ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年9月6日
評価年月日:令和元年7月31日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
マダガスカル共和国(以下「マダガスカル」という。)
1-2 案件名
マダガスカル国道二号線(アンタナナリボートアマシナ間)におけるマングル橋及びアンツァパザナ橋改修計画
1-3 目的・事業内容
首都アンタナナリボ市と最大の港湾都市トアマシナ市を繋ぐ国道二号線上に位置するマングル橋とアンツァパザナ橋の架け替えによる2車線化を行い,もって国内及び周辺国における物流の活性化を通じて,同国の経済成長に寄与する。
供与限度額は25.96億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり,道路セクターのうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
- (2)本計画における先方負担事項として,住民移転・用地取得がなされること。
- (3)政情・治安が極度に悪化しないこと。また,想定外の自然災害が発生しないこと。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)マダガスカル(一人当たり国民総所得(GNI)400ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)マダガスカルの国道二号線は,首都アンタナナリボと同国内最大の港湾都市トアマシナを結ぶ唯一の道路であり,トアマシナ港の荷揚貨物の約75%は国道二号線を経て,国内総生産の約30%を占める首都アンタナナリボへ輸送されている。また,同港の国内向け荷揚貨物は,我が国円借款「トアマシナ港拡張計画」(2017年~)における港の拡張等により増加が予想され,併せて国道二号線の交通量の増加が予想されている。
- (3)しかし,国道二号線上のマングル橋とアンツァパザナ橋は,1車線であるため車両の擦れ違いができず,渋滞が発生し,交通のボトルネックとなっている。また,両橋は建設後約50年以上が経過し,老朽化と部材の損傷が進行しているほか,歩車道が未分離であるため交通事故の危険性が高い。
- (4)同国の国家開発計画(2015~2019年)では「インクルーシブな成長と調和のとれた国土整備」を柱の一つに掲げ,経済成長のための基幹インフラ整備を最重要課題の一つと位置づけている。また,国道二号線沿線地域を,経済成長を牽引する戦略的地域と位置づけている。
- (5)我が国は,対マダガスカル事業展開計画(2017年4月)において,インフラ整備(運輸・交通)を重点分野の一つに掲げ,経済成長を図るために,脆弱な道路・港湾等の基幹インフラを整備し,国内物流を強化することが不可欠であるとしており,本計画は同事業展開計画に合致する。また,SDGsゴール9(強靭(レジリエント)なインフラ構築,包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーション推進を図る)にも貢献すると考えられる。さらに,我が国は,2016年8月に開催したTICADVIにおいて,約100億ドルの質の高いインフラ投資及び「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連結性の向上を表明しており,本計画はこれを具体化するものである。
- (6)同国は,各種国際会議等においても我が国と協力しており,二国間関係の強化の観点からも本計画を通じた支援は重要である。
2-2 効率性
- (1)必要性及び施工効率を勘案し,マダガスカル政府とも調整の上,本計画の規模の絞り込みを行った。
- (2)マングル橋及びアンツァパザナ橋の架け替え位置及び構造形式に関しては複数案を検討し,用地取得・建設費・維持管理費等の観点及び持続的かつ効率的な運用・維持管理を行う上で最も合理的な計画を採用した。
2-3 有効性
本計画の実施により,2018年基準値と計画完成3年後の2025年の目標値を比べて,主に以下のような効果が期待される。
- (1)マングル橋及びアンツァパザナ橋の交通量の平均値が2,000台/日から3,600台/日に増加する。
- (2)国道二号線(アンタナナリボートアマシナ間)の旅客数が3,702千人/年から5,000千人/年に,貨物数が4,509千トン/年から7,500千トン/年にそれぞれ増加する。
- (3)マングル橋での待ち時間が48秒から0秒に短縮される。
- (4)アンツァパザナ橋での待ち時間が35秒から0秒に短縮される。
- (5)歩行者等の安全確保,道路線形改良により,交通が円滑化し,安全性が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)マダガスカル政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)マダガスカル国別評価報告書(第三者評価・2007年)