ODA(政府開発援助)

政策評価法に基づく事前評価書

平成27年7月8日

評価年月日:平成27年6月1日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史

1 案件概要

(1)供与国名

ウクライナ

(2)案件名

ボルトニッチ下水処理場改修計画

(3)目的・事業内容

 老朽化の著しいボルトニッチ下水処理場の改修(下水・汚泥処理施設の新設・改修,汚泥焼却炉の導入等)を行うことにより,下水処理の改善を図り,もってキエフ市民の衛生環境・居住環境改善に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事,資機材調達
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
    1,081.93億円 年0.1% 40(10)年 本邦技術活用条件(STEP)

    (注)コンサルティング・サービス部分については,金利年0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画に係るEIA報告書は,2014年4月にウクライナ閣僚会議により承認済み。事業対象地域は,国立公園等の影響を受けやすい又はその周辺に該当せず,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
  • イ 土地収用及び住民移転:本計画は既存の下水処理場内での新設・改修事業であり,住民移転及び用地取得を伴わない。
  • ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     本事業の対象地域である首都キエフ市(人口約280万人,2013年)では,旧ソ連時代の1960年代に公共下水道管の敷設・運用が開始されており,現在キエフ市内の下水道普及率はほぼ100%となっている。1964年に供用が開始された同市内にあるボルトニッチ下水処理場は老朽化が著しく,下水処理能力が落ちていることに加え,汚泥処理機能の低下等により悪臭も問題になっている。また,下水処理工程で発生する汚泥は,同処理場内において必要な処理がなされた後,キエフ市郊外の汚泥処理場にポンプ圧送されているが,この汚泥処分場はほぼ満杯となっている。このため,下水処理能力・機能の回復に加え,汚泥焼却炉の汚泥減容化のための対策が急務となっている。
     また,ウクライナは,2004年頃から本格的にEU加盟の検討を開始し,現在のポロシェンコ政権は,2020年のEU加盟申請を目標に掲げているが,EU加盟にあたっては,EUの環境基準遵守が求められ,下水処理場からの放流水質も同基準に適合することが必要である。しかし,現時点では,放流時の全窒素や全リン濃度は基準値を満たしていないことから,高度処理の導入も必要となっている。こうした背景を受け,衛生環境の改善の観点から,当該下水処理場改修は喫緊の課題となっている。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     我が国は,対ウクライナ国別援助方針にて,「持続可能な経済成長のための産業の振興」及び「民生の向上」を重点分野として協力していくこととしている。今般の支援は,キエフ市において唯一の下水処理施設の改修を行うことにより,衛生環境の改善を図るものであることから,国別重点方針の「持続可能な経済成長のための産業の振興」及び「民生の向上」に該当し,経済インフラの整備に資する案件として,省エネやエネルギー効率化につながる施設整備を支援する。
     現在,ウクライナ情勢は不安定であるものの,エネルギー及び食料分野で潜在性を有していることから,地域の安定化も含め同国を支援していくことは我が国にとっても意義がある。また,二国間関係以外にも,日本がG7の次期議長国であることに鑑み,G7の一員として,外交的にウクライナ問題に包括的に取り組んでいくことは大変重要である。  加えて,我が国は,ウクライナ情勢の悪化を受け,安倍総理から最大約1,500億円の支援パッケージ等を表明し,その後,ウクライナの安定と国内改革の後押しのためには,(ア)経済状況の改善,(イ)民主主義の回復,(ウ)国内の対話と統合の促進の3つを重点方針としている。譲許性の高い円借款を通じてウクライナ政府の財政的な負担軽減に貢献することから,現在の我が国のウクライナ重点方針の(ア)「経済状況の改善」にも該当する。

(2)効率性

 有償勘定技術支援により詳細設計が実施される予定であり,現地調査を通じ基本設計から入札図書(案)作成等を行い,新設される施設・機材の運営・維持管理手法を本計画で支援することで,円借款の開発効果を一層増大させる。

(3)有効性

 老朽化の著しいボルトニッチ下水処理場の改修を行うことにより,キエフ市民の衛生環境・居住環境改善に寄与することが期待される。汚水処理能力(m3/日)が全行程を通じて基準値である2013年実績値と比較して約1.6倍増加する(目標値(2024年:事業完成2年後))ことが見込まれる。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本計画に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。