ODA(政府開発援助)

令和2年9月17日

評価年月日:令和2年7月16日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋

1 案件名

1-1 供与国名

 マーシャル諸島共和国(以下、「マーシャル」という。)

1-2 案件名

 マジュロ環礁における貯水池整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、マジュロ環礁において浄水場の貯水池の新設及び付属する導水管路、護岸の整備を行うことにより、貯水量の増加を図り、もって干ばつ時の飲料水・生活用水の確保、将来の需要増への対応及びマーシャルにおける気候変動対策に寄与する。
 供与限度額は17.57億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、上下水道セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
  • (2)本計画は、資材選定において、塩害の耐久性に十分留意し、本計画のソフトコンポーネントとボランティア派遣を通じて、維持管理能力の向上を図る。
  • (3)既存貯水池の維持運営管理はマジュロ上下水道公社(以下、「MWSC」という。)によって十分になされており、本計画による新設貯水池についても同様に管理されることを確認した。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)マーシャル(一人あたり国民総所得(GNI)4,740ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、高中所得国に分類される。
  • (2)同国は、国内市場が小さく、国際市場から地理的に遠いなど、太平洋島嶼国に共通する開発上の問題を抱えている。
  • (3)同国の首都マジュロがあるマジュロ環礁は、約2万8千人の住民が居住している。マジュロでは、MWSCが上水道事業を担い、3か所の浄水場を運用している。このうち、給水量の約65%を占める「浄水場C」の水源は、空港滑走路で集水した雨水であり、気候変動の影響による降雨量の変動に対して脆弱である。浄水場Cの貯水池水量が残り少なくなると淡水レンズ層(注)から過剰に揚水することになるため、淡水レンズ層の持続性にも懸念が生じている。また、近年は老朽化により漏水が発生しているとともに、集水された雨水を貯水池に導水するポンプが一部故障しており、導水効率が低下している状態にある。
    (注)周囲を海に囲まれた島や半島において、海水の上部に比重差によってレンズ状に浮かんでいる淡水域。
  • (4)このような中、同国では気候変動の影響により、乾季(11月~5月頃)を中心に干ばつが頻発しており、2007年~2016年の10年間で、2015年を除いた全ての年で、浄水場Cの貯水池水量が半分を下回り、渇水時に給水時間の大幅な短縮が行われた。今後、人口増加に伴う水需要の増加が見込まれる上に、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告でも、気候変動の影響により太平洋地域での降雨パターンの極端な変動が予測されている。このため、同国は、開発事業計画「マーシャル諸島共和国アジェンダ2020」を策定し、その中で「水、エネルギー、食糧の安全保障」を挙げ、2020年までの具体的な行動計画として「マジュロでの貯水容量の拡張」を掲げている。
  • (5)我が国は、対マーシャル国別開発協力方針において、基礎インフラの整備等を含む脆弱性の克服及び環境・気候変動への対策を重点分野に掲げており、本計画は、同方針や同国の開発課題・開発政策に合致し、水供給の改善及び気候変動による降雨パターンの不確実性に対応するものであり、SDGsゴール6(安全な水)及びゴール13(気候変動)にも貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
  • (6)また、同国は我が国との間で漁業協定を有しており、漁業分野での協力関係が深いばかりではなく、国際社会においても我が国の立場に好意的な理解を示すことが多く、良好な協力関係にある。
    さらに、渇水対策の強化という本計画は、人々の生活に欠かせない水の安定供給を確保するのみならず、自然災害時の人道支援にも通じる。
    かかる支援を通じて、同国の経済社会開発基盤が整備されることは、(島嶼国を脅かす)気候変動に対する同国の強靱性強化が図られることになり、ひいては太平洋島嶼国における平和と安定・安全の確保にもつながるものとして、外交上の意義が大きい。

2-2 効率性

 本計画では、アジア開発銀行(ADB)がマジュロの上水道分野を支援予定であり、ADBは浄水場と配水施設を対象とし、貯水池建設は我が国が行うことで事業内容を整理しており、本計画との相乗効果が期待できる。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2017年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2026年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    浄水場Cの継続した水供給可能最低日数が、55日間から74日間に改善される。
  • (2)定性的効果
    • ア 給水制限の減少等による給水サービス改善により、住民の生活の質が改善され、公衆衛生が向上する。
    • イ 渇水時における淡水レンズ層からの取水量の減少により、水循環系の健全性が図られる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)マーシャル政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)「太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価」(2015年度・第三者評価)
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