ODA(政府開発援助)

令和元年5月30日

評価年月日 令和元年5月24日
評価責任者 国別開発協力第二課長 門脇 仁一

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

外国直接投資促進計画(第二期)

(3)目的・事業内容

 本計画は,バングラデシュにおける日本向け経済特区(EZ)の開発等の開発事業の実施や事業資金を供与することを通じて,金融アクセスの悪さやインフラの不足,煩雑な行政手続など,劣悪な投資環境を改善することにより,外国直接投資の促進を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)ツーステップローン〔注〕(我が国を含む外国企業等に対して設備投資及び事業運転資金を供与)(以下「TSL」という。)
    • (イ)エクイティバックファイナンス(アライハザール経済特区のパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)事業に対する当国政府の出資分に係る資金を供与)(以下「EBF」という。)
    • (ウ)周辺インフラ整備(土地造成,アクセス道路,排水路・貯水池,発電所,変電所,送電線,ガスパイプライン,通信網)(以下「PSL」という。)
    • (エ)コンサルティング・サービス(TSLの参加金融機関の選定支援,EBF実施支援,PSLのインフラの設計,調達支援,施工監理及び事業進捗に係るモニタリング支援)
    •  〔注〕ツーステップローンとは,借入国の金融機関(開発銀行等)を通じ,民間企業等に一定の政策実施のために必要な資金を供与するもの。2つ以上の金融機関を経由して,最終受益者である企業に対する融資が実行される。
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    211.47億円 0.9% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)金利は,一般条件(固定・基準)を適用。
     コンサルティング・サービス部分に係る金利は,0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,金融仲介者等に対し融資を行い,JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず,かつそのようなサブ・プロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるため,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)上のカテゴリFIに該当する。ただし,本計画の開始に際して特定された特区の建設(EBFで実施)及び周辺インフラである土地造成,アクセス道路,排水路・貯水池,通信網,発電所,変電所,送電線,ガスパイプラインの建設(PSLで実施)に係るサブ・プロジェクトについてはカテゴリAに該当する。
 特区建設及び土地造成,アクセス道路,排水路・貯水池,通信網の整備に係るEIA報告書は,2018年5月に環境森林省環境局(DOE)により承認済み。また,PSL事業の追加スコープである電力インフラ(発電・送電・変電)及びガスパイプラインに係るEIA報告書が作成され,2019年3月にDOEにより承認済み。
用地取得
 本計画は,約220ヘクタールの用地取得を伴い,被影響住民1,714世帯6,343人,そのうち,11世帯55人の住民移転が発生する見込み。また,ガスパイプライン敷設予定地において,約4ヘクタールの用地取得と約4ヘクタールの一時的な用地の供用が実施される予定で,12世帯45人の住民移転が発生する見込み。用地取得と住民移転はバングラデシュ国内法とJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に従って手続が進められる予定。なお,本計画に係る住民協議を開催した結果,被影響住民から事業に係る特段の反対意見は確認されていない。
外部要因リスク
特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュは,近年7%程度の高い経済成長を達成しており,2015年には世界銀行の国別所得階層分類で低・中所得国へと上昇した。成長の原動力は輸出の約8割を占める縫製業であるが,同国が持続的な経済成長を達成するためには,縫製品輸出への依存から脱却し,縫製品以外の製造業等の付加価値及び輸出競争力の高い産業を育成する必要がある。そのためには,外国直接投資を促進することが有効である。
 同国政府は,1980年代から輸出加工区を設立し,外国直接投資を促進することで産業の振興を図ってきた。しかし,輸出加工区は,原材料を輸入し,安い人件費で加工した製品を輸出する労働集約型加工産業が中心であり,また,原則輸出志向企業しか入居できないことから,輸出加工区外に立地する国内産業とのリンケージが少なかったため,産業全体の競争力強化にはつながらなかった。そのため,同国政府は輸出加工区に代えて,輸出志向企業と国内市場をターゲットとする企業がともに入居できる経済特区を設立し,輸出産業と国内産業のリンケージを強化し,産業の多様化及び競争力の強化を図る政策に転換した。2010年には経済特区法が制定され,2011年には経済特区庁を設立し,経済特区開発に取り組んでいる。かかる背景の下,同国政府はとりわけ日本企業からの投資を更に呼び込むため,ダッカ近郊に日本企業向け経済特区の設立を決定した。
 本計画は,同国政府の「第7次五か年計画」(2016年~2020年)の重点分野である製造業の多様化や輸出産業の強化,雇用の促進に位置付けられる。また「国家産業政策」(2016年)では,経済成長の基盤として,外国直接投資の促進と産業の多角化による産業競争力の強化を挙げている。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは,近年,急速な経済成長を遂げているものの,人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラの不足が深刻な状況である。こうした開発ニーズを踏まえ,我が国は2018年2月に策定した「国別開発協力方針」において,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などのSDGsの達成への貢献)を掲げている。
 本計画は,日本向け経済特区の開発を支援することを通じて投資環境の改善を図るものであることから,重点目標の(ア)に合致するとともに,SDGsゴール8(成長・雇用)及びゴール9(イノベーション)にも貢献するものである。
 また,本計画は,2014年の日バングラデシュ首脳会談で合意された「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の下,投資環境改善に寄与する重要案件であり,本計画を通じて,経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは,日バングラデシュ関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 本計画では,EBFをバングラデシュ政府側に供与することにより,特区事業に携わる本邦企業の事業リスクを軽減するとともに,周辺インフラの整備もPSLを通して行っていく予定。

(3)有効性

 本計画により,バングラデシュにおける日本向け経済特区の開発等の開発事業の実施や事業資金を供与することを通じて,金融アクセスの悪さやインフラの不足,煩雑な行政手続など,劣悪な投資環境を改善することにより,本計画で整備される経済特区において,事業完了2年後(2027年)時点で,直接投資額130百万米ドル(累計),入居企業数30社となる見込みである。これにより,外国直接投資の促進に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,JICAガイドライン,その他JICAより提出された資料。また,2009年度バングラデシュ国別評価(第三者評価)報告書。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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