ODA(政府開発援助)

平成29年3月31日

評価年月日:平成29年3月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

チェンナイ地下鉄建設計画(第五期)

(3)目的・事業内容

 タミル・ナド州のチェンナイ都市圏およびその周辺人口密集地域において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって都市のモビリティ向上,道路交通混雑の緩和と大気汚染,騒音等の交通公害対策を支援し地域経済の発展及び都市環境の改善を通じて産業競争力の強化に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • 土木・建築工事,軌道工事(国際競争入札)
    • 電気・機械工事,信号・通信工事,自動料金徴収システム等(国際競争入札)
    • 車両調達(192両:48編成,1編成4両)(国際競争入札)
    • コンサルティング・サービス(ショートリスト方式)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    333.21億円 1.4% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
本計画は,「環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月公布)に掲げるカテゴリAに該当する。本計画にかかる環境影響評価(EIA)報告書は,インド国内法上作成が義務付けられていないものの,2008年5月に作成済みである。延伸区間に係るEIA報告書は,2016年6月に作成され,チェンナイ交通公社(CMRL)が承認済み。
用地取得及び住民移転
本計画では,これまでに77.62ヘクタール(うち民有地13.87ヘクタール)の用地取得,550世帯(うち非正規住民は552世帯)の住民と215軒の店舗がCMRLが作成した補償策,住民移転計画及び用地取得法に沿って移転を実施済みであり,2014年8月までに用地取得・住民移転は完了した。延伸区間について,約6.8ヘクタール(うち民有地約2.8ヘクタール)の用地取得が必要であるが,未取得は官有地に関しては99平方メートル,民有地に関しては約1.3ヘクタール部分を残すのみである(2016年12月時点)。また,住民21世帯が移転予定であり,残りの用地取得及び住民移転は2017年3月に完了予定。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進み,自動車及び二輪車の登録台数が2002年度以降年平均約8%程度の伸びを示すなど急速に増加する一方で,公共交通インフラの整備が進んでいない。特にチェンナイを含む大都市では道路交通需要の拡大に伴う交通渋滞が重大な問題となっており,経済損失並びに大気汚染・騒音等の自動車公害による健康被害が深刻化している。交通渋滞緩和及び都市環境の改善を図るための公共交通システムの整備が必要となっている。
 タミル・ナド州チェンナイ都市圏は,インド第4位の人口を有する南インド最大の都市圏である。近年人口が急増しており,中心であるチェンナイ市の人口密度は約25,000人/平方キロメートルであり,世界有数の人口過密都市となっている。
 本計画は,タミル・ナド州のチェンナイ都市圏およびその周辺人口密集地域において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって都市のモビリティ向上,道路交通混雑の緩和と大気汚染,騒音等の交通公害対策を支援し地域経済の発展及び都市環境の改善を通じた産業競争力の強化に寄与するものである。インド政府は,近年の経済成長に伴う輸送需要に対応するため,公共交通システムの整備を重視しており,また,タミル・ナド州政府においても,交通渋滞及び交通公害への対策として,大量高速輸送システムの整備を推進していることから,本計画は,インドの開発政策との高い整合性を有している。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
 「チェンナイ地下鉄建設計画(第五期)」は,タミル・ナド州のチェンナイ都市圏およびその周辺人口密集地域において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって都市のモビリティ向上,道路交通混雑の緩和と大気汚染,騒音等の交通公害対策を支援し,地域経済の発展及び都市環境の改善を通じて産業競争力の強化に寄与する案件であることから,上記(イ)に合致する。

(2)効率性

 チェンナイ都市圏の周辺人口密集地域における深刻な交通渋滞への対策として必要とされる本事業を,既に供与済の第一期~第四期に引き続き支援することは,インドの開発課題・政策並びに我が国及びJICAの援助方針・分析に合致する。

(3)有効性

 本計画の実施により,タミル・ナド州のチェンナイ都市圏およびその周辺人口密集地域において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって都市のモビリティ向上,道路交通混雑の緩和と大気汚染,騒音等の交通公害対策を支援し,地域経済の発展及び都市環境の改善を通じて産業競争力の強化に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2021年)見込み)として,稼働率(92.0%/年),車両キロ(84.0千キロメートル/日),運行数(800本/日・1方向),乗客輸送量(10.4百万人・キロメートル/日),旅客収入(42.1百万ルピー/日)等を設定している。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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