ODA(政府開発援助)

令和元年10月17日

評価年月日:令和元年6月11日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康

1 案件名

1-1 供与国名

ニジェール共和国(以下「ニジェール」という。)

1-2 案件名

灌漑(かんがい)稲作振興のための農業水利整備公社機能強化計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,農業水利整備公社(ONAHA)に対し,灌漑農業基盤整備及び維持管理に必要な機材(油圧ショベル,ブルドーザー,発電機等)を整備することにより,同公社の機能強化を図り,もってコメ等の農作物の生産拡大を通じて灌漑農業に従事する農民の生計向上及び同国における食料安全保障に寄与する。
 供与限度額は11.94億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり,環境への望ましくない影響は最小限と判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ニジェール(一人あたり国民総所得(GNI)360ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は,サハラに位置する7か国に囲まれた内陸国で,日本の約4倍にあたる広大な国土(127万平方キロメートル)の約7割が砂漠に覆われる厳しい自然条件下にある。我が国とは,同国独立以来安定した友好関係を維持してきており,国際社会において,我が国の基本的立場を支持する友好国である。
  • (3)同国の基幹産業である農業は,労働人口の80%以上が従事しているが,ほとんどは短期間かつ不規則な降雨に頼る天水農法であり,雨季作の穀物は1年間の世帯消費量を賄えておらず,国内需要も国内生産量を大きく上回っている。国内のコメ生産は灌漑水田・天水田を含め約2.2万ヘクタールで行われており,そのうち,国土南部を流れるニジェール川沿いの灌漑水田である農業水利区(AHA)では,現在約1万ヘクタールのAHAにおいて約2.8万世帯の農家が灌漑稲作で生計を立てているが,多くのAHAでは水田の維持管理が十分に行われていないことから,灌漑設備の老朽化などにより農業生産性は伸び悩んでいる。
  • (4)同国政府は,国家開発計画において「農村地域の活性化と近代化」を柱の一つとし,そのための主要な政策「ニジェール人によるニジェール人のための食料生産イニシアティブ(3Nイニシアティブ)」において,食料生産の強化と食料品質改善を目標に掲げており,このうち灌漑農業分野では,既存のAHAの修繕・維持管理に加え,新たな灌漑農地の開発をすることにより,2021年までに灌漑農地を3倍に拡大することでコメ等の農作物の生産を増加し,貧困を削減することを目指しているが,AHAの維持管理業務等を行うONAHAの現有機材の多くが老朽化しており,業務の遂行が困難となっている。本計画は,ONAHAの機材の更新・増強を通じた機能強化により,3Nイニシアティブに謳われている灌漑農業開発の推進に貢献することから,同国政府の開発方針及び我が国の対ニジェール共和国国別開発協力方針(重点分野「農村開発を通じた食料安全保障の達成」)に合致するものである。また,SDGsゴール2(食料安全保障及び栄養改善)に貢献すると考えられることから,本計画の実施を支援する必要性は高い。
  • (5)2015年6月に行われた安倍総理大臣とイスフ大統領との首脳会談にて,イスフ大統領は,ニジェールにおける重要課題として,灌漑設備・技術の強化を挙げている。本計画は,こうした同国からの期待に応えるものであり,二国間の信頼関係構築の観点から,外交的意義が大きい。
  • (6)TICAD VIにおいて,我が国は「アフリカの主産業であり,社会安定化にとって必要不可欠な農業について,人材育成や機材供与等を通じてコメの生産量増大を図り,もってアフリカにおける食料安全保障を促進する」としており,本計画はこれらの方針を具体化するものである。

2-2 効率性

 一部機材(ブルドーザー,モーターグレーダー)を他の機材で代替することや,技術的な調査を行い,対象地域の絞り込みを行ったことにより,総事業費を節減した。

2-3 有効性

 本計画の実施により,2018年基準値に比べて計画完成3年後の2024年までに以下のような成果が期待される。

  • (1)灌漑整備面積が新規整備の場合200ヘクタール/年,改修の場合500ヘクタール/年増加し,新規灌漑整備地区におけるコメ平均単収(籾ベース)が4.6トン/ヘクタール増加する。
  • (2)灌漑受益者への安定的な水供給
  • (3)灌漑受益者のコメの作付面積及び生産量の増加
  • (4)安定した灌漑農業の普及による灌漑受益者のコメの生産性及び所得向上
  • (5)ONAHAのオペレーターの操作能力及び修理工の技術能力の向上

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ニジェール政府からの要請書
  • (2)「灌漑稲作振興のための農業水利整備公社機能強化計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る