ODA(政府開発援助)

令和2年6月4日

評価年月日:令和2年1月16日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎

1 案件名

1-1 供与国名

 ネパール連邦民主共和国(以下「ネパール」という。)

1-2 案件名

 数値標高モデル及びオルソ画像整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,ネパール南部平野地域の洪水脆弱地域において,ハザードマップの将来的な整備等に資する高精度の数値標高モデル(メッシュ交点の標高データ)及びオルソ画像(空中写真に写っている地物を真上から修正した写真)を整備することにより,洪水被害等の軽減を図り,もって同国のハード及びソフト両面にわたる震災復興及び災害に強い国づくりに寄与するもの。
 供与限度額は11.70億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり,測量に使用するレーザ光線については,人体,動植物に悪影響を与えるものではなく,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ネパール(一人あたり国民総所得(GNI)970ドル(2018年))は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は,インドと中国の間に位置しており,同国における民主主義の定着,安定と繁栄は,我が国にとって,政治的・経済的に重要な南アジア地域全体の安定を確保する上で重要である。かかる観点から我が国は,長年主要ドナーとして継続的に同国を支援している。
  • (3)同国は,洪水,地震,土砂災害などの自然災害多発国であるものの,防災インフラが未整備であるため,自然災害に対して極めて脆弱な国である。自然災害の被災者数では洪水が最も多く,特に,雨季の慢性的な洪水被害が深刻で,過去45年(1971年~2015年)における死者は,4,445人であったことが報告されている(ネパール政府発表)。
     また,標高の低い南部平野地域(タライ地域)では,2017年の豪雨で死傷者・行方不明者は200人以上に上り,584百万ドル(同国GDPの約3%相当)の経済被害が生じた。
  • (4)このような状況の中,洪水脆弱地域のタライ地域では,正確な洪水ハザードマップが整備されていないことから,詳細な浸水域を特定するための精度の高い数値標高モデル及びオルソ画像の整備が喫緊の課題となっている。
  • (5)同国では,防災行政の強化のための関連政策・計画を推し進めることを目的として2017年10月に災害管理法が制定され,同法に基づき,2018年7月に災害リスク削減戦略を策定した。同戦略において,同国政府はハザードマップ整備を掲げており,本計画は,その趣旨に合致するものである。また,我が国は,対ネパール国別開発協力方針(2016年9月)において,「ハード及びソフト両面にわたる震災復興及び災害に強い国づくり」を重点分野の1つに掲げており,防災体制の強化に資する本計画は,同方針にも合致するものである。
  • (6)本計画の支援対象地域であるタライ地域は,インドとの交通及び物流の窓口となっている地域であり,工場が集中する産業地帯が含まれている。同地域の洪水リスクをより正確に把握できるようになることで,地域の安定的な経済的活動を支えることが期待され,地域の経済的繁栄・連結性にも寄与することが期待される。
     また,我が国は2018年11月の外相会談等において,同国政府による災害に強い国づくりに対する取組に協力していく旨表明しており,同国政府が重視する防災分野の課題解決に寄与する本計画を実施することは,二国間関係の更なる強化の観点から外交的意義が大きい。さらに,SDGsゴール9(強靱なインフラ構築)及びゴール11(住み続けられるまちづくり)にも貢献すると考えられることから,本計画を実施する必要性は高い。

2-2 効率性

  • (1)当初タライ地域全般を対象としていたが,現地調査等で検討を行った結果,支援対象箇所を同平野東部に絞り込み,支援の効率化を図っている。
  • (2)ネパール政府予算にて既に実施が決定されているタライ平野西部と同じ仕様(1メートルメッシュデータ)にすることでタライ地域全体の防災計画に貢献することができる。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)事業完成から4年後となる2025年には,数値標高モデルの配布延回数が15回に増え,大縮尺地図の作成面積が300平方キロメートルに拡大し,ハザードマップの作成面積が500平方キロメートルに拡大するほか,数値標高モデルのメッシュ間隔が50メートルから1メートルに改善し,より精緻な計画図を策定することが可能となる。
  • (2)ネパール政府関係機関の防災意識の向上,洪水想定区域の特定精度の向上,堤防強化地点や洪水調整池等の洪水対策候補地の絞り込みが可能となり,防災能力が強化される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ネパール政府からの要請書
  • (2)ネパール国別評価報告書(平成24年度・第三者評価)
  • (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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