ODA(政府開発援助)

令和元年5月30日

評価年月日 令和元年5月24日
評価責任者 国別開発協力第二課長 門脇 仁一

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

マタバリ港開発計画(第一期)

(3)目的・事業内容

 本計画は,バングラデシュ南東部チッタゴン管区マタバリ地区において,コンテナ及び一般貨物等の多目的深海港を建設することにより,同国の貨物取扱容量の向上を通じた国内及び周辺国との物流促進を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)土木工事(ターミナル(コンテナ専用,多目的)及びアクセス道路建設等)
    • (イ)荷役機器等調達・据付
    • (ウ)港湾関連施設及び機材の整備
    • (エ)コンサルティング・サービス(詳細設計,入札補助,施工監理,環境社会配慮支援等)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    388.66億円 0.9% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)金利は,一般条件(固定・基準)を適用。
     コンサルティング・サービス部分に係る金利は,0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる港湾セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当し,カテゴリAに分類される。本計画に係るEIA報告書は2018年11月(港湾)及び同年12月(道路)にバングラデシュ環境森林省環境局により承認済み。
用地取得
 本計画では,土捨て場を含む港湾建設及びアクセス道路建設によって,それぞれ約107ヘクタール,約201ヘクタールの用地取得及び297人,680人の非自発的住民移転を伴い,バングラデシュ国内法とJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に従って用地取得及び補償・支援が進められる。また,多くの塩田やエビ養殖地が喪失することに伴い,生計回復支援を望む声が被影響住民から挙がっていることから,生計回復支援プログラムを実施予定。なお,現時点で被影響住民から事業に係る特段の反対意見は確認されていない。
外部要因リスク
特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュは,近年の7%程度の高い経済成長に伴い,貨物の輸出入額は10年間で年平均約11%の伸びを記録し,同国のコンテナ貨物需要は162万TEU(注)(2014年)から985万TEU(2040年)まで増加することが見込まれている。このような旺盛な貨物需要に対して,同国のコンテナ貨物の98%を扱うチッタゴン港は既にその貨物取扱容量を超えるコンテナ貨物を扱っている。また,同港の現在の水深は7.5~9.5メートルであり,近年の世界的な船舶大型化の傾向と,今後の同国での貨物需要の増加を踏まえると,近い将来必要不可欠となる2,700TEU以上の中・大型船による貨物輸送が高まることが予想されるが,現在の同港の水深では,最大で2,700TEUクラスの船舶までしか受け入れられないため,中・大型船の受入ができない。このような状況から,同国では,将来の貨物需要に対応するために,中・大型船の受入が可能な水深を有した新たな港湾開発が急務となっている。
(注:TEUとは20フィートコンテナ換算個数のこと。)
 マタバリ港の開発は,同国政府の「第7次五か年計画」(2016/17~2020/21年度)及び「ビジョン2021」の中で優先事業の一つに位置づけられており,同国政府はマタバリ港を中核インフラとしたエネルギーハブ及び工業団地開発等を優先的に進めることとしている。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは,近年,急速な経済成長を遂げているものの,人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラの不足が深刻な状況である。こうした開発ニーズを踏まえ,我が国は2018年2月に策定した「国別開発協力方針」において,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などのSDGsの達成への貢献)を掲げている。
 本計画は,同国の貨物取扱容量の向上を通じた国内及び周辺国との物流促進を図るものであることから,重点目標の(ア)に合致するとともに,SDGsゴール9(イノベーション)にも貢献するものである。
 また,本計画は,2014年の日バングラデシュ首脳会談で合意された「日バングラデシュ包括的パートナーシップ」及び経済インフラの開発,投資環境の改善,連結性の向上を柱とする「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の実現にも貢献するものであり,本計画を通じて,経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは,日バングラデシュ関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 本計画では,周辺国の港との機能分担及び実施機関であるチッタゴン港湾庁による新港運営の効率性確保等,新港の利用促進につながる港湾運営戦略を実施機関が検討し,JICAによる技術支援を通して戦略の一部について実現を図る予定。また,埋没土量及び維持浚渫費用の予測に係るモニタリングにより,費用対効果を踏まえた対策を検討予定。

(3)有効性

 本計画により,バングラデシュにおける入港最大船舶サイズを2,700TEUクラスから4,400TEUクラスに引き上げるとともに,2024年には,現在の同国全体の貨物取扱量の約35%に相当する約70万TEU/年規模の貨物を同港で取り扱うことになる見込みである。これにより,同国の貨物取扱量の向上及び周辺国との物流促進に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,JICAガイドライン,その他JICAより提出された資料。また,2009年度バングラデシュ国別評価(第三者評価)報告書。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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