ODA(政府開発援助)

平成28年6月30日

評価年月日:平成28年6月27日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国

(2)案件名

クロスボーダー道路網整備計画(バングラデシュ)

(3)目的・事業内容

 バングラデシュ国内において主要な国際幹線道路網を整備するもの。これにより,主要都市区間の交通・物流ネットワークの改善を図り,周辺国との貿易の促進を通じて,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • 既存橋16橋の架け替え,アプローチ道路建設料金所の設置
    • 維持管理車両の調達
    • 軸重計の設置(ベナポール国境及びラムガール国境)
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    286.98億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる道路,橋梁セクターのうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断され,かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため,カテゴリBに該当する。また,本計画における対象橋梁(17橋)毎の環境影響評価(EIA)報告書は,環境局により承認されており,2016年1月にEnvironmental Clearance Certificate(ECC)を取得済みである。
イ 汚染対策
 工事中の影響のうち,大気質については散水,工資材類の飛散防止カバー被覆,工事用重機の適正管理による排ガス・粉じん対策,水質については衛生施設の設置による排水対策,騒音については作業時間の制限や工事用重機の適正管理等の対策を取ることで負の影響を緩和し,国内基準を満たす見込みである。また,工事中に発生する建設廃土については,廃棄物処理計画に従って指定の最終処分場にて処分される。供用後の騒音については,舗装路面の改良を行うことで影響を緩和する。
ウ 自然環境面
 事業対象地域は,国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
エ 社会環境面
 本計画では,17橋総計で約31haの用地取得及び149世帯(755人)の住民移転が発生する見込みのため,同国国内法制度及びJICA環境社会配慮ガイドラインに沿って作成された住民移転計画(ARP)に基づいて手続きが進められる。対象地域住民に対して行った住民協議では,事業に係る特段の反対意見は確認されていない。
オ その他・モニタリング
 本計画は,工事中は施工業者が大気質,騒音,水質等について,供用後は実施機関が騒音等について,モニタリングを行う。また,用地取得・住民移転の実施状況及び生計回復状況等については,実施機関が,ARPを実施する現地NGOと協力してモニタリングを行い,また第三者機関による外部モニタリングも実施する。
カ 外部要因リスク
 政府予算及び他ドナーによる関連案件が遅延なく進捗する。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 南アジア地域は,経済の自由化等の改革を積極的に進めており,インド,バングラデシュを中心に,潜在性の高い経済市場圏として注目を集めている。約17億の人口を有する同地域は,今後,人口ボーナス期を迎え,内需拡大による更なる成長が期待される。他方,同地域の総貿易量に占める域内交易量はわずか3%(Asia Regional Integration Center,2012年)と低水準に留まっており,域内の連結性向上,特に運輸交通インフラの整備が大きな課題となっている。特に,バングラデシュは,周辺国にインド,ミャンマー,ネパール,ブータンを有し,各国を繋ぐ重要な場所に位置していることから,本計画を通じた国際回廊の整備は,同国のみならず地域全体の安定及び経済発展に資するものとして期待が高い。道路輸送は,同地域の貨物量・旅客数の7割を占める主要な運輸交通手段であり,アジアハイウェイ等,複数の国際回廊が存在する。しかし,多くの区間では通関及び国境手続の非効率さといったソフト面の問題に加え,国内及び国境周辺の道路・橋梁の劣化・未整備等が要因となり,国際回廊として十分機能しておらず,旅客・貨物輸送の障害となっている。こうした状況を踏まえ,同地域では複数の地域連携枠組みに基づいた広域運輸交通整備計画が策定され,ソフト・ハード両面からインフラ整備が進められている。本計画の対象区間は,右計画及び同国の「複合一貫輸送政策」(2013年)に基づいて選定されることとなっており,アジアハイウェイ1号線や41号線といった主要都市を結ぶ経済回廊を含むものである。
イ 我が国の基本政策との関係
 バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追及するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などMDGsの達成に貢献)を掲げている。
 本計画は運輸交通網の整備という観点から上記(ア)に合致するとともに,公共輸送の促進を図り,温室効果ガス排出削減に寄与することから,(イ)に含まれる防災・気候変動対策に資する側面も有している。

(2)効率性

 対ラオス及び対タイ円借款「第2メコン国際橋架橋計画」の事後評価等から,広域的な道路網整備を行う場合,国境を跨ぐ広域的・包括的な観点から,他の道路網・交通網の整備状況や開発計画も十分分析・検討した上で案件準備を行うことが重要との教訓が得られている。これを踏まえ,本計画においては,南アジア地域における広域運輸交通整備計画に基づき,他ドナーや同国政府の支援による関連案件との連携も含めて検討し,案件形成を行った。対象橋梁は全て国際幹線道路(アジアハイウェイ1号線及び41号線)の道路上もしくは国境と国際幹線道路を繋ぐ連絡道路上に位置しており,既往円借款案件,ADB及びインド政府による事業(道路・橋梁建設,国境整備等)との相乗効果が期待されている。

(3)有効性

 本計画の実施により,事業完了二年後の2023年には,一日あたりの年間平均交通量19,958台(2015年実績値:8,857台),越境交通の通行台数が一日あたり761台になると見込まれる等,主要都市区間の交通・物流ネットワークの改善を図り,周辺国との貿易の促進を通じて,中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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