ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年10月30日
評価年月日:平成30年10月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇 仁一
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道建設計画(第二期)
(3)目的・事業内容
マハラシュトラ州ムンバイからグジャラート州アーメダバード間において,日本の新幹線システムを利用して高速鉄道を建設することにより,高頻度な大量旅客輸送システムの構築を通じて,連結性の強化に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- (ア)土木・建設工事
- (イ)軌道工事
- (ウ)電気・機械工事
- (エ)車両基地
- (オ)車両・検測車両
- (カ)保線機器
- (キ)コンサルティング・サービス(施工監理,品質管理,安全管理,実施機関の施工監理能力向上のための技術移転,環境社会配慮等)
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 1,500.00億円 0.1% 50(15)年 タイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる鉄道セクター,影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当し,カテゴリAに分類される。本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は実施機関であるインド高速鉄道公社により2015年7月に作成され,その後の事業計画の変更等を反映した更新版が2018年8月に作成された。 - イ
- 用地取得及び住民移転
本計画では,1,022.37ヘクタールの用地取得及び1,887世帯の住民移転を伴い,インド国内法及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に基づき取得が進められる。 - ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドの人口は1991年に8億4,400万人であったのに対して,2011年には12億1,000万人に達し,今後も増加していくと予想されている。かかる人口増加に加え,近年の急速な経済成長に伴い,国内の旅客及び貨物輸送量は急増しており,既存の輸送システムでは,これら旅客・貨物輸送の需要を満たすことができないため,安定した大量輸送システムの構築は急務である。
現在,国内第2の都市であるマハラシュトラ州の州都ムンバイと,商工業都市として近年急速な発展を遂げているグジャラート州のアーメダバードは,インド全体の経済成長率を上回る勢いで発展しており,今後も成長を続けると予測されている。一方,ムンバイとアーメダバードを繋ぐ交通手段としては,現在,自家用車やバスが主体となっており,インド鉄道省による「インド鉄道ビジョン2020」(2009年12月)において同区間を含む高速鉄道の整備を掲げるなど,大量輸送性及び高頻度輸送性を持つ大量輸送システムの構築が大いに期待されている。以上から,インドの開発政策とも高い整合性を有している。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
本計画は,マハラシュトラ州ムンバイからグジャラート州アーメダバード間において,日本の新幹線システムを利用して高速鉄道を建設することにより,高頻度な大量旅客輸送システムの構築を通じて,連結性の強化に寄与することから,上記(ア)に合致する。また,インドの開発政策とも高い整合性を有している。
また,2017年9月の安倍総理大臣のインド訪問時には「両国のパートナーシップを新たな次元に引き上げるべく協力することを決定」するとともに,日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」とインドの「アクト・イースト政策」の連携に向けた取組の強化を誓うなど両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進めるインドの取組を支援することは,こうした日印二国間関係の更なる強化につながる。
(2)効率性
事業の遅延に繋がり,かつ契約当事者間で解決できない問題が生じた場合は,日印政府間協議を行うために設置されているステアリングコミッティーを活用し,紛争裁定委員会や仲裁の前段階での課題解決を図る。
(3)有効性
現行の在来線特急では,ムンバイからアーメダバード間約500キロメートルの移動に約7時間(2018年実績値)かかるところを,事業完成後(2023年)には,高速鉄道を利用すると約2時間に短縮される見込みである。
また,定性的効果として,高頻度な大量旅客輸送システムの実現による交通ネットワークの効率化,広範な対象地域の経済開発の促進に寄与する。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インド国別評価報告書(2017年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。