ODA(政府開発援助)

令和2年4月14日

評価年月日:令和2年3月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

貨物専用鉄道建設計画(フェーズ1)(第四期)

(3)目的・事業内容

 貨物専用鉄道の計画区間であるデリー・ムンバイ間及びルディアナ・デリー・ソンナガル間のうち,特に整備優先度が高いとされるグジャラート州,ラジャスタン州及びハリヤナ州の主要都市を結ぶ新線を建設し,全自動信号・通信システム及び大容量かつ高速の機関車を導入することにより,今後も増加が見込まれる貨物輸送需要への対応及び物流ネットワークの効率化を図り,もって経済成長の促進及び環境問題の改善に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)土木・建築工事,調達機器,電気機関車等
    • (イ)コンサルティング・サービス(入札補助,施工監理等)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    1,300.00億円 0.10% 40(12)年 日本タイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下,「JICAガイドライン」という。)に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに該当する。なお,本計画に係るEIA報告書は,インド国内法上作成が義務づけられていないものの,2009年8月に作成済みである。
用地取得及び住民移転
 本計画では,約3,716ヘクタールの用地取得と1,514世帯の住民移転を伴うが,用地取得・住民移転の手続きは,2020年6月までに完了する予定である。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは,貨物輸送量が年率約10%台で伸びている一方で,貨物鉄道の輸送能力は限界に達しており,2013年から2017年の貨物鉄道輸送量は,年率約2%弱の伸びに留まっている。貨物輸送における貨物鉄道のシェアも低下傾向であり,大量輸送が可能で,道路輸送に比べ環境配慮型である鉄道の整備・強化は,同国の経済成長においても不可欠な課題となっている。とりわけ,同国屈指の消費地・生産拠点である首都デリーと大陸東西の玄関港であるムンバイ,コルカタ,そして南東部のチェンナイを結ぶ「黄金の四角形」と呼ばれる路線の貨物輸送量は全国の約65%を占めており,今後もコンテナ貨物の増加や農産物・鉱工業資源の輸送量の増加が見込まれることから,高出力かつ高速化と他の交通機関との連携による輸送能力の強化が求められている。
 また,同国政府は,第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)において,第11次5か年計画に引き続き,幹線鉄道における大量輸送を可能とするための路線拡充及び25トンの軸重の高速貨物車両の導入,港湾施設へのアクセス改善等の必要性について言及するとともに,特に,デリー・ムンバイ間及びルディアナ・デリー・コルカタ間の貨物専用鉄道の早期整備と旅客・貨物車輌拡充の必要性を強調している。さらに,直近の3年行動計画(2017~2019年度)においても,経済改革における鉄道を含む交通インフラ整備の重要性が強調されている。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された我が国の「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げており,本計画は同方針に合致するものである。
 また,直近では,2018年10月のモディ首相訪日時に両国首脳が「日印の共通のビジョンに基づき,自由で開かれたインド太平洋に向けて協働していくという揺るぎない決意」を改めて述べるなど,両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは,こうした二国間関係の更なる強化にもつながる。

(2)効率性

 本計画においては,貨物専用鉄道公社(DFCCIL)が雇用するコンサルタントが財務戦略策定を含めた運営・維持管理体制の強化をフォローするほか,円借款附帯技術協力を実施し,組織体制の改善に対して提案を行う予定である。

(3)有効性

 本計画の実施により,事業完成2年後(2029年)には,2007年比で以下のような成果が期待される。

  • ア 定量的効果(1日当たりの数値)
    • (ア)車両走行距離(双方向)が,約38,000キロメートルから約250,000キロメートルに増加する。
    • (イ)輸送列車数(双方向)が,33本から222本に増加する。
  • イ 定性的効果
    • 貨物輸送需要への対応,物流ネットワークの効率化及び広範な経済開発の促進に寄与する。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書(第三者評価/2017年度)JICAガイドライン別ウィンドウで開く,その他JICAから提出された資料。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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