ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年3月31日
評価年月日:平成29年2月13日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件名
1-1 供与国名
ミャンマー連邦共和国
1-2 案件名
ミャンマーラジオテレビ局放送機材拡充計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ヤンゴン及びネーピードーにおいて,国営放送局であるミャンマーラジオテレビ局の放送機材を拡充することにより,放送能力の向上及び表現力豊かな質の高い放送番組作成のための環境整備を図り,もって国民和解の促進を含む経済社会を支える人材の能力向上に寄与することを目的としている。供与限度額は,22.63億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がミャンマー政府により実施される必要がある。
- (1)調達機材到着後据付工事完了までの機材の適切な保管スペースの確保
- (2)設計図書に基づく調達機材据付対象室及び所要電力容量の確保
- (3)据付工事開始までに要求された撤去,部分改修等要求された作業の確実な完了
- (4)諸手続手数料等,維持管理・運営のための予算及び人材の確保
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ミャンマーでは2011年の民政移管後,2014年に政府機関に対する情報公開請求権を規定した「新メディア法」を採択,また,国営メディアの国家管理を緩和する「公共サービス・メディア法案」,当国における放送事業の位置づけを国際スタンダードに整合させる「放送法案」が連邦議会で審議中など,積極的に報道機関等に関する規制緩和を進めている。
- (2)国営メディアの1つであるミャンマーラジオテレビ局(MRTV)は,国営放送局として,国民和解の促進,情報格差解消,教育・啓発等を強化・推進する役割を担い,高品質で多様な番組の提供を通じて国民の知識・素養の向上を図り,かつ高度化する国民の期待・要求に応える責務を担っている(MRTVは前述の放送関連法成立後,国家によって直接運営される国営放送局から,公的機関として独立運営される公共放送局へ移行予定)。
- (3)MRTVは1982年に我が国無償資金協力によりヤンゴンにスタジオセンターを建設したが(2006年,ネーピードーに首都を移転後,MRTV本局も首都に移転され,ヤンゴンは支局として活用されている),機材は老朽化しており,スタジオ内での番組製作は極めて困難な状況である。また,今後,MRTVは段階的にチャンネル数を増加させる予定であり,自主制作の番組数を増加させ,自社報道を強化していく計画であるが,必要な機材が不足している状況である。かかる状況の下,今後も継続して国民に表現力豊かな質の高い放送番組を提供していくためには,機材の更新や拡充が急務となっている。高品質で多様な番組の提供により,視聴者は知識や教養を磨くことが可能となり,国民和解の促進を含む経済社会を支える人材の能力向上が図られる。
- (4)また,日本政府は「日本再興戦略」として,2018年度までに放送コンテンツ等の海外市場売上高を倍加させることとしている。ミャンマーは官民一体で日本のテレビ番組の海外展開を促進する「一般社団法人 放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)」が重点的に諸活動を展開する国の1つであり,ミャンマーにおける放送事業強化は本重要戦略に資することから,本件を実施する必要性は高い。
2-2 効率性
2016年から4年間の予定でJICA技術協力「MRTV能力強化プロジェクト」を実施しており,正確で中立・公正な情報を国民に届けるための番組制作や自社報道に資する人材育成を支援中。本計画はこれら活動と相互補完するもの。
2-3 有効性
本計画の実施により以下のような成果が期待される。
- 【定量的効果】
基準年(2015年実績値)⇒目標値(2022年:事業完成3年後)- (1)制作番組数の増加(番組/週):1,543時間⇒1,654時間
- (2)放送時間数の増加(時間/週):791時間⇒903時間
- 【定性的効果】
- (1)表現力豊かな質の高い番組(テロップを挿入したトークショー,バーチャル映像システムを活用した番組等)の増加
- (2)経済社会を支える人材の能力向上の促進
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ミャンマー連邦共和国政府からの要請書
- (2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)