ODA(政府開発援助)

2015年8月12日発行
平成27年8月14日

経済成長著しい国エチオピア 変化が求められる対エチオピア援助

原稿執筆:在エチオピア日本国大使館 大友 陽平 二等書記官

アフリカ大陸北東部,北にエリトリア,南にケニア,東にソマリア,そして西に南北スーダンと国境を分かつ内陸国のエチオピア。
人口の約3割が貧困層であると言われており,人間開発指数も調査対象国187ヶ国中第173位と低い水準であることからも,「貧困に苦しむ国」という印象が強いと思います。しかし,エチオピアは2005年以降の10年間で年率平均約10%の成長を遂げる,世界の中で最も成長著しい国の一つでもあるのです。

エチオピア経済発展の背景には,エチオピア政府の強い意志があります。
エチオピア政府は2010年に第1次国家開発5ヵ年計画(Growth and Transformative Plan: GTP)を策定し,農業を中心とした経済発展に加えて,工業に重点を置いた産業構造への転換を図り,2025年までに中所得国入りするという目標を立て,鉄道,道路,電力網などインフラストラクチャーの整備や,工業化に向けた工業団地の整備や産業人材の育成に力を入れています。

こうしたエチオピアのめざましい発展とエチオピア政府の強い意志に応えて,我が国は従来のようなエチオピアの食料安全保障を確立するための技術協力や肥料等の農業資材の供与といった援助に加えて,現在では,戦後日本の経済発展を支えた「カイゼン」の理念を普及させる技術協力プロジェクトや,エチオピアの工業化を促進するためにハイレマリアム首相と日本の有識者が直接面談を行って政策提言を行う「産業政策対話」など,エチオピアの経済成長を後押しする援助を多く実施しています。これらの援助の特徴は,NGOや大学,日本企業などをODAの新たな担い手として迎え入れ,彼らが持つ知識や技術を最大限に活かしている点にあります。

  • 「カイゼン」プロジェクトによって整理整頓が行われるようになった前後の変化

エチオピアにおける貧困問題は解決されなければならない問題であり,引き続き支援を行っていく必要があります。しかし,エチオピアの現状を踏まえれば,これまでの食料安全保障を中心とした援助に加えて,日本の優れた知見を普及させることで,経済成長にも貢献することが今私たちに求められているのです。

危機遺産の脱却を目指して(シミエン国立公園および周辺地域における官民協働によるコミュニティ・ツーリズム開発プロジェクト)

原稿執筆:JICAエチオピア事務所 福田 佳奈 所員

エチオピアには,ユネスコが指定する8つの世界文化遺産と1つの世界自然遺産,併せて9つの世界遺産があります。アフリカ大陸の中ではモロッコと並んで最も数の多い国です。日本から見ると「アフリカの一つの国」に映るエチオピア。実は観光資源が多く,2015年欧州評議会の観光・貿易部門ではスペイン,イタリア,タイなどを含む31ヶ国中世界最高の観光地に選ばれました。

観光立国を目指すエチオピアにとって追い風ではあるわけですが,実際には観光地周辺のインフラ整備が不十分なところもあれば,初めて来た観光客にも分かるような標識・案内板がほとんどなく,ツアー,ガイド,ホテル,レストランといったサービス業も海外からのお客様を満足させられるレベルにはほとんどありません。また,国内唯一の世界自然遺産である「シミエン国立公園」は,1978年にガラパゴス諸島などと並んで世界で初めて自然遺産に指定されたものの,1996年に危機遺産に指定されてしまいました。理由は,公園内の住民の数が増加して,彼らが営む農耕・畜産が環境や生態系に与える影響が深刻になったことです。

  • シミエン国立公園の壮大な景観
  • 公園内の村

このような背景から,JICAでは,「シミエン国立公園および周辺地域における官民協働によるコミュニティ・ツーリズム開発プロジェクト」を2011年11月から2016年2月までの期間実施しています。公園内の住民が農業・畜産業だけに頼らず,観光収入も得られるようになることを目指したプロジェクトです。例えば,エチオピアの伝統的な生活は,住民たちにとっては普通のことであっても,観光客にとっては珍しいものに映ります。主食であるインジェラ作り,コーヒーセレモニー,機織りを見せて体験してもらうツアーを組むことで,住民に直接収入が入るような仕組み作りに取り組んでいます。

  • 主食インジェラを焼く
  • 観光客と村人が交流する様子
  • 糸を紡ぐ村の女性

エチオピアのような開発途上国にとって,観光業は貴重な外貨収入源です。私たちの取り組みが,エチオピアの住民の所得向上につながり,自然の回復にもつながることを願っています。

グローバルフェスタJAPAN2015 写真展
「みんなで世界をHAPPYに! しあわせづくりの現場から」展示作品の募集について

原稿執筆:国際協力局政策課広報班

グローバルフェスタJAPAN2015では「みんなで世界をHAPPYに! しあわせづくりの現場から」をテーマに,世界各地で開発途上国の人々と一緒に汗を流す日本人の国際協力活動の様子等の写真を募集し,グローバルフェスタの会場等で写真展を開催いたします。この写真展では,NGO,企業,国際機関等の活動も含めた国際協力活動について,来場者の方に写真を通して触れていただき,国際協力をより身近なものに感じていただきたいと考えております。現在展示作品を募集中ですので,皆様奮ってご応募下さい!
(締め切り8月31日(月曜日))

<グローバルフェスタJAPAN2015>
日時:2015年10月3日(土曜日),4日(日曜日)10時~17時
(写真展は期間中終日開催)
場所:お台場シンボルプロムナード公園(東京都江東区)
主催:グローバルフェスタJAPAN2015実行委員会
共催:外務省,独立行政法人国際協力機構(JICA),特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)

<写真展に係るお問い合わせ先>
外務省国際協力局政策課 広報班 グローバルフェスタJAPAN2015 写真展係
電話:03-5501-8000(内線:3095)
Eメール:photo-nippon@mofa.go.jp

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