ODA(政府開発援助)

平成30年10月30日

評価年月日:平成30年10月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇 仁一

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

トゥルガ揚水発電所建設計画(第一期)

(3)目的・事業内容

 インド東部西ベンガル州プルリア郡において,揚水発電所を建設することにより,ピーク時電力供給力及び系統安定化対策の強化を図り,もって同州の産業発展及び生活水準の向上を通じて,産業競争力の強化に寄与するもの。
 今次は,本計画の第一期として2024年3月までの資金需要に対応するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)土木工事
    • (イ)水門・鉄管工事
    • (ウ)電気機器設備工事
    • (エ)送電線設備工事
    • (オ)準備工事
    • (カ)コンサルティング・サービス(基本設計,詳細設計,入札補助,施工監理,組織能力強化等)

 円借款対象部分は,上記のうち,(ア),から(ウ),(オ)の一部及び(カ)である。

  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    294.42億円 1.5% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる電力セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに該当する。本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は,実施機関である西ベンガル州配電公社により2016年4月に作成され,インド国環境法に基づき環境森林省が審査済みであり,2018年7月に環境クリアランスを取得済み。森林伐採許可(森林クリアランス)は2018年4月に取得済み。
用地取得及び住民移転
 本計画では,299.8ヘクタールの用地を必要とするが,そのうち285ヘクタールは公有地であり,14.8ヘクタールが私有地である。私有地は土取り場として利用される可能性があるが,利用する場合はリース契約が交わされ,用地取得は発生しない。一方,公有地の一部で数世帯が農耕を行っているため,インド国内法及びJICAガイドラインに沿って生計回復支援策が提供される予定。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは,近年の急速な経済成長に伴いエネルギー消費量が増加しており,中国,アメリカに次いで世界第3位の電力消費国となっている(2015年)。一方で,インド全体の電力需給は,インド中央電力省によれば,2016年度実績値で1.6%のピーク時供給能力不足となるなど,前年度比で改善は見られるものの(2015年度実績値で3.2%同),依然として電力供給不足が生じている。また,インド政府は再生可能エネルギーの導入を推進しており,再生可能エネルギーの比率が増加しているが,太陽光発電の出力は天候などの影響で大きく変動するため,電気の安定供給に支障が生じうる。かかる状況下,電力需要の増加への対応とともに,電力供給量の調節が容易で,電力供給の安定化につながる電源の整備が喫緊の課題となっている。揚水発電は,こうした課題への対応に適しており,インド中央電力省の電源開発計画でも揚水発電所を増加させる必要性が認められている。
 インド東部に位置する西ベンガル州は全国第4位の人口約9千万人を擁し,国内第6位の経済規模を有する。同州は更なる経済発展と電力需要増が予測されており,ピーク時の電力需要とそれを満たすために必要な発電量は増大していくと見込まれているため,更なる供給能力の整備が必要である。特に,同州においてはピーク時の電力需要を満たすために他州より買電を行っており,非ピーク時に揚水し,ピーク時に発電する揚水発電の導入によって,ピーク時買電量を削減することが可能となることから,電力供給の調節を容易に行うことができる揚水発電の導入への期待が高い。以上から,インドの開発政策とも高い整合性を有している。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
 本計画は,インド東部西ベンガル州プルリア郡において,揚水発電所を建設することにより,ピーク時電力供給力及び系統安定化対策の強化を図り,もって同州の産業発展及び生活水準の向上を通じて,産業競争力の強化に資することから,上記(イ)に合致する。
 また,2017年9月の安倍総理大臣のインド訪問時には「両国のパートナーシップを新たな次元に引き上げるべく協力することを決定」するとともに,日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」とインドの「アクト・イースト政策」の連携に向けた取組の強化を誓うなど両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進めるインドの取組を支援することは,こうした日印二国間関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 発電所における知識・ノウハウの中長期的維持及び人材の適切な育成を図るため,本計画では,発電所に勤務する核となる人材の人事異動を最小限とすること,コンサルタント契約における設計,施工監理,運営維持管理等の技術移転の実施,コントラクター契約における可変式揚水発電機の運転操作や維持管理に関する技術指導を含め,効果的な発電所の運転に資するよう実施機関と合意している。

(3)有効性

 運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2029年)の見込み)として,西ベンガル州総発電容量は16,318メガワット(2018年実績値)から17,318メガワットへと1,000メガワットの増加が見込まれる。また,新たに,約280万世帯分の年間使用電力量に相当する年間発電量1,803ギガワットアワーの発電が可能となる。
 また,定性的効果として,州内電力供給安定化,インフラ環境改善による投資促進,州の産業発展及び生活水準の向上に寄与する。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書(2017年度)国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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