ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年7月13日
評価年月日:平成28年4月25日
評価責任者:国別開発協力第1課長 原 圭一
1 案件名
1-1 供与国名
キリバス共和国
1-2 案件名
ニッポン・コーズウェイ改修計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,国際港が位置するベシオ島と行政機関が所在し住民が多く居住するバイリキ島を結ぶ唯一の道路であるニッポン・コーズウェイを全面的に改修することにより,国民の安全なライフラインの確保を図り,もって環境に配慮した持続的経済成長の達成と国民の生活水準の向上に寄与することを目的としている。供与限度額は38.05億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
キリバス政府による建設許可取得,工事仮設用地の確保等,先方負担事項の遵守。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)キリバスは,太平洋上に点在する33の環礁島から構成されており,世界第3位の広大な排他的経済水域(355万km2)を有している。国土が広大な地域に散らばるという地理的条件を抱える同国にとって,コーズウェイ等の島嶼間移動のためのインフラ整備は,国民生活及び経済活動を維持・発展していく上で不可欠である。同国政府は,「キリバス開発計画2012-2015」の中で,インフラ整備を重点分野として位置付け,老朽化した道路等の再整備について優先的に取り組むこととしている。
- (2)ニッポン・コーズウェイは,同国唯一の国際港が位置するベシオ島と,行政機関が所在し住民が多く居住するバイリキ島を結ぶ唯一の道路である。本コーズウェイは,1980年代に我が国の無償資金協力により整備されたが,老朽化や気候変動の影響を背景として,高潮等による大規模な崩落が発生し度々通行規制がかけられるなど,同国の物流及び交通の安定的確保に大きな支障を来している。近年では,2015年3月の豪雨被害により約15箇所の護岸崩壊が発生し,その復旧工事により年間約20日間程度の片側交互通行規制が敷かれるなど,円滑な交通に支障を来している。また,橋梁部の幅員が本線部に比べて狭く,通行車両や歩行者にとって安全上の課題を抱えている。
- (3)第7回太平洋・島サミットで採択された「福島・いわき宣言」の中では,太平洋地域において気候変動と災害に強靱な開発を行うために,自然災害に強靱な経済社会インフラの整備等にかかる支援を行う意図が表明されており,また,対キリバス共和国国別援助方針においては,重点分野として「脆弱性の克服」を定めており,本計画はこれらに合致する。
2-2 効率性
- (1)日本が整備した同国唯一の国際港であるベシオ港と首都を結ぶ唯一の道路を整備することにより高い相乗効果をもたらす。
- (2)世界銀行,アジア開発銀行,豪州の3者が共同で,ベシオ・バイリキ両島が面するタラワ環礁における道路補修に係る事業を実施しており,同事業と整合性のある計画を実施することにより,本計画の目標をより効率的に達成する。
2-3 有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)事業完成後3年目(2022年)に,自然災害による年間通行規制日数が20日(2015年;護岸崩壊による片側交互通行規制)から0日に低減する。
- (2)事業完成後3年目(2022年)に,護岸崩壊箇所が年15箇所(2015年)から0箇所に低減する。
- (3)事業完成後3年目(2022年)に,通行車両の平均走行速度が,20km/h(2015年)から40km/hに向上する。
- (4)ニッポン・コーズウェイの改修により,通年安定的なライフラインが確保されるとともに,ベシオ島とバイリキ島の人や物資の移動が年間を通じて安全かつ円滑に行われることが期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)キリバス政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)平成20年度外務省第三者評価 太平洋島嶼国国別評価
- (4)平成27年度外務省ODA評価 太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価