ODA(政府開発援助)

政策評価法に基づく事前評価書

平成27年9月3日

評価年月日:平成27年6月17日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓

1 案件名

(1)供与国名

ハイチ共和国

(2)案件名

クロワ・デ・ミッション橋梁及び新線橋梁架け替え計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,ハイチ首都圏から北部の工業重点開発地域へ向かう国道1号線及びそのバイパス道路(新線)上の2橋梁を架け替えることにより,通行の安全性向上と物流の円滑化を図り,ハイチの大地震からの復興と基礎社会サービスの確立に寄与するもの。
 供与限度額は36億7,200万円。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 考慮すべき留意点としては,以下の事項が挙げられる。

  • ア ハイチ政府によって,用地取得,住民移転,公益施設の移設,本計画で架け替える2橋梁の維持管理・メンテナンス等の先方負担事項が適切に行われる必要がある。
  • イ 外部要因として,治安情勢・政治情勢が極度に悪化しないことが必要。

2 無償資金協力の必要性

(1)必要性

  • ア ハイチは西半球の最貧国であり,2010年1月の大地震による経済的被害は同国GDPの約120%に上った。地震前から社会基盤が脆弱な同国は,基礎社会サービスの欠如など多くの開発課題を抱えている。我が国は,大地震発生後,ハイチ支援国会合で表明した総額約1億ドルの支援を超えて,2015年4月までに,計2億ドルを超える支援を実施してきた。
  • イ ハイチの主要幹線道路を含むインフラは,上記大地震により壊滅的な被害を受けた。ハイチ政府は,経済及び行政機能の首都圏への一極集中が未曾有の規模の被害を招いたとの反省に基づき,「ハイチ国家開発戦略計画」(2012年)に基づく地方拠点への機能分散,特に北部地域の工業開発と,首都圏から同地域へ向かう幹線道路の整備を積極的に進めている。本計画で架け替えを行うクロワ・デ・ミッション橋梁及び新線橋梁は,首都圏と北部・中部地域の主要都市を結ぶ国道1号線及びそのバイパス道路である新線上にあり,ハイチの運輸・交通の要所である。しかしながら,老朽化したクロワ・デ・ミッション橋梁は,大地震及び度重なるハリケーンによる損傷が著しく,落橋のリスクが指摘されている。また,国道1号線の混雑を避けてバイパス道路である新線を活用する大型車両が増加する一方で,新線上には仮設橋しかなく,より安全性,耐久性の高い恒久橋への架け替えが急務となっている。かかる状況から,ハイチ政府から我が国に対して,上記2橋梁の架け替え,取付け道路及び護岸の整備に係る支援の要請があった。
  • ウ 我が国は,震災国としての経験・知見を活かしつつ,ハイチの大震災からの復興と基礎社会サービスの確立のため,ハイチ国民のニーズを踏まえた国家再建への支援を引き続き実施していく方針であり,本計画はその一環として行うものである。本計画の実施により,災害時の交通及び歩行者の安全性が確保されるため,人間の安全保障の観点からも実施の必要性は高い。
  • エ また,本計画により整備される橋梁及び道路は,50年に1度の大洪水に対応できる仕様となっていることから,ハイチを含む小島嶼国への気候変動適応支援を重視する我が国の気候変動対策にも合致する。さらに,ハイチはカリブ共同体(カリコム)の加盟国であり,国際場裡でのカリコム諸国(計14か国)との協力強化の観点からも,高い外交的必要性が認められる。

(2)効率性

  • ア ハイチは小島嶼国であり,ハリケーン,洪水,地震等の自然災害の影響を受けやすいことを踏まえ,橋梁及び取付け道路の設計は,50年に1度の大洪水に対応できる仕様とし,災害発生時の交通確保にも配慮した。
  • イ 当初の要請内容では,クロワ・デ・ミッション橋梁及び新線橋梁ともに,4車線化に係る要望があった。しかしながら,両橋梁ともに前後の道路の具体的な拡幅計画はなく,特にクロワ・デ・ミッション橋梁の位置する国道1号線については,道路周辺に住宅,商店等が極めて密集している環境であることから,本計画においては,両橋梁ともに2車線の橋梁を架け替えることで,橋梁の性能と安全性の向上を図ることとした。ただし,周辺の用地の環境等から,将来比較的4車線化を実現しやすいと考えられる新線橋梁については,将来の4車線化を見据えた路線計画とした。

(3)有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

  • ア (ア)クロワ・デ・ミッション橋梁及び(イ)新線橋梁上を走行する車輌の平均走行速度が,それぞれ,(ア)15km/時(2014年)から30km/時(2022年),及び(イ)30km/時(2014年)から50km/時(2022年)に上昇する。
  • イ (ア)クロワ・デ・ミッション橋梁及び(イ)新線橋梁の耐加重量が,それぞれ,(ア)15~20トン(2014年)から25トン(2022年),及び(イ)13.6~18.1トン(2014年)から25トン(2022年)に増加する。
  • ウ (ア)クロワ・デ・ミッション橋梁及び(イ)新線橋梁上の年平均交通量が,それぞれ,(ア)13,640台/日(2014年)から18,600台/日(2022年),及び(イ)9,700台/日(2014年)から13,200台/日(2022年)に増加する。
  • エ 安全性・耐久性の高い橋梁への架け替えにより,災害発生時の交通の確保,落橋リスクの軽減・長寿命化,歩行者の安全性の確保及び物流の促進と円滑化が期待できる。
  • オ 50年に1度の大洪水に対応できる仕様の橋梁及び取付け道路の整備と護岸工事により,ハイチにおける気候変動への適応能力向上に貢献する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ハイチ政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)