ODA(政府開発援助)

2020(令和2年)年8月14日発行
令和2年8月14日

新型コロナウイルス感染症対策のため、医療機材を支援 ミクロネシアと日本の「絆」を紡ぐ

(画像1)ミクロネシア

在ミクロネシア日本国大使館 経済・開発協力班 牧 賢司

(写真1)ミクロネシアの外務大臣(左)と日本の側嶋大使(右) 握手の代わりに「グータッチ」で署名式を祝う、
ミクロネシアの外務大臣と日本の側嶋大使

 ミクロネシア連邦は日本から遙か南へ約3,800キロメートル、赤道付近の北太平洋に位置しています。東西約2,800キロメートルの広大な海域に607の島々が連なる島嶼(とうしょ)国で、東側からコスラエ、ポンペイ、チューク、ヤップの4州で構成されています。人口は約11万人、国土面積は東京23区程度のとても小さな国ですが、世界屈指の漁業資源(カツオ、マグロなど)を誇り、マングローブや珊瑚礁など豊かな自然に囲まれています。このような美しい自然を活かした観光業が、ミクロネシアの主要産業となっています。また、日本とは歴史的な繋がりも深く、多くの日系人が政治・経済の分野で活躍している親日国でもあります。

国土が点在。基礎的な医療インフラ不足が課題

 ミクロネシアは、国土が海に広く散らばり、多くの人々が点在する島々で暮らしているので、保健・医療や教育などの社会サービスの提供が難しいという課題があります。ミクロネシア政府は、2017年に保健基本計画(Public Health Base Plan)を策定して、公衆衛生の改善に取り組んでいますが、未だ基礎的な医療インフラが不足しているのが現状です。病院では、各州の中心的な役割を担う州立病院でさえも十分な医療機材や設備がなく、限られた機材や人材で対応に当たっています。

政府の感染症対策と地元住民のための保健・医療体制整備を支援

 ミクロネシアでは、早い段階で厳しい入国制限を行ったこともあり、新型コロナウイルスの感染者が確認されていない、数少ない国の一つです(8月5日現在)。一方で、人や物の行き来が制限されたことで、観光業が主要産業であるミクロネシアの経済は、大きな影響を受けています。現在、ミクロネシア政府は、今後の入国制限の緩和を考慮しながら、それによって感染者が出た場合の対応策を検討しています。このような政府の対応を後押しするため、日本は6月12日に「ミクロネシアに対する感染症対策及び保健・医療体制整備のための支援(無償資金協力)」(注1)を決定、その署名式が行われました。この支援によって、ミクロネシアに総額3億8,200万円の保健・医療関連の機材が提供され、ミクロネシアが取り組む感染症対策や保健・医療体制の強化に貢献します。

(写真2)ポータブルX線機材 日本のODAでチューク州に供与された
ポータブルX線機材。チューク州離島
での巡回診療が可能になります
(写真3)引渡式の様子 ポンペイ州救急車整備計画の引渡式。日本から供与された4WDの救急車により、救助範囲が拡大します

 この他、草の根・人間の安全保障無償資金協力(注2)でも積極的に保健・医療分野の支援を行っています。昨年は、「チューク州ポータブルX線機材整備計画」(注3)の署名式や「ポンペイ州救急車整備計画」(注4)の引渡式が行われました。

 チューク州の離島では、結核に感染する人が増えていますが、州都の置かれるウエノ島にしか病院がなく、結核の早期発見と治療が大きな課題になっています。離島まで持ち運びできるX線機材があれば、病院のない離島を巡回して検査・診察でき、早期発見と必要な治療に繋げることができるようになります。

 ポンペイ州では、舗装されていない道路が多く、多雨な気候(年間300日以上雨が降ります)ということもあって、悪い状態の道路が珍しくありません。一般的な救急車では入って行けない場所も多く、出動できる範囲も限られています。日本が供与した四輪駆動(4WD)の救急車は、悪路に強くて小回りが効くので、救急要請に応えられる範囲が拡大し、より良い救急医療サービスの提供が可能になりました。

 ミクロネシアのパニュエロ大統領をはじめとして、ミクロネシアの人々は日本との関係を表す際に「Kizuna(絆)」という言葉をよく口にします。日本とミクロネシアとの間には100年以上にわたる人と人との交流があり、今でも日常生活で人々は、「コイビト(恋人)」、「ベントウ(弁当)」、「ヤキュウ(野球)」などの日本語を使っています。

 私たちは、これからもこのような支援を通じて、歴史的な「絆 “Kizuna”」で結ばれた日本とミクロネシアとの友好・協力関係が一層発展することを願っています。

 (注)本記事は、7月28日に執筆されました。

新型コロナウイルス感染拡大防止のための国際協力

 新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大は、人の往来やモノの流通がグローバルに進展している今日、日本を含む全ての国の経済・社会にとっても大きな脅威であり、世界全体にとっての深刻な危機として国際社会全体が一致して取り組むべき課題です。そのため、日本がODAを通じて、途上国の感染防止対策および保健・医療体制強化のために行っている支援例を紹介します。

  • (写真4)一般治療室(注)以下の本文記事とは無関係です(写真5)子ども用治療室(注)以下の本文記事とは無関係です
    (注)写真はODAによって治療室が増改築されたインドネシア・スラバヤの
    病院。左側の一般治療室には「Nagoya」、右側の子ども用治療室には
    Ume」と日本語の名称がつけられ、大切に利用されています(平成24
    年度草の根・人間の安全保障無償資金協力「東ジャワ州ボジョヌゴロ県に
    おけるムハマディヤ系病院の治療室増改築及び設備整備計画」)。以下の
    本文記事とは無関係です。

インドネシアへの医療関連機材の供与

 インドネシアでは新型コロナウイルス感染症が拡大していますが、国内の医療関係のインフラが十分ではなく、保健・医療体制の強化が重要な課題となっています。そこで日本はインドネシアに対して保健・医療関連機材の供与を行う無償資金協力と、アジア開発銀行との協調融資によって、円借款を行うこととしました。

感染症対策および保健・医療体制整備のための支援例
国名をクリックすると支援の内容を詳しく知ることができます。
国名 供与内容 金額 ODAタイプ 署名日付
インドネシア 移動式X線撮影装置等 20億円 無償資金協力 7月20日
新型コロナウイルス感染症への積極的な対応及び支出支援プログラム・ローン 500億円
(償還期間15年)
円借款 7月20日
ペルー共和国 保健・医療関連機材 9億円 無償資金協力 7月22日
マラウイ共和国 保健・医療関連機材 3億円 無償資金協力 7月22日
ジョージア 除細動器、心電計等 3億円 無償資金協力 7月22日
キリバス X線撮影装置、患者用モニター等 2.5億円 無償資金協力 7月23日
エチオピア X線撮影装置、可搬型超音波画像診断装置等 15億円 無償資金協力 7月23日
エルサルバドル共和国 保健・医療関連機材 3億円 無償資金協力 7月24日
ヨルダン 一般X線撮影装置、ⅭTスキャナー等 4億円 無償資金協力 7月27日
セネガル 一般X線撮影装置、ⅭTスキャナー等 5億円 無償資金協力 7月28日
セーシェル共和国 移動式X線撮影装置、小型救急車等 1億円 無償資金協力 7月29日
エスワティニ 血液ガス分析装置、除細動器等 1億円 無償資金協力 7月30日
ルワンダ 患者用モニター、小型救急車等 3億円 無償資金協力 7月30日

(7月18日~7月31日署名分。日付は日本時間)

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