ODA(政府開発援助)

2016年2月10日発行
平成28年2月12日

中所得国となったタイ

原稿執筆:在タイ日本国大使館 小林 孝 二等書記官

タイは経済発展を遂げ,1人当たりGDPが6,000ドルを超え,中所得国となりました。
長年の日本による経済協力の甲斐もあって,基本的なインフラは整い,また,街には日本車があふれ,高層ビルが続々と建設されています。

日本とタイは伝統的に友好関係を維持しており,来年は日タイ修好130周年を迎えます。特に経済的な結びつきは強く,5,000社を超える日系企業が進出し,在留邦人は届け出ベースで6万人を超えます。また,昨今は大変な日本ブームであり,街の至る所で和食レストランを目にすることが出来ます。タイからの訪日観光客も急激に増加しており,2015年には約80万人のタイ人が日本を訪れています。

この様な中で,日タイの関係をこれまで以上に強化すべく,オールJAPANで取組を進めています。

タイは中所得国となった一方で,失業率が1%未満であることに加え,近い将来に少子化による労働力人口の減少が見込まれる中,このまま低付加価値の労働集約産業に頼った成長を続けると,いわゆる「中所得国の罠」に陥るおそれがあります。タイがさらなる経済的飛躍を遂げるためには,産業の高付加価値化が不可欠です。そのために,大使館は高い付加価値を有する日系企業の進出を支援し,日本が有する高度な技術の移転,日本の高度な医療技術・機器の普及・促進も後押しています。

また,高付加価値産業の育成にあたっては,研究開発投資(R&D)や人材育成が重要です。近年,日本の多くの大学がタイに拠点を設置しており,教育における日タイ間の協力の事例も増えてきています。これらの協力の成果の積み重ねを活用しながら,中堅人材の育成に資する職業訓練や技能開発への支援や,日本語学習者・日本語能力検定試験受験者・日本留学生の増大を図るとともに,日系企業への就職機会の拡充を図ることで,新たな親日層を育成していきます。

この他,近年は,タイ国内の賃金上昇を背景に,当地日系企業をはじめとして,タイでの活動を高付加価値の工程に特化し,単純作業など労働集約工程を周辺国に移す,いわゆる「タイ・プラスワン」の動きが顕著です。こうした中,タイがASEAN,特にメコン地域で中心的地位を確立し,地域間での分業をより効果的なものとするためには,タイ国内に加え,周辺地域との連結性向上のための質の高いインフラ整備が求められています。利用者のニーズを踏まえた,信頼性・安全性・環境性の高い「質の高いインフラ」の整備は日本の得意とするところであり,大使館は日本の技術の活用を後押ししています。

一方,日系企業が当地で安心して活動し,さらなる投資を出来るよう,ビジネス環境の整備も重要です。特に関税手続に係る透明性確保や外資規制の改善など投資環境の整備に向けて,大使館はタイ政府と日系ビジネス界の対話の橋渡し役を務めています。

  • 大使館から見た街並み
  • 円借款で建設された地下鉄駅

官民連携による障害者の自立支援プロジェクト

原稿執筆:在タイ日本国大使館 吉野 大輔 二等書記官

タイ国統計局の2012年のデータによれば,タイでは15歳以上の障害者数が約143万人いますが,障害者に対しての教育や訓練を行う施設はまだ少なく,また障害者の雇用機会も限定的であり,障害を持った就業者は約37万人程度にとどまっています。

そのような中,タイ政府および日本政府によって設立されたAPCD(アジア太平洋障害者センター)は,2009年にシリントン王女殿下後援の王室財団とされた後も,アジア太平洋地域において,全ての人に優しいバリアフリー社会の実現を目指してきました。今まで約2,400人以上の障害者にトレーニングやワークショップを実施してきましたが,訓練を提供できる十分なスペースおよび車両の確保が課題となっていました。

このため,昨年12月,日本政府は「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を用いて,障害者を対象とした就労訓練所が併設されている販売所(バリアフリーのカフェテラス)および車いすリフト付きの移動販売車を整備しました。

また,タイにおける3例目の「官民連携」案件として,山崎製パン(株)の現地法人であるタイヤマザキより,パン製造および販売の指導,経営アドバイスの提供等の支援を得た他,JICAボランティアスタッフが期間限定で教育担当として常駐したことで,就業・自立支援の効果を更に高めることができました。

今回,障害者を対象に,実務訓練を含む職業訓練を提供することで,当該障害者の自立を促すだけでなく,誰もが住みやすい社会づくりへ国民の理解が促進されるパイロットプロジェクトとなることが期待されています。

シリントン王女殿下のご生誕60周年記念事業式典も兼ねた本件支援の引渡し式典においては,シリントン王女殿下も出席され,数多くのメディアで紹介されました。

日本政府として,今後もCSR活動を実施している日系企業と連携し,タイにおける草の根レベルの支援活動を効果的に実施していきたいと考えています。

  • 在タイ日本国大使館 福島次席公使より
    シリントン王女殿下へ移動販売車の鍵
    (レプリカ)贈呈
  • シリントン王女殿下と障害を持つ
    パン販売および製造スタッフ
  • 障害を持つスタッフのパン製造現場
  • 供与した車いすリフト付き移動販売車

外務省ホームページ「ODAちょっといい話」の更新

原稿執筆:国際協力局政策課広報班

外務省ホームページ「ODAちょっといい話」に新たにエチオピアの案件を掲載しました。

近年,めざましい発展を遂げている東アフリカのエチオピアですが,一方で,都市化に伴い新たな課題として「女性の自立」に注目が集まっています。日本政府は,首都アディスアベバで経済的に困難を抱えている寡婦やシングルマザーの自立を支援しています。供与国の開発レベルを考慮し,様々な分野・角度から開発支援を行うことが,とても大切です。

日本の開発協力は今年62年目を迎えます。国際社会における日本の開発協力に期待される役割や,今後の日本の開発協力のあり方に思いを巡らせてみてください。

今後も引き続き,いろいろな地域の開発協力案件をアップ予定です。
世界中で活躍する日本の「人間力・技術力」にご注目ください!

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