ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第359号
ODAメールマガジン第359号は,アルゼンチン共和国からシリーズ「日本と世界の懸け橋 日系社会とODA」第3弾として「「北海道人アルゼンチン移住100周年記念式典」日系人社会の歩みと,日系人社会に貢献する我が国援助」を,国際協力局政策課から「イノベーティブ・アジア事業の研修生が来日しました」および「【イベント報告】「グローバルフェスタJAPAN2017」過去最高の来場者数を記録!」を,また,国際協力局事業管理室から「JICAボランティア事業 2017年度長期秋募集&短期第3回募集」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。
「北海道人アルゼンチン移住100周年記念式典」日系人社会の歩みと,日系人社会に貢献する我が国援助
原稿執筆:在アルゼンチン日本国大使館 領事 古川 義一
アルゼンチンには,約65,000人の日系人がおられ,100以上の日系団体がありますが,各都道府県人会も活発な活動をされております。
本年8月20日,アルゼンチンのブエノスアイレス州エスコバール市のエスコバール日本人会館で「アルゼンチン共和国道産子移住100周年」及び「道産子会創立55周年」の記念式典が開催され,辻泰弘北海道副知事,大谷亨北海道議会議長,高橋房男在亜北海道人会長をはじめとした同道人会関係者,生垣彬在亜日系団体連合会副会長,福嶌教輝駐アルゼンチン日本国大使他合計約200名が出席しました。北海道副知事,北海道議会議長,在亜北海道人会長,福嶌大使他が挨拶・祝辞を述べた後,北海道庁から,移住功労者表彰,移住高齢者表彰(80歳以上及び90歳以上),移住50年者表彰の各表彰を行い,その後,在亜北海道人会から,道人会功労者表彰,道人会高齢者表彰(80歳以上)の各表彰を実施しました。
- 北海道副知事,道議会議長他
- 北海道移住100周年記念式典出席者
なお,同日,同式典の場で,平成29年度外務大臣表彰受賞者の細川正晴氏に対する表彰式を実施し,福嶌大使から細川氏に表彰状の授与が行われました。細川氏は,1985年から現在まで在亜北海道県人会の会長他の役職を務める等,長年に亘り,北海道と当国との友好親善に大きく寄与されました。
- 福嶌大使より細川正晴氏に
外務大臣表彰を授与 - 細川正晴氏とそのご家族
亜の日系社会に貢献する我が国の経済協力について,JICAは,アルゼンチンの国立農牧技術院(INTA)花卉研究所の前身となるアルゼンチン園芸総合試験場を1977年に設置し,日系花卉農家の営農支援等の技術協力を行いました。北海道から移住した日系人は,ブエノスアイレス市郊外のエスコバール地区で花卉栽培等を行い,同日系人が栽培した花卉の鑑賞や購入等ができるエスコバール花祭りが毎年9月下旬に同地区で開催され,今年で54回目を迎えました。
- INTA花卉研究所
- エスコバール花祭り
また,JICAは,アルゼンチンにおける日系社会を支援するボランティアを,1986年から2017年9月までに266名派遣しており,日本語教育,高齢者福祉,日本文化,スポーツ等の各分野の支援を実施しています。また,日系人の研修員を,1971年から2017年9月までに412名を日本に受け入れており,企業経営,教育,医療,日本食ビジネス等の各分野の研修を行っています。さらに,日系人の中学生,高校生,大学生を日本へ招聘する日系社会次世代育成研修,日系社会のリーダーを育成する事業も行っています。
- ボランティア派遣(日本舞踊)
- 日系人研修(日本食ビジネス)
在アルゼンチン日本国大使館では,アルゼンチンにおける草の根・人間の安全保障無償資金協力を,2004年度から2016年度までに贈与契約ベースで52案件実施しています(供与金額は約3億5千万円)。過去に,中古消防車,医療機材,農業機材,救急車等の供与を行い,同協力を通じて,当国の日系社会に資する活動支援も行っています。
例えば,1974年にニッカイ共済会が建設した「ニッカイ共済会診療所」には,超音波診断装置,血液分析機器,眼科検査機器等の医療機材を供与しています。同診療所の会員の中には,北海道から移住した日系人も含まれています。同診療所は,当地で暮らす日系人のみならず,アルゼンチン国民も利用可能であり,アルゼンチンの医療サービス向上に大きく貢献しています。
- ニッカイ共済会診療所
- 超音波診断装置
イノベーティブ・アジア事業の研修生が来日しました
原稿執筆:国際協力局政策課 佐藤 崇子 外務事務官
最近,よく聞く「イノベーション」という単語。「技術革新」と和訳されることが多いですが,辞書によれば「新しい制度,新しい捉え方」といった意味があるようです。そして,そのイノベーションを生み出すのは社会の多様性であるとも言われています。
先月,「イノベーティブ・アジア」と呼ばれる外務省・JICAによる新しい人材育成事業のもとで,東南・南西アジアの途上国から約150名の学生が来日しました。この事業は,この12か国のトップレベルの大学(「パートナー校」)の出身者の中で,日本の大学院等で主にIT(情報技術)やIoT(モノのインターネット化),AI(人工知能)といった理工学分野の研究を深めたい,日本企業でインターンシップを経験して日本の高い水準の技術を学びたい,と希望する多様な人びとを,今年度からの5年間で約1,000人受入れることを目指して開始されたものです。今回来日した研修員は,北海道から九州までの15大学で生活をスタートさせたばかりです。
- インドのパートナー校にJICA,大学の関係者とリクルートミッションへ。
筆者は前列右から3番目(2016年3月撮影)
- 事業内容や大学の研究環境等について真剣に聞き入るインド人学生たち。
この研修員の受け入れは,ODAを活用して行われるものですが,イノベーティブ・アジア事業では,単に研修員として受け入れるだけでなく,他省庁とも連携して研修終了後についても取組をおこなっています。もし,この事業の研修員が,日本国内で働くことを希望し,自力で雇用先の内定を取り付けることができた場合には,在留資格取得上の優遇措置を与えます。また,帰国後に日本企業での就職を希望する場合には,ジョブフェア等を実施しています。
日本を含むアジアの中で知と人材の還流がいっそう活発になり,持続的な経済の発展の基礎となるイノベーションが引き起こされて,人びとの生活がより豊かなものとなる触媒の役割を果たす政策としての狙いをもって始まったこの事業は,対象国からも歓迎され,ASEANやインドと首脳レベルでも協力を進めていくことが確認されています。
まだ始まって間もない事業ですが,成果について改めてご報告したいと思いますので,お楽しみに。事業内容の詳細は,外務省ODAホームページでご覧いただけます。
(「高度外国人材の育成・還流事業『イノベーティブ・アジア(Innovative Asia)』(技術協力)を開始します」)
【イベント報告】「グローバルフェスタJAPAN2017」過去最高の来場者数を記録!
原稿執筆:国際協力局政策課広報班
9月30日(土曜日)及び10月1日(日曜日),東京のお台場センタープロムナードにて「グローバルフェスタJAPAN2017」が開催されました。おかげ様をもちまして,本年は過去最高の来場者数を記録し,2日間で12万861名の方にお越しいただきました。
今年は「Find your Piece! 見つけよう,わたしたちにできること」(注)をテーマに,国際協力に関わる266団体(NGO,国際機関,在京大使館,企業など)による様々な企画が行われ,大盛況のうちに終了することができました。
(注)今年のグローバルフェスタは昨年に続き「持続可能な開発目標(SDGs)」がメインテーマでした。SDGsを“パズル”に例え,私たち一人一人の取組を“パズルのピース”と表現しました。ピースが一つでも欠けるとパズルは完成しません。それと同じように,SDGsは世界が一丸となって取り組むことで達成できる目標であるというメッセージを込めました。
- オープニングセレモニーの様子
- 個人部門最優秀賞
「日本からケニア国への
初めての消防技術援助」 - NGO部門最優秀賞
「自分の未来を切り開くために」
今年のグローバルフェスタは共催者代表等の登壇によるオープニングセレモニーで始まり,その後,外務省による特別企画の写真展表彰式を実施しました。個人部門及びNGO部門からそれぞれ上位3点を選出し,賞状と副賞(オリンパス株式会社様ご提供)が贈呈されました。今年の写真展は「Share your Piece わたしたちが伝えたい世界」のタイトルの下,一般公募によって集められたSDGsや国際協力に関わる写真が展示されました。また,一般公募作品のほか,今年は「草の根無償資金協力」や「人道支援」をテーマとしたコーナーも設置され,開発途上国の様子を来場者の皆様に紹介しました。
その後は豪華ゲストによるメインステージを実施!
- ピコ太郎さん登場!
- 会場の皆さんと記念撮影!
(左:岡本外務大臣政務官,
右:ピコ太郎さん)
まず登壇したのは,ピコ太郎さん!ステージではPPAP×SDGsのパフォーマンスが披露されたほか,岡本外務大臣政務官からピコ太郎さんに「SDGs推進大使」が委嘱されました。「なぜピコ太郎さんがSDGs推進大使?」と疑問に思われた方も多いはず。社会の様々なアクターが手を携え行動することを「Public Private Action for Partnership」と呼びます。まさにSDGsにおける「PPAP」。今年の夏,この偶然の一致により,ピコ太郎さんと外務省(SDGs)のコラボが誕生しました(ピコ太郎×外務省(SDGs)の動画はこちら)。そして7月にはピコ太郎さんによる国連でのSDGsパフォーマンスが実現。そんなピコ太郎さんと一緒に,PPAPを盛り上げ,日本と世界を元気にするため,「SDGs推進大使」が誕生しました!
- 現在は一般社団法人アスリートソサエティの
代表理事を務める為末大さん。 - ブータン流の挨拶を披露する
写真家・関健作さん。
続いて登場したのが為末大さん!ゲストには写真家の関健作さんが登壇。二人の共通点は「スポーツ」。為末さんは,スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得し,3度のオリンピック出場を果たした経験があり,関さんは,JICA青年海外協力隊の一員としてブータンで3年間体育教師を務めた経験が。そんな二人がスポーツを通じた国際協力や,世界に飛び出す方法を紹介してくれました。
- 今年のオリラジステージは
SDGsがテーマに! - ステージには
堀井巌外務大臣政務官も登壇!
そして,初日のトリを努めたのが,オリエンタルラジオのお二人!昨年に続き,立ち見続出のステージとなりました。今年は「SDGs」をテーマにトークを展開。藤森さんの私生活が,実はSDGsに関わり深いことが判明。ここで,ステージで紹介された「身近なSDGs(藤森さんの例)」を一部ご紹介!
合コンが実はSDGs!?【ゴール5:ジェンダー平等を実現しよう】
会場では藤森さんの合コン話になりました。相手は「働く女性」。実はこれもSDGs。世界ではジェンダー差別によって女性が働けない国・地域がたくさんあります。ジェンダーの平等があるからこそ,女性が働ける社会が成り立ちます!
藤森さんの趣味もSDGs!【ゴール6:安全な水とトイレを世界中に】
藤森さんの趣味はゴルフ。コースを回っている時,こまめに水分補給ができたり,トイレ休憩が挟めるのは,日本がSDGsのゴール6を達成しているからこそ!世界には安全な水が飲めない国・地域や,衛生的なトイレや下水システムなどのインフラが整備されていないところがたくさん。
一見「他人ごと」に思いがちなSDGsが,実は「自分ごと」であると気づかされるステージでした。
そして!このステージには堀井巌外務大臣政務官も登壇!堀井政務官とオリエンタルラジオのトークで,会場が笑いに包まれました。
- 外務省ブースの様子。
今年も新入省員のみんなが頑張りました! - 会場に設置された
「(S)そうだ!(D)どんどん
(G)がんばろう!
(s)スタンプラリー」の一部パネル
(吉本興業株式会社様ご提供)
その他,“ビジネス×国際協力”,“音楽×国際協力”,“映像×国際協力”,“教育×国際協力”など,さまざまな形の国際協力を紹介しました。本年もグローバルフェスタを通じて,一人でも多くの方に「国際協力」に関心を持っていただき,世界のために自分ができること(=ピース)を見つけるきっかけになったのではと思います。ご来場いただきました皆様,ご協力いただきました皆様,本当にありがとうございました!!
JICAボランティア事業 2017年度長期秋募集&短期第3回募集
原稿執筆:国際協力局事業管理室
突然ですが,JICAボランティアって,ご存じですか?
青年海外協力隊ならば聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。テレビ番組等で活躍を目にする機会があっても「忙しいし,難しそう」「ボランティアなんて…」と考えていませんか?
JICAボランティアは,青年海外協力隊,日系社会青年ボランティア,シニア海外ボランティア,日系社会シニア・ボランティア
の4種類に分類されており,2017年8月末現在,76か国で,2,441人のJICAボランティアが活躍しています。応募時の年齢や活動する場所で分かれていますが,共通しているのは,「参加したい!」という思いがあれば,20歳から69歳までの健康な方であればどなたでも応募頂けることです。
- マラウイで薬剤師として活動する
青年海外協力隊員
(写真提供:JICA/久野 真一) - ブータンで農産物加工を指導する
シニア海外ボランティア
(写真提供:JICA)
長期ボランティアは年2回,短期ボランティアは年4回募集をしており,まさに今,募集期間中です(長期の2017年度秋募集は2017年9月29日(金曜日)~11月1日(水曜日),短期の2017年度第3回は2017年10月10日(火曜日)~11月21日(火曜日))。
全国各地で予約不要の「体験談&説明会」も開催されている他,公式ウェブサイトで募集の概要や,隊員の活動を紹介するブログや動画も配信されていますので,「もっと知りたい協力隊」
を是非チェックしてみて下さい。
JICAボランティアには120種類以上の職種があり,必要とされている技術や経験・資格も多種多様です。「技術」と言っても,自動車の整備といったハード系の技術から,1人1人の内面にある創意工夫能力や企画力といったソフト系の技術まで,幅広くあります。活動期間も原則2年の長期から1か月~1年未満の短期があり,さまざまな支援制度がボランティアの参加前から帰国後までをそれぞれサポートしています。
今すぐに参加することは難しくても,募集要項や実際に参加された方の体験談を基に,もし自分が参加するとしたら,どんな国でどんな活動ができるかな,と想像してみるのも楽しいですよ。開発途上国にはこんなニーズがあるんだという新たな発見もあると思います。
まずはJICAボランティアの活動を知って下さい。そして,あなたの持つ技術や経験を,開発途上国の人々と共に生活・協働しながら途上国の国づくりのために活かしてみませんか。『世界を変えてきたのは,いつの時代も,たったひとりの強い想い』です!!
- ブラジルで小学校教育の指導にあたる
日系社会青年ボランティア
(写真提供:JICA) - ブラジルで栄養管理の指導にあたる
日系社会シニア・ボランティア
(写真提供:JICA/渋谷 敦志)