチン接種キャンペーンの着実な実施により,予防接種により予防可能な疾患による感染・死亡を防ぎ,アフガニスタン全国におけるポリオ等小児感染症の予防・撲滅に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- アフガニスタン政府からの要請書
- UNICEFからの要請書