ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年3月13日
評価年月日:平成29年1月17日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
キューバ共和国(以下「キューバ」という。)
(2)案件名
稲種子生産技術向上のための農業機材整備計画
(3)目的・事業内容
本計画は,キューバの対象8県及び1特別自治区において,稲種子生産と処理に必要な機材を供与することにより,優良品種の稲種子生産の増加を図り,もって同国の農業開発に寄与するもの。
供与限度額は12億1,500万円。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画で整備する機材以外の稲種子生産に必要な農業投入財が農業公社グループにより確保されること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア キューバは,貿易収支において大きな輸入超過が続いており,その主な要因は,食料や燃料などの基礎物資を含む高い対外依存度である。そのため,同国の農業セクターでは,低い食料自給率の向上が優先課題となっている。中でも,主食である米の自給率は約40%(2012年,国家情報統計局)と低迷しており,経常収支改善と食料安全保障に資する米の増産は,米総合開発計画において優先的に取り組むべき課題となっている。
- イ 米の増産には,高品質の優良品種の種子を増産し,主要な米生産地への配布を拡充させることが重要である。キューバでは,2011年の第6回共産党大会にて承認された「党と革命の経済・社会政策指針」において,種子の生産,加工及び販売に寄与する総合政策の開発と推進を進めており,現在,稲種子生産システムの構築を進めている。
- ウ これまで,我が国は技術協力により,地域特性に適した優良品種の導入及びその種子の生産技術の普及を支援してきた。しかしながら,キューバでは,稲種子生産体制が大規模国営農場から農業協同組合や個人農家へと移行する中,組合や個人農家が使用できる機材が非常に限られており,耕起や代かき,均平等圃場整備作業が適切に行われず,イネの育成にムラが生じている。また,移植機不足により直播栽培が中心であるため,密植や雑草の繁茂といった課題も生じている。
- エ 本計画は,米の主要生産地及びキューバ政府が戦略的に米生産の拡大を図る地域である8県及び1特別自治区を対象に,稲種子生産と処理に必要な機材を供与することにより,優良品種の稲種子生産の増加を図り,もって同国の農業開発に寄与するものである。
- オ 2016年9月,安倍総理大臣がキューバを訪問した際,日・キューバ首脳会談において,今後,キューバに対して本格的な経済協力を推進していくこと,また,稲増産を目的とした農業分野での協力を行うことを表明した。本件は,こうしたハイレベルのコミットメントの着実な実施の観点からも重要である。
- カ 上記に加え,本事業の目的である稲種子生産の増加による米の増産は,SDGsのゴール2(飢餓・食糧安全保障・栄養・持続可能な農業)に資することからも,実施の意義は大きい。
(2)効率性
技術協力プロジェクト「基礎穀物生産技術普及プロジェクト」により,本計画と同じ地域を対象に,米・穀物生産農家に対する農業普及体制を強化する取組を実施しており,これら事業との連携により,対象地域において効率的に稲種子生産の拡充を進める。
(3)有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
- ア 対象地域における食用米生産農家の種子更新率を51.2%(2015年:実績値)から80%(2021年:事業完成3年後目標値)へ増加させる。
- イ 対象地域における稲種子栽培面積に占める移植栽培の比率を,ピナールデルリオ県及びグランマ県では1.4%(2015年:実績値)から30%(2021年:事業完成3年後目標値)へ,他の6県及び1特別自治区では,24%(2015年:実績値)から80%(2021年:事業完成3年後目標値)へ増加させる。
- ウ 対象地域における移植栽培生産における単収を生籾は4.2トン/ヘクタール(2015年:実績値)から5.0トン/ヘクタール(2021年:事業完成3年後目標値),乾燥調整籾は2.9トン/ヘクタール(2015年:実績値)から3.5トン/ヘクタール(2021年:事業完成3年後目標値)へ増加させる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)キューバ政府からの要請書
- (2)キューバ国別評価報告書
- (3)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)