ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年11月27日
評価年月日:平成30年2月9日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
1-1 供与国名
ナイジェリア連邦共和国(以下「ナイジェリア」という。)
1-2 案件名
ラゴス変電設備緊急復旧・増強計画
1-3 目的・事業内容
ラゴス州アパパロード変電所の復旧・増強を行うことにより,ラゴス港を含む港湾施設及び周辺産業地域への電力供給の安定性及び信頼性向上を図り,もって港湾機能の強化を通じた質の高い経済成長のための基盤づくりに寄与するもの。供与限度額は23.49億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画の環境社会配慮カテゴリ-分類はCであり,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
- (2)本計画の実施機関である,連邦電力・公共事業・住宅省及びナイジェリア送電公社が,先方負担事項である ア 移動式変電所の確保,イ 不要な既設設備の撤去,ウ 警護警官の傭上等の安全配慮措置を適切に履行することが必要となる。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ナイジェリアでは,国家開発計画「Nigeria Vision 20: 2020」において,インフラ整備(電力・運輸)を最優先課題の一つとして掲げている。同国経済の中心地であり,急速な拡大を続けるラゴス州は,人口約900万人であり,同国総輸入量の約40%を占める同国最大港湾のラゴス港を有する。ラゴス州の最大電力需要は2,193メガワットであるが,電力供給能力は1,114メガワット(出所:2015年,同国配電会社)であり,電力が不足する中で,過負荷による強制停電が送電系統の各所で頻発しており,また,設備の老朽化や維持管理不足による全系統停電も発生している。
- (2)ラゴス州のアパパロード変電所は,ラゴス港を含む港湾施設や周辺産業地域及び一般家庭に電力を供給している。同港では,船舶の安全航行用夜間照明,冷凍設備やクレーン機材等のために安定的かつ大量の電力を必要としているが,電力需要が同変電所の電力供給能力を超過することによる停電が頻発し,港湾業務に支障をきたしている。
また,同変電所の供給区域の電力需要は年々増加しており,ピーク時の電力過負荷が生じているため,変圧器の変圧容量の増強が急務である。さらに,同変電所では,送電系統が脆弱であるとともに,系統保護・監視制御の機能を持つガス絶縁開閉装置が老朽化により故障・停止しているなど,長期の運転停止リスクが高まっており,同機能の早急な復旧が必要となっている。 - (3)我が国は,対ナイジェリア国別開発協力方針において,「質の高い経済成長のための基盤づくり」を重点分野と定め,電力分野の支援を実施している。具体的には,無償資金協力「ジェバ水力発電所緊急改修計画」(2011年度E/N署名)及び「アブジャ電力供給施設緊急改修計画」(2016年度E/N署名)によりハード面を支援するとともに,JICAの技術協力「電力開発計画アドバイザー」(2012~2013年度)及び開発計画調査型技術協力「電力マスタープラン策定プロジェクト」(2015~2018年度)により,同国政府の電源開発や系統拡張に関する計画策定能力強化を支援しており,本計画は,我が国によるこれら支援と相互補完的である。特に,本計画対象のアパパロード変電所から電力供給を受けるラゴス港は,多くの日系企業が輸出入に使用しているほか,同港の地区に工場を持つ日系企業もあり,我が国が実施する意義は大きい。
- (4)また,同国は,国際場裏において我が国の立場を支持する友好国であり,二国間関係の維持・発展の観点からも同国への支援は重要である。
2-2 効率性
- (1)ナイジェリア政府の要請を踏まえつつ,現地調査による支援対象の絞り込みを実施し,必要かつ適切な規模とした。
- (2)供与機材については,単価及び維持管理費の比較検討を行い,その結果を基に導入機材を選定した。
- (3)過去に実施した同様の案件との比較を行い,事業費の妥当性を検討し,コスト縮減を図った。
2-3 有効性
- (1)定量的効果
本計画の実施により,- ア 本計画対象であるアパパロード変電所の受電端電力量が119ギガワット時(2017年実績値,以下同じ)から212ギガワット時(計画完了から3年後(2024年度),以下同じ)に増強されることが見込まれる。
- イ 配電先需要家1軒あたりの停電回数が132回/年から80回/年,停電時間が1,228時間/年から400時間/年に,それぞれ減少することが見込まれる。
- (2)定性的効果
- ア 同変電所の過負荷解消により,供給区域への電力供給の安定性及び信頼性が向上し,ラゴス港を含む港湾施設が効率的に運営され,周辺産業地域の持続的な経済活動及び社会発展が促進される。
- イ 本計画において,本計画で整備する電力設備の運営・維持管理を行うナイジェリア送電公社に対する指導を行うことにより,同公社の変圧器等変電所設備の日常点検や運営管理能力が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ナイジェリア政府からの要請書
- (2)「ラゴス変電設備緊急復旧・増強計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)