ODA(政府開発援助)

平成30年4月6日

評価年月日:平成30年2月28日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件概要

(1)供与国名

イラク共和国

(2)案件名

バスラ上水道整備計画(第二期)

(3)目的・事業内容

 イラク南部バスラ県バスラ市及びハルサ市において,浄水場等の上水道施設の整備を行うことにより,両市の浄水供給の改善を図り,もってイラクの経済基礎インフラの強化に寄与する。2007年「バスラ上水道整備計画」が,水需要の増加,治安悪化による警備費等の増大に伴い総事業費が増加したことを受けた追加借款。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事,資機材調達
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
    194.15億円 1.00% 20(6)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分の金利は0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価):本計画は「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月制定)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への好ましくない影響は重大でないと判断される。なお,本計画は,2007年「バスラ上水道整備計画」の追加借款であり,新たなスコープ追加や大幅な計画変更はないため,当初計画と同じガイドラインに基づき判断している。
送配水設備の整備にかかる若干の用地取得が発生する可能性があり,その場合は実施機関であるイラク公共事業省により同国国内手続きに沿って取得が進められる。なお,住民移転は発生しない。
外部要因リスク:イラク政府は「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」からの全土解放宣言を表明しているが,ISIL分子の休眠細胞等によるテロ等の脅威は引き続き存在している。他方,本計画の対象地はISILの侵攻を受けていない地域であり,実施においてイラク政府と事業実施業者,国際協力機構等が連携して安全対策を行うことで,治安上のリスクに対応する。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 イラクの国家開発計画(National Development Plan: NDP)2013-2017では,「全国民の飲料水へのアクセスの保証」を上水道セクターの方針として示し,第一の目標として2025年までに安全な飲み水へのアクセスを95%に引き上げることとしている。バスラ上水道整備計画はNDP2013-2017において,上水道整備を通じて安全な飲料水へのアクセスの改善を図る上で優先度の高い事業と位置付けられている。
 バスラ市及びハルサ市を中心とするイラク南部は治安が比較的安定していることから,イラクの産業発展の起点となる重要地域であるが,電力不足とともに不十分な水供給が大きな問題となっており,社会不安を惹起する一因となっている。イラク経済の中心地域である両市において,経済活動の基礎となる安全で安定した水の供給は喫緊の課題である。
我が国の基本政策との関係
 我が国は,対イラク国別開発協力方針(平成29年7月)において,イラクに対し,「経済成長のための産業の振興と多角化」,「経済基礎インフラの強化」及び「生活基盤の整備」を重点分野として協力していくこととしている。イラクは石油資源に富むことから,日本とは経済的に補完関係にあり,イラクの安定的な発展は日本にとって重要な意義がある。
 本計画は,イラク経済の中心地域であるバスラ市及びハスラ市に安全で安定的な水を供給することにより,経済活性化への貢献が期待できるとともに,基礎的公共サービスの改善への貢献として,イラク及び地域の安定化にも資することから,イラクと経済的に補完関係にある日本として外交上の戦略的意義が認められる。

(2)効率性

 本計画の一環で,建設施設の運営・維持管理支援,技術移転及びトレーニング等を実施することにより,案件の効率性の確保が見込まれる。

(3)有効性

 本計画の実施を通じ,本計画完成2年後の2022年には,新設浄水場からの給水量は199,000立方メートル/日であり,バスラ市及びハルサ市における水需要を満たすことが期待される。また,新設浄水場処理水の濁度は10NTU以下,TDS(Total Dissolved Solid:総溶解固形物)は900ミリグラム/リットル以下(いずれも送水池で計測)であり,国際基準を踏まえつつイラク政府が定める基準値を満たす見込みである。このように,両市の浄水供給の量及び質の改善を図り,もってイラクの経済基礎インフラの強化に寄与することが期待される。
 さらに,イラクの経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本計画に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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