ODA(政府開発援助)

ODAメールマガジン第339号

2016年12月7日発行

平成28年12月8日

ODAメールマガジン第339号は,新シリーズ「世界を変える日本の技術」第1弾としてカメルーン共和国から「衛生的なトイレをカメルーンに バイオトイレを活用した環境改善」,シリーズ「国際機関と開発協力」第2弾として国際家族計画連盟(IPPF)本部から「日本と国際NGOの連携 IPPFタンザニアの現場から」,シリーズ「TICAD VI」第14弾として国際協力局国際保健政策室から「誰もが保健サービスを受けられるアフリカ アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて」と,国際協力局気候変動課から「マラケシュから世界へ発信 気候変動への行動 国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)」をお届けします。

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衛生的なトイレをカメルーンに バイオトイレを活用した環境改善

原稿執筆:合同会社TMT.Japan 横山 朋樹

皆さん,海外旅行や出張時,きれいなトイレを求めてさまよったことはありませんか?

合同会社TMT.Japanは,大分市で事業を展開している3名の経営者が海外で新規事業をしたい,との思いで平成24年に設立した会社です。
バイオトイレは,微生物の力で汚物を分解処理することが出来る自己処理型のトイレで,水を使わず,下水道設備や処理設備も不要なトイレとして注目を集めています。

  • バイオトイレ分解プロセス
    (写真提供:株式会社ミカサ)

富士山など,環境保全が重要な観光地で利用されたことのある方も多いと思います。TMT.Japanは平成27年からJICAの中小企業海外展開支援事業を通して,このバイオトイレをアフリカ・カメルーンへ導入できないか検証しています。

  • バイオミカレット国内納品実績
    (沖縄県竹富島)
    (写真提供:株式会社ミカサ)
  • バイオミカレット国内納品実績
    (和歌山県熊野古道)
    (写真提供:株式会社ミカサ)

皆さんは,「大分県とカメルーン」と聞くと「中津江村」を思い出されるかもしれません。2002年日韓ワールドカップの際,カメルーン代表のキャンプ地を提供した中津江村では,坂本休元村長を中心にカメルーンとの心温まる交流を今も続けています。しかし実は,私がカメルーンを知るきっかけになったのは,もっと前です。
1990年のサッカーワールドカップイタリア大会で,カメルーンチームはあのマラドーナのいるアルゼンチンを倒してベスト8になりました。私は当時学生で,その身体能力の高さへの衝撃とともにカメルーンの名前が記憶に刻まれました。

私たちの挑戦は,「どの国を目指すか」という選択から始まりました。
私は,「海外進出するなら日本企業が少ないところがいい」と考え,必然的にアフリカという選択肢になりました。私にとってアフリカで最も有名な国はカメルーンということで,独断でカメルーンに決めました。その時のカメルーンに関する私の知識は,国名とサッカー成績しかありませんでした。

中小企業海外展開事業の案件化調査に採択される前の平成26年2月に,初めて独自にカメルーン調査を敢行しました。

  • バイオミカレット海外納品実績(ODA事業 ペルー共和国)
    (写真提供:株式会社ミカサ)

カメルーンのトイレ事情は,穴を掘って流し込むことが中心です。しかも,穴に溜まった汚物は満タンになるとそのまま放置され,その横に新たに穴を掘って使うのが一般的です。穴に溜まった汚物は,チフスなどの原因になり,マラリア蚊の繁殖要因にもなっています。また雨季には穴から汚物があふれ出すこともあり,とても劣悪な衛生環境です。

下水処理場もあるにはあるのですが,そこにも大きな問題があります。処理場といっても,日本のように衛生的に処理しているわけではありません。川や山にそのまま投棄しているのが現実です。また,汲取り費用も2万~6万円と高額で,カメルーンの一般家庭にはとても負担できません。

トイレの数も全く足りておらず,首都ヤウンデ市では,人口約200万人に対して公共トイレは数か所しかなく,仕方なく屋外で用を足す人もいます。一般家庭では,4~5家族で1つの共用トイレを使っていて,各家庭に専用のトイレがない状況です。このため,夕方以降,女性がトイレで暴漢に襲われるといった事件も発生していて,安心してトイレを使うことが出来ません。またカメルーンの教育機関を代表するヤウンデ第一大学でもトイレ不足とその状態は問題で,トイレに行けない,行きたくないために授業を放って帰宅したり,我慢したり,日中水分を取らない様にする生徒が発生しています。劣悪なトイレ環境は,教育現場にも悪影響を及ぼしているのです。

このように,数,処理サイクル,習慣など,衛生的なトイレが使える環境が整備されていない状況です。バイオトイレは自己処理型トイレですので,処理サイクルを完備したトイレで,処理槽のおがくず交換も2年に一度程度と手間がかかりません。この技術・製品はカメルーンのような環境にこそ必要なものであることが調査の過程で明確になりました。カメルーンの方々からも,とても必要であると伝えられています。

では,どのようにすれば,カメルーンでバイオトイレを普及させることが出来るのか,というのがこの挑戦の課題です。カメルーンでは,バイオトイレが導入されたことはありませんので,まずは使ってもらうことが大切です。JICAの普及・実証事業を通じて,現在,バイオトイレをカメルーンに設置するための準備をしています。

将来カメルーンでバイオトイレを普及させるために最も大切なことは,バイオトイレをカメルーンで作ることだと思います。カメルーンの衛生環境の改善をカメルーンの人々と一緒に日本の技術で良くしていくこと。カメルーンの人々と力を合わせてバイオトイレを作ることが出来れば,カメルーンの衛生環境は飛躍的に改善すると思います。

近い将来,カメルーンの成功事例が世界中のトイレ環境の改善につながって,カメルーンで生産されたトイレが近隣諸国に輸出されることを目指して,頑張りたいと思います。

日本と国際NGOの連携 IPPFタンザニアの現場から

原稿執筆:国際家族計画連盟(IPPF)本部 谷口 百合 チーフ資金調達アドバイザー(東南アジア)

2002年から国際家族計画連盟(IPPF)で日本とIPPFをつなぐ役割を担い続けて早14年。
日々この仕事に大きな愛着と誇りをもって取り組んでいます。
その主な理由は,まず,IPPFが世界170か国の草の根レベルで活動を展開する世界最大級の国際開発NGOで,セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスに関する情報や教育,サービスの提供と政策提言活動を通じ,女性,男性,若者(特に貧困層や社会的弱者)の健康と権利へのアクセス拡大とエンパワメントに取り組んでいるからです。そして,日本とIPPFの長年にわたる特別なパートナーシップに関わることができるからです。
日本初の女性国会議員で日本の家族計画運動のリーダーでもあった加藤シヅエ氏はIPPFの設立メンバーの一人であり,日本政府は1969年以降,一貫してIPPFを支援しています。

最も大切な役割は,日本政府の拠出金が透明性をもって適正に効果的に使われているかに目を光らせ,説明責任を果たすことです。また,日本とIPPFの協力が最大限活かされ,効果を発揮するよう取り組んでいます。

支援の届きにくい地域や対象者に日本の優先する取り組みを行き届かせるべく,IPPFの活動や政策に日本の政策を反映させたり,民間企業,メディア,国会議員,オピニオンリーダー,大学等との連携を通じて,日本との繋がりを多角化することにより,日本がIPPFと連携することで実現できる取り組みを発掘する努力を重ねています。例えば,関西ペイントやパナソニックのような日本企業との連携により,日本の優れた技術や製品を活用し,IPPFの活動効果の向上を目指しています。

  • ソーラーランタン(パナソニック)の明かりのもと,
    電気のないガーナの村での母子保健教育セッション
    (写真提供:IPPF)
  • 防蚊塗料(関西ペイント)で
    モザンビークのクリニックの環境を改善
    (写真提供:IPPF)

また,毎年日本政府の支援で実施中のプロジェクト・サイトを対象としたアフリカ・メディア・トリップを実施しています。日本政府の支援によるIPPFの活動が,アフリカの人々の直面する課題解決にどのような効果をもたらしているかを日本の人々にメディアを通じて伝えることが目的です。2016年10月末のメディア・トリップでは,IPPFタンザニア(UMATI)が支援活動を行っているタンザニア,ザンジバル諸島のペンバ島を訪れました。住民のほぼ全員がイスラム教徒です。

  • ペンバ島のルキア・ムハンメド・アリさん(35歳)
    と4か月の男の子(写真提供:IPPF)
  • ペンバ島の女性と子供
    裁縫を習い生計を立てたいが,
    お金や時間,機会がない(写真提供:IPPF)

両親の反対で教育を受けられず,十代から多くの子どもを産み続け健康を害した女性,出稼ぎから戻った夫からHIVに感染し貧困に苦しむ女性,コミュニティ・リーダー,宗教指導者等を訪ね,インタビューを重ねた結果,島の女性を取り巻く厳しい環境が浮き彫りとなりました。

  • ペンバ島首都でHIVと共に生きる女性
    習得した裁縫と刺繍の技術で生計を立てている
    (写真提供:IPPF)

このメディア・トリップの結果,IPPFタンザニアのコミュニティ・ヘルス・ボランティアが島の女性たちに寄り添い,宗教指導者やコミュニティ・リーダーに女性の健康向上の必要性を訴え,村ぐるみの変革を目指して奮闘している姿が日本の新聞に掲載されました。

  • 東京新聞(中日新聞)2016年11月14日付

この記事を読んだ人たちがペンバ島の女性たちの直面する課題に目を向け,日本のODAの効果とIPPFが果たしている重要な役割について理解を深めてくださることを切に願っています。

今後も日本とIPPFの連携が,より多くの女性たちの命を守り,健康を向上させ,より大きな効果を生むことを目指して努力を続けてまいります。

  • 女性教師(IPPFボランティア)による,
    中学校でのHIVに関する授業(写真提供:IPPF)
  • IPPFボランティアである
    コミュニティ・ヘルス・ワーカー
    (写真提供:IPPF)
  • ペンバコジャニ島のコミュニティー・リーダーで
    IPPF研修を受けたボランティア
    (写真提供:IPPF)

誰もが保健サービスを受けられるアフリカ アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて

原稿執筆:国際協力局国際保健政策室 北川 典 外務事務官

すべての人が,必要なときに,基礎的な保健サービスを,支払い可能な費用で受けられることを指すユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)。
日本の医療保険制度の下では当たり前のように思えるこの概念も,世界を見わたせば,治療費が支払えず患者が受診を敬遠したり,医療へのアクセスが不十分であったりするケースがたくさん存在します。

  • 健康や衛生環境について話し合う住民集会
    (写真提供:JICA)

日本政府は,開発協力大綱の保健の課題別援助方針である「平和と健康のための基本方針」に,アフリカを含む開発途上国におけるUHCの実現に向けた支援を掲げています。
UHCの達成は我が国からの働きかけもあり,2015年9月に採択された持続可能な開発目標(SDGs)に位置づけられました。そして,G7においては,2016年5月の伊勢志摩サミットにおいて,日本の主導により初めてUHCの推進がハイライトされました。

こうした流れを受けて,我が国は,2016年8月のTICAD VIにおいて,保健を優先分野の1つとして取り上げ,G7サミットの成果である「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」をアフリカにおいても着実に実施するべく,公衆衛生危機への対応能力及び予防・備えの強化にも資するアフリカにおけるUHCの推進について合意しました。
また,安倍総理は,G7伊勢志摩サミットでの約11億ドルの拠出表明に関し,グローバルファンド,Gavi等を通じて,約5億ドル以上の支援をアフリカで実施し,約30万人以上の命を救うこと,感染症対策のための専門家・政策人材の約2万人の育成や,基礎的保健サービスにアクセスできる人数をアフリカ全体で約200万人増加することを表明しました。

  • UHC in Africaに関するハイレベルパネルでスピーチする安倍総理
    (写真提供:内閣広報室)

TICAD VIでは,様々な保健関連のイベントが開催されましたが,そのうちの一つ「UHC in Africa」ハイレベルパネルでは,ケニア,セネガル,エチオピア等アフリカ諸国のリーダー達や,WHO,世界銀行,グローバルファンド等の保健関連国際機関からUHCへのコミットメントが示されました。また,このイベントでは,アフリカにおけるUHCの実現に向け,アフリカ諸国が具体的な国家戦略を策定する際に参考となる政策枠組「UHC in Africa」を,日本政府,WHO,世銀,グローバルファンド等が共同で発表し,来年,UHCの進捗をモニタリングする国際会議を日本で開催する考えが示されました。

UHCの実現には,各国のオーナーシップ,リーダーシップの下,保健システム強化をはかることが不可欠です。そして,保健システムを強化するには,ほかでもない,その国の「人」の力を育てることが重要です。日本は特に,各国の中央,及び地方の保健政策人材育成を重要視して,JICAを通じた支援を進めています。
例えば,ケニアでは,昨年,アフリカで初めてUHCに特化した資金協力を行い,合わせて技術協力を行っています。具体的には,UHC政策文書の作成,無償産科サービス,貧困層の健康保険加入促進等のUHC関連プログラムのマニュアル作成,地方行政を主体とした保健システム強化等を支援し,これらの行政事業に関わる「政策人材」の育成を実施しています。

UHCは,全ての人が持ち得るポテンシャルを最大限発揮させ,健やかな国家を繁栄させる土台となります。

これからも日本は,自らの経験や知見・技術を元に,アフリカのオーナーシップを重視しながら,UHCに向けた政策策定支援,保健人材・保健政策人材の育成,国・地域及びコミュニティレベルでの能力強化等を通じ,アフリカ自身の力でUHCを達成する後押しをしていきます。

  • UHC実現に向けた主要な政策アクションの一つ,
    健康保険補てんプログラムに加入した住民
    (写真提供:JICA)

マラケシュから世界へ発信 気候変動への行動 国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)

原稿執筆:国際協力局気候変動課

11月7日から18日までの2週間,国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)がモロッコのマラケシュで開催されました。この会議は,国際社会の気候変動に対する取組について討議するもので,昨年パリで開催され,2020年以降の新たな枠組みである「パリ協定」を採択したCOP21は,みなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

COP7(2001年)に続き,2回目の開催となったマラケシュでは,町中にモロッコの国旗と今年のCOPのテーマである「Act(行動)」を呼びかける旗がはためき,開幕直前の「パリ協定」の発効(11月4日)も相まって,街全体が歓迎ムードに包まれていました。

  • マラケシュへ向かう飛行機もCOP22のロゴ一色に
  • 会場の広場で披露された伝統的なダンス

ひとくちに,COPといってもその中には様々な専門家会合があります。日本政府代表団も外務省のみならず,財務省・国土交通省・農林水産省・経済産業省・環境省などの関係省庁が一体となって参加しました。全体の参加者は190以上の国と地域から合計約2万人にものぼり,それらの参加者が30ある会議場にそれぞれ散らばり,会期の二週間にわたって幅広い論点を交渉するという壮大な会議です。
連日にわたり交渉は続き,最終日には午前0時過ぎまで会議が行われ,今後の気候変動交渉の進め方等を決定した合意文書が無事に採択されました。

  • 閣僚級会合で演説する山本環境大臣
  • 交渉も大詰めとなると,席を立ち議場の一角に集まって議論が始まります
  • 文書採択の瞬間

政府間交渉のための会議場だけでなく,各国政府,企業やNGOが自らの多岐にわたる気候変動に対する取組を紹介するパビリオンが設置されているのもCOPの特徴です。日本政府のパビリオンでは,環境配慮型の町のモデル展示や国立公園の紹介に加え,世界各国と協力して政府が行っている気候変動対策が紹介されました。企業ブースは,最新の技術を駆使した取組であふれ,NGOの展示ではアート作品を通じた気候変動への行動の呼びかけも行われていました。

  • 日本パビリオンでの炭素市場プラットフォームに関するイベント
  • 市民団体によるアート作品の展示

このように,気候変動への行動のために,政府・企業・市民社会が一体となって取り組む力強い動きが感じられた2週間でした。
会議の詳細は外務省ホームページにて報告しています。
また,公式ツイッター(@CC_MofaJapan)では日々の気候変動に関連する日本や世界の動きについて発信中です。ぜひ御覧ください。