ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年10月4日
評価年月日:平成30年7月19日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
ミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」という。)
1-2 案件名
ヤンゴン南部水供給計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ヤンゴン市南部において,取水・上水設備を整備・運営するとともに,水道管及び給水車等を通じて,より多くの衛生的な精製水を供給することにより,地域住民が利用する生活用水・飲用水の水質の改善を図り,もってミャンマー国民の生活向上に寄与すること目的としている。本邦企業が設立する特別目的会社(SPC)等による事業運営権の獲得を想定している。供与限度額は41.76億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がミャンマー政府により実施される必要がある。
- (1)プロジェクトサイトの確保と整地,取水許可取得等。
- (2)初期環境影響評価の取得等のミャンマー国内法に沿った手続の実施。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ミャンマー(一人あたり国民総所得1,190ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)同国の旧首都で全人口約6千万人のうちの510万人が居住するヤンゴン市内の南部に位置するダラ地区は,同国の民主化を受けた経済発展に伴って,近年急速に人口が増加しており,同地区への給水率は,中心部の住民に対するものでさえ,必要量の30%に留まっている。加えて供給される水は,掘り抜き井戸からの未処理水であり,塩分濃度が高い他,大腸菌群も検出されるなどしており,水質の改善が急務である。
- (3)同市外南部は,住居が点在する農村地域であり,水道管の敷設されている地域が限られているため,住民の多くは,ため池や井戸の水を未処理のままで飲用するなど,衛生上の問題を抱えている。
- (4)このため,取水・上水施設を建設し,水道管敷設地域については水道管を通じた生活用水供給を,また,水道管未敷設地域については給水車又はペットボトルによる精製水の供給を,それぞれ行うことにより,衛生上の問題を軽減する必要がある。
- (5)我が国の対ミャンマー経済協力方針では,「国民の生活向上のための支援」を重点分野の一つとしており,本計画は同方針に合致している。また,我が国は,ミャンマーをユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)支援の重点国と位置づけ,同国の人々の健康の確保に協力しており,生活用水・飲用水の改善は,人々の健康状態の改善を図る上で,土台となる取組である。
2-2 効率性
- (1)本計画は,施設の設計・施工から維持管理・運営まで本邦企業が設立するSPC等が包括的に担う事業スキームであり,本邦企業の知見が活用できる。
- (2)平成26年度無償資金協力「ヤンゴン市無収水削減計画」は,本計画と同じく水分野の支援であると共に,本邦企業が設立するSPC等が事業運営を行う点も共通するため,同事業の経験・教訓を活かした事業実施が可能である。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下の成果が期待される。
【定量的効果】
指標 | 2016年 | 2022年 |
---|---|---|
衛生的な水にアクセス可能となる対象地域住民の人口 | 約45,000人 | 約360,000人 |
【定性的効果】
ヤンゴン市内ダラ地区において取水・上水設備を整備し運営することにより,同地区住民に対するより多くの衛生的な水の供給を図るとともに,農村地域住民に対しては給水車等等による安全・安価な精製水の訪問販売等を通じ,ミャンマーが,誰一人取り残されない持続的開発を実現する上で不可欠な水・衛生状況の向上(SDGsのゴール6(水・衛生),ゴール3(健康)の達成への貢献)が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ミャンマー政府からの要請書
- (2)本邦提案企業及び調達代理機関候補からの聴取内容