ODA(政府開発援助)

政策評価法に基づく事前評価書

平成27年11月30日

評価年月日:平成27年11月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

チェンナイ地下鉄建設計画(第四期)

(3)目的・事業内容

 インド南部タミル・ナド州のチェンナイ都市圏において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって交通混雑の緩和と交通公害減少を通じて地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)土木・建設工事,軌道工事
    • (イ)電気・機械工事,信号・通信工事,自動料金徴収システム等
    • (ウ)車両調達
    • (エ)コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    199.81億円 1.40% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)金利は,一般条件(固定・オプション1)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価)
     本計画は,「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月公布)」に掲げるカテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は2008年5月に作成済み。なお,インド国内法上は,EIA作成義務対象外である。
  • イ 用地取得及び住民移転
     本計画は,77.62haの用地取得と550世帯の住民移転を伴い,同国国内手続に沿って,2014年8月時点で全ての用地取得及び住民移転が完了している。
  • ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     インドでは,近年,急速に都市化が進み,人口増加に伴い自動車登録台数の伸びが著しい一方,公共交通インフラの整備が進んでいない。その結果,交通渋滞が深刻化し,経済的損失及び大気汚染・騒音等の自動車公害による健康被害が生じている。本計画の対象地であるチェンナイ都市圏においても,2001年時点で706万人であった人口が2011年には870万人に急増し,自動車登録台数も2001年から2011年にかけて2倍以上に増加する一方,既存の公共交通機関の輸送能力の向上及び道路網の改善が困難であることから,交通渋滞が悪化し,これに伴う課題が深刻化している。
     以上の現況から,インドにおける輸送需要の伸びへの対応,並びに,安全でエネルギー効率が良く,社会環境保全に資する公共交通システムの整備は急務となっており,インド政府の第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)も,期間中のメトロ事業への投資額を1兆3千億ルピーと見込んでいる。事業地が位置するタミル・ナド州政府も都市交通政策及び都市環境問題対策の大きな柱として,大量高速輸送システムの整備を掲げている。
     このため,本件計画を実施することは,チェンナイ都市圏における交通混雑の緩和と交通公害減少を通じ,同地域経済の発展と都市環境の改善に資し,インドの開発政策とも高い整合性を有しており,本計画のニーズは大きい。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     2006年6月に策定された「国別援助計画」においては,対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進,(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大を掲げている。本計画は,都市交通システムの整備という観点から,インドの経済インフラ整備に資する案件として,上記(a)に合致するものである。

(2)効率性

 本計画は,チェンナイ交通公社(CMRL)の運営・維持管理部門(2014年12月時点の職員数は約250名,全線開業時には約1,000名を見込む)が実施する。CMRLは都市鉄道の運営・維持管理を初めて行うことになるため,本事業で雇用されているコンサルタント,デリーにおいて都市鉄道の操業実績のあるデリーメトロ公社(DMRC),製品を納入する各コントラクター及び自社の研修施設のそれぞれが主体となり新規雇用した職員の育成を行っており,実施体制に関して大きな懸念はないと考えられる。
 また,過去の類似案件の事後評価からは,財務的に自立した事業実施体制の確立が適切な運営・維持管理の確保の観点から重要との教訓を得ている。財務面の強化のためには利用率の向上が不可欠であり,本計画においては,利用率向上のために,地下鉄路線がバス路線と競合しないようにチェンナイ市交通局が調整を行う予定であり,地下鉄の駅をハブとして,バス路線が周辺地に伸びていく構図となっている。また,更なる財務体質強化のために,実施機関は広告・不動産開発等の関連事業を実施する予定である。

(3)有効性

 本計画の実施により,タミル・ナド州チェンナイ都市圏における増加する輸送需要への対応を図り,同都市圏の交通混雑の緩和と交通公害減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2018年)見込み)として,稼働率(92%/年),車両キロ(45.4千km/日),運行数(260本/日・1方向),乗客輸送量(6.1百万人・km/日),旅客収入(24.2百万ルピー/日)等を設定している。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。