気候変動
国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22),京都議定書第12回締約国会合(CMP12),パリ協定第1回締約国会合(CMA1)等
平成28年11月18日

11月7日から18日まで、モロッコ・マラケシュにおいて、国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)、京都議定書第12回締約国会合(CMP12)等が行われた。また、11月4日にパリ協定が発効したことを受けて、15日から18日までパリ協定第1回締約国会合(CMA1)が行われた。我が国からは、山本環境大臣、外務・経済産業・環境・財務・文部科学・農林水産・国土交通各省の関係者が出席した。
今次会合における日本政府の対応、具体的な成果及び評価は以下のとおり。
今次会合における日本政府の対応、具体的な成果及び評価は以下のとおり。
1 会議の概要と日本政府の対応
今回のCOP22に際し、日本は、(i)包摂性(inclusiveness)に基づく意思決定の確保、(ii)パリ協定の実施指針を巡る議論の推進、(iii)日本の気候変動分野での国際的協力についての発信の3点を主な目的として臨んだ。これらの3点については、会議の各局面を通じておおむね達成できたと評価している。
(1)パリ協定の実施指針等に関する今後の交渉の進め方及び意思決定の方法について、日本は、協定の締結・未締結にかかわらず、引き続き全ての国が実施指針等の検討に参加し、包摂性を確保することを通じ、策定された指針等に当事者意識(ownership)を持つことが重要との考えを持って臨んだ。日本は11月8日にパリ協定を締結したが、政府代表団として、エスピノサ国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長や議長国モロッコのメクアール多国間交渉担当大使等と意見交換を行った上、今後の作業に明確性を持たせるためにも交渉の手続を定めた簡潔なCMA決定及びCOP決定について合意すべきこと、その交渉のたたき台として議長国が決定案を作成すること等を提案した。
(2)パリ協定の実施指針等に関する具体的な議論においては、一部の途上国より、先進国と途上国との間でパリ協定に基づく取組に差異を設けるべきとの強い主張があり、これに反対する先進国との間で意見に隔たりが見られた。日本は、他の先進国とともに、全ての国の取組を促進する指針を策定する必要があり、先進国と途上国とを二分化した指針とすべきではないこと等を主張した。また、2018年までの指針等の策定に向けて速やかに技術的な作業を進めるため、2017年5月に開催される次回会合までの具体的な作業計画を策定すべきである旨主張した。
(3)気候変動に関する日本による国際協力の発信については、山本環境大臣は各国の閣僚級や国際機関のCEO等(EU、ドイツ、イタリア、モロッコ(COP22議長国)、中国、タイ、GEF、UNFCCC事務局長)との会談を開催した。また、「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」を11月11日に発表し、適応に関する国際連携を含め、気候変動対策に関する我が国の取組や意欲を発信するとともに、今後の協力について意見交換を行った。さらに、バイ会談等において、山本環境大臣は、各国が団結して温暖化対策に臨む力強いメッセージを出していくことが必要である旨述べ、その認識を各国閣僚等と共有した。あわせて、日本として、今後も中心的な役割を果たしていきたい旨伝えた。
パリ協定の実施に当たっては、国際的な協調の下、効果的な支援を展開していくことも重要であることから、山本環境大臣等は「NDCパートナーシップ」の設立イベント等、国際的なパートナーシップやイニシアティブ、各種イベントにも参加し、国内外の研究機関、支援機関等とも連携・協働し、パリ協定の実施を後押ししていく旨表明した。
また、日本政府としてジャパン・パビリオンと題するイベントスペースを設置し、「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」をはじめ、国、各種機関・組織、研究者等の取組の紹介や議論を行うイベントを多数開催し、気候変動対策に関する我が国の貢献等について紹介した。
(4)山本環境大臣は、閣僚級会合での演説において、パリ協定の早期発効を歓迎し、各国の熱意と努力に敬意を表すとともに、我が国も11月8日には締結手続きを完了し、我が国として、積極的にパリ協定のルール作りに貢献していくことを表明した。また、地球温暖化対策計画を閣議決定したことに加え、今後の長期戦略や途上国支援に係る取組についての姿勢を示し、さらに気候変動対策における政治的なリーダーシップが今以上に重要となることを実感している旨述べた。
(5)気候資金については、「資金に係る隔年ハイレベル閣僚対話」では、適応資金について活発な議論が行われた。日本からは、適応においては特に防災の観点から力を入れており、仙台防災枠組を通じて貢献してきたこと、また適応資金の強化に向け、各国にある日本大使館を通じて約30の途上国と気候変動交渉官を交え、より良い案件形成に向けた対話を行っている旨発言した。また、「促進的対話」においては、透明性に関する能力開発イニシアティブ(Capacity Building Initiative for Transparency :CBIT)について、日本もCBITを通じた着実な支援を重視しており、現在CBITに対する資金拠出を真剣に検討中である旨発言し、CBITに関する共同声明を関係国と共に発表した。
(6)パリ協定の重要な柱の一つである市場メカニズムに関し、日本は、二国間クレジット制度(JCM)に署名した16か国が一堂に会する「第4回JCMパートナー国会合」を開催した。その場で16か国の代表者とJCMクレジットの発行を含むJCMの進捗を歓迎し、JCMをさらに推進していくことを確認した。また、ドイツと日本が共同議長となり、本年6月に「炭素市場プラットフォーム第1回戦略対話」を東京で開催したことを受けて、その概要の紹介や今後のプラットフォームの方向性等について議論するサイドイベントを開催した。
(1)パリ協定の実施指針等に関する今後の交渉の進め方及び意思決定の方法について、日本は、協定の締結・未締結にかかわらず、引き続き全ての国が実施指針等の検討に参加し、包摂性を確保することを通じ、策定された指針等に当事者意識(ownership)を持つことが重要との考えを持って臨んだ。日本は11月8日にパリ協定を締結したが、政府代表団として、エスピノサ国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長や議長国モロッコのメクアール多国間交渉担当大使等と意見交換を行った上、今後の作業に明確性を持たせるためにも交渉の手続を定めた簡潔なCMA決定及びCOP決定について合意すべきこと、その交渉のたたき台として議長国が決定案を作成すること等を提案した。
(2)パリ協定の実施指針等に関する具体的な議論においては、一部の途上国より、先進国と途上国との間でパリ協定に基づく取組に差異を設けるべきとの強い主張があり、これに反対する先進国との間で意見に隔たりが見られた。日本は、他の先進国とともに、全ての国の取組を促進する指針を策定する必要があり、先進国と途上国とを二分化した指針とすべきではないこと等を主張した。また、2018年までの指針等の策定に向けて速やかに技術的な作業を進めるため、2017年5月に開催される次回会合までの具体的な作業計画を策定すべきである旨主張した。
(3)気候変動に関する日本による国際協力の発信については、山本環境大臣は各国の閣僚級や国際機関のCEO等(EU、ドイツ、イタリア、モロッコ(COP22議長国)、中国、タイ、GEF、UNFCCC事務局長)との会談を開催した。また、「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」を11月11日に発表し、適応に関する国際連携を含め、気候変動対策に関する我が国の取組や意欲を発信するとともに、今後の協力について意見交換を行った。さらに、バイ会談等において、山本環境大臣は、各国が団結して温暖化対策に臨む力強いメッセージを出していくことが必要である旨述べ、その認識を各国閣僚等と共有した。あわせて、日本として、今後も中心的な役割を果たしていきたい旨伝えた。
パリ協定の実施に当たっては、国際的な協調の下、効果的な支援を展開していくことも重要であることから、山本環境大臣等は「NDCパートナーシップ」の設立イベント等、国際的なパートナーシップやイニシアティブ、各種イベントにも参加し、国内外の研究機関、支援機関等とも連携・協働し、パリ協定の実施を後押ししていく旨表明した。
また、日本政府としてジャパン・パビリオンと題するイベントスペースを設置し、「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」をはじめ、国、各種機関・組織、研究者等の取組の紹介や議論を行うイベントを多数開催し、気候変動対策に関する我が国の貢献等について紹介した。
(4)山本環境大臣は、閣僚級会合での演説において、パリ協定の早期発効を歓迎し、各国の熱意と努力に敬意を表すとともに、我が国も11月8日には締結手続きを完了し、我が国として、積極的にパリ協定のルール作りに貢献していくことを表明した。また、地球温暖化対策計画を閣議決定したことに加え、今後の長期戦略や途上国支援に係る取組についての姿勢を示し、さらに気候変動対策における政治的なリーダーシップが今以上に重要となることを実感している旨述べた。
(5)気候資金については、「資金に係る隔年ハイレベル閣僚対話」では、適応資金について活発な議論が行われた。日本からは、適応においては特に防災の観点から力を入れており、仙台防災枠組を通じて貢献してきたこと、また適応資金の強化に向け、各国にある日本大使館を通じて約30の途上国と気候変動交渉官を交え、より良い案件形成に向けた対話を行っている旨発言した。また、「促進的対話」においては、透明性に関する能力開発イニシアティブ(Capacity Building Initiative for Transparency :CBIT)について、日本もCBITを通じた着実な支援を重視しており、現在CBITに対する資金拠出を真剣に検討中である旨発言し、CBITに関する共同声明を関係国と共に発表した。
(6)パリ協定の重要な柱の一つである市場メカニズムに関し、日本は、二国間クレジット制度(JCM)に署名した16か国が一堂に会する「第4回JCMパートナー国会合」を開催した。その場で16か国の代表者とJCMクレジットの発行を含むJCMの進捗を歓迎し、JCMをさらに推進していくことを確認した。また、ドイツと日本が共同議長となり、本年6月に「炭素市場プラットフォーム第1回戦略対話」を東京で開催したことを受けて、その概要の紹介や今後のプラットフォームの方向性等について議論するサイドイベントを開催した。
2 会議の具体的な成果
(1)パリ協定の実施指針等に関するCMA1開催後の交渉の進め方については、我が国が重視していた包摂性が確保されたほか、実施指針等を2018年までに策定することが合意された。今後の交渉の進め方について、具体的には次の手続がCMA決定及びCOP決定に規定された。
(3)資金については、本年の資金に係る第2回隔年評価書作成等の成果を歓迎するとともに、更なる議論を行っていく上での論点整理や方向付けを行った。例えば、資金の捕捉に係る方法論の議論については、ワークショップや交渉会合を通じて、気候資金の捕捉のあり方について率直な意見交換が行われ、重要な要素を確認する等、第46回補助機関会合(SB46)で引き続き透明性向上に向けた前向きな議論を行う上での足がかりを作ることができた。また、本年10月のプレCOPで発表した「Roadmap to $ 100 billion」については、先進国が主体的に提出したことについて途上国から歓迎された。
(4)議長国モロッコより、各国に対して気候変動対策を呼びかける文書(「マラケシュ行動宣言」)が発出された。自治体や企業等の非政府主体の行動を強化するための「グローバルな気候行動に関するハイレベルイベント」では、更なる取組強化を目指し、「マラケシュ・パートナーシップ」の設立が発表された。また、政府及び非政府主体の長期的視野に立った具体的な行動を後押しするための「長期目標達成に向けた2050年までの道筋プラットフォーム」の設立イベントが開催され、我が国も参加を表明した。
(5)その他、損失及び損害に関するワルシャワ国際メカニズムのレビュー、能力開発に関するパリ委員会、技術メカニズムと条約の資金メカニズムの連携等に関するCOP/CMP決定が採択された。
(6)次回COP23は、フィジーが議長国となり、2017年11月にドイツ・ボンで開催されることとなった。
- 引き続き全ての国が参加する形で実施指針等の交渉を行う。
- 2017年にCMA1を一度再開し、作業の現状確認を行った上、再び中断する。
- 2018年にCMA1を改めて再開し、実施指針等を採択する。
(3)資金については、本年の資金に係る第2回隔年評価書作成等の成果を歓迎するとともに、更なる議論を行っていく上での論点整理や方向付けを行った。例えば、資金の捕捉に係る方法論の議論については、ワークショップや交渉会合を通じて、気候資金の捕捉のあり方について率直な意見交換が行われ、重要な要素を確認する等、第46回補助機関会合(SB46)で引き続き透明性向上に向けた前向きな議論を行う上での足がかりを作ることができた。また、本年10月のプレCOPで発表した「Roadmap to $ 100 billion」については、先進国が主体的に提出したことについて途上国から歓迎された。
(4)議長国モロッコより、各国に対して気候変動対策を呼びかける文書(「マラケシュ行動宣言」)が発出された。自治体や企業等の非政府主体の行動を強化するための「グローバルな気候行動に関するハイレベルイベント」では、更なる取組強化を目指し、「マラケシュ・パートナーシップ」の設立が発表された。また、政府及び非政府主体の長期的視野に立った具体的な行動を後押しするための「長期目標達成に向けた2050年までの道筋プラットフォーム」の設立イベントが開催され、我が国も参加を表明した。
(5)その他、損失及び損害に関するワルシャワ国際メカニズムのレビュー、能力開発に関するパリ委員会、技術メカニズムと条約の資金メカニズムの連携等に関するCOP/CMP決定が採択された。
(6)次回COP23は、フィジーが議長国となり、2017年11月にドイツ・ボンで開催されることとなった。
3 評価
上述の通り、今回のCOP22を通じて、日本が目指していた3点の目標はおおむね達成できたと評価できる。また、パリ協定の早期発効及びCMA1の開催を歓迎するとともに、全ての国が関与する形で今後も交渉が行われることとなったことが高く評価される。実施指針等に関する議論を促進する観点から、採択の期限が2018年に決まったことも重要な成果である。ただし、一部途上国より、先進国のみの取組を求めるべきとのパリ協定採択以前の主張が繰り返されたこと等により、今次会合においては主張の違いが明確になったことから、今後どのように建設的かつ速やかに議論を進めていくかが課題となる。
なお、会合期間中の9日に米大統領選においてトランプ氏が当選したことを受け、今次会合においては、来年発足する次期政権の気候変動政策に関係国の関心が集まった。多くの参加国からは、国際社会においてきわめて重要な課題である気候変動問題の解決に向けて、今後も国際的な協力の下、前進していくべき旨が表明された。
なお、会合期間中の9日に米大統領選においてトランプ氏が当選したことを受け、今次会合においては、来年発足する次期政権の気候変動政策に関係国の関心が集まった。多くの参加国からは、国際社会においてきわめて重要な課題である気候変動問題の解決に向けて、今後も国際的な協力の下、前進していくべき旨が表明された。