ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和4年2月2日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一
1 案件概要
(1)供与国名
タンザニア連合共和国(以下「タンザニア」という。)
(2)案件名
アルーシャ-ホリリ間道路改修計画
(3)目的・事業内容
タンザニア第二の都市アルーシャ州アルーシャ市内及びキリマンジャロ州モシ市内の道路の4車線化、並びにキリマンジャロ州キカフにおける橋梁及びアプローチ道路の建設により、急増する道路輸送需要への対応を図り、もって同国の持続的かつ安定的な経済成長及び東アフリカ共同体(EAC)域内諸国の地域統合に寄与する。
- ア 主要事業内容
- (ア)土木工事、資機材調達
- (イ)コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 243.1億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 環境社会配慮
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)上に掲げる道路・橋梁セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
環境社会影響評価報告書(ESIA)は、2014年9月に副大統領府環境担当大臣(Minister for the Environment under the Vice President’s Office)により承認済み。また、ESIA承認後の一部設計変更に伴い修正されたESIAが2016年9月に再承認済み。 - イ 社会環境面
本計画対象区間においては、約29.5ヘクタールの用地取得が必要であるが、非自発的住民移転は伴わず、同国国内手続き及びJICAガイドラインに沿って用地取得が行われる。被影響住民から本事業実施に対する特段の反対意見は確認されていない。 - ウ 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
タンザニアは域内統合を目指すEACに加盟しており、地域の物流の中継地点としての役割を担っている。ウガンダ、ブルンジ、ルワンダ等の内陸国はタンザニアを横断する中央回廊及びケニアを横断する北部回廊を経由し、インド洋までの輸送ルートを確保している。現在、アフリカ開発銀行(AfDB)がタンザニア第二の都市アルーシャ市からケニアとの国境であるホリリ/タベタを経由し、北部回廊上のケニアのボイまでを繋ぐ国際幹線道路の整備(アルーシャ-ホリリ/タベタ-ボイ道路事業)を実施しており、タベタ-ボイ間道路の舗装化を含む全体区間の整備によって、同国内で増加する道路輸送需要への対応及び北部回廊への連結性向上による域内物流の円滑化が期待されている。一方でAfDBの資金不足により、アルーシャ市東部のテンゲルからケニアとの国境ホリリまでの区間(約100キロメートル)を整備できていない。
本計画は、AfDBが整備できていない区間の中でも、特に優先度が高い区間として、交通量が年間6%以上増加し、現在の2車線道路のままでは2025年までに交通容量を超えると分析されたテンゲル-ウサ間9.3キロメートル及びモシ市内の8.4キロメートル区間の4車線化、並びに急曲線や急勾配により通行の安全性に問題を抱えるキリマンジャロ州キカフにおける新規橋梁の建設を実施するものである。これによりタンザニア・ケニア間の物流が円滑化されることで、周辺の内陸国にとっては、タンザニア及び北部回廊経由でインド洋に到達する輸送ルートが確保されることにより、EAC内の地域統合、更には域外との貿易を促進することが期待される。
タンザニア政府は長期国家開発計画(VISION2025)達成への5年ごとの戦略的行動計画を作成し、第2次5カ年計画の優先分野としてインフラ整備、特に道路整備を掲げており、本計画は同国の開発計画達成に貢献するものである。 - イ 我が国の基本政策との関係
2017年9月に策定された対タンザニア「国別開発協力方針」において、重点分野として「経済・社会開発を支えるインフラ開発」を掲げ、運輸交通では特に幹線交通及び都市交通の改善に取り組む旨を明記しており、本計画は同方針に合致する。
我が国は、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえた質の高いインフラ投資の推進を表明しており、本計画による国際幹線道路の整備は、それを具体化するものである。また、本計画は、AfDBとの協調融資枠組みであるEPSA(Enhanced Private Sector Assistance for Africa)の下、ACFA(Accelerated Co-Financing Facility for Africa)のパラレル協調融資に位置付けられるため、我が国の公約であるEPSAへの積み上げにも貢献するものであり、外交的重要性を有する。
さらに、本計画は、道路網整備の推進を通じて域内外の連結性を向上させ、タンザニア及びEAC域内諸国の経済発展に資するものであることから、上記の重点分野に合致するとともにSDGsのゴール9(強靱なインフラ整備)にも貢献する。
以上のことから、独立以来安定した政治・治安を維持し、国際社会において我が国と基本的立場を共にする友好国である同国との間で、本計画の実施を通じて二国間関係の強化を図ることは、国際社会やアフリカ地域における我が国の活動にも大きく寄与するものと期待されるところ、外交上の意義も大きい。
(2)効率性
通関関係者のワンストップ・ボーダーポスト(One Stop Border Post)運営能力及び国境取締り能力の向上に係る技術協力(「東部アフリカ地域における防疫円滑化及び国境管理能力向上プロジェクト(2017年12月~2021年2月)」)や、2014年7月からEAC事務局へ広域インフラ開発促進のための専門家派遣を実施している。これにより、タンザニアとケニアの国境の税関手続きの円滑化による輸送時間の短縮が図られ、本計画との相乗効果が見込まれる。また、本計画の一環で、新規橋梁の設計・建設・維持管理分野等の技術移転を実施することにより、案件の効率性の確保が見込まれる。
(3)有効性
本計画対象のモシ市内における交通量が約26,000台/日(2015年実績値)から事業完了2年後には約51,000台/日に増加するほか、橋梁の新設により、通過する貨物量が既存の橋梁による約1.1万トン(2015年実績値)から事業完了2年後には約2.1万トンへ増加することが見込まれる。
また、定性的効果として、本計画の実施により、円滑な道路輸送の確保による物流の円滑化、歩行者・自転車・自動車交通の安全性の向上が期待される。これにより、急増する道路輸送需要への対応を図り、もって同国の持続的かつ安定的な経済成長及びEAC域内諸国の地域統合に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
タンザニア政府からの要請書、JICAガイドライン、その他JICAより提出された資料。2016年度タンザニア国別評価(外務省ODA第三者評価)。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。