ODA(政府開発援助)

(DAC:Development Assistance Committee
令和7年4月18日

1 設立の経緯

 1960年1月、米国の提唱により開発援助グループ(DAG)の設立が決定され、第1回会合が3月ワシントンにおいて開催された。DAGの原メンバーは、米、英、仏、西独、伊、白、ポルトガル、加、及びEC委員会。我が国もOECD加盟に先立ちDAGに加盟。

 DAGは、1961年9月のOECD発足に伴い、開発援助委員会(Development Assistance Committee)に改組。

2 マンデート(2023年~2027年末)

 DACの目的は、包摂的かつ持続可能な経済成長、国内及び国家間の平等の推進、貧困撲滅、途上国の人々の生活水準の改善を含む、2030アジェンダの実施に貢献するため、また援助に頼る国がなくなる未来のため開発協力・政策を促進すること。この目的を達成するため、DACは以下を行う。

  • (1)ODA及び他の公的・民間資金の流れに関するデータの収集・分析を通じて、透明性のある方法で、持続可能な開発に貢献する資金の供給のモニタリング、評価、報告及び促進を行う。
  • (2)特に国内及び国際的に合意された目標に関係する開発協力政策・活動をレビューし、国際的なスタンダードを設定・支持し、ODAの一貫性を守護し、効果的な開発協力の原則の適用と相互学習を促進する。
  • (3)特に貧困層に配慮した強靱で持続可能な成長、国内及び国家間の平等の推進、貧困撲滅に関し、DACメンバー国及び幅広い開発協力コミュニティが、開発協力におけるイノベーション、並びに開発協力の成果の妥当性、一貫性、効果、インパクト、及び持続性を向上するために、分析、ガイダンス及びグッドプラクティスを提供する。
  • (4)2030アジェンダの実施を支援しアディスアベバ行動目標(AAAA)に則った開発資金の動員を促進するために、持続可能な開発成果を最大化するような開発のグローバルな仕組みについて分析し構築を支援する。
  • (5)新たな開発協力の提供者の影響を考慮するため、開発協力の政策及びスタンダードを、ODAの目的に沿った効果を確保しつつ、分析・形成する。
  • (6)持続可能な開発のための国際公共財と政策一貫性に対する協調的行動の重要性を広める。

3 構成

(1)メンバー

 OECD加盟国(38か国)中の32か国に欧州連合(EU)を加えた33メンバー。

 豪、墺、ベルギー、加、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、仏、独、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、伊、日本、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、蘭、NZ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英、米、EU
 (正式メンバーの他、「Associate」「Participant」「Invitee」というステータスがある)

(2)議長

 カーステン・スタール(Carsten Staur、前OECDデンマーク政府代表部大使)(2023年3月就任)

4 主な活動

(1)各国援助実績の公表

 DACメンバー等のODA実績を集計し、例年4月に前年の各国実績(暫定値)を公表。

(2)政策提言

 2030アジェンダの実施に向けて、開発協力分野における多様な課題を議論し、ODAの一貫性を保つため、政策提言や勧告等を発出。

(3)開発協力相互レビュー(Peer Review

 DACメンバーの開発協力政策や実施状況等について相互にレビュー。効果的な開発協力に向けた提言等を実施(日本は、直近では2019~2020年に実施、通常4~5年に1回)。

(4)効果的な開発協力のための調査分析・情報共有

 開発協力におけるイノベーション、インパクト、効果及び成果の向上を支援するため、調査分析、ガイダンスやグッドプラクティス集等を作成。

5 各種会合等

(1)ハイレベル会合(閣僚級)

 主要な開発問題に関する地球規模課題を推進する、DACメンバーの閣僚ーとオブザーバーによる閣僚級会合。基本的にシニアレベル会合と交互に隔年開催。

(2)シニアレベル会合(局長・次長級)

 主要な開発問題に関する地球規模課題を推進し、DACに戦略的な方向性を提供する、DACメンバーの上級代表とオブザーバーによる会合。基本的にハイレベル会合と交互に隔年開催。

(3)DAC会合

 定例会合。年間活動計画の策定・実施状況の確認、開発協力相互レビュー、テーマ別討議を行う。

(4)下部組織における会合

 特定のテーマに関し専門的に議論。

  • 開発ファイナンス統計作業部会(WP-STAT):途上国及び多国間機関への資金の流れの統計報告・集計やODA定義に係わる問題を扱う。
  • 開発評価ネットワーク(EvalNet):開発効果の向上を目的に、ODA評価の基準、評価手法の向上、合同評価の推進、被援助国の評価能力向上等について議論、方策を検討する。
  • ジェンダー平等ネットワーク(GENDERNET):開発と援助政策全般におけるジェンダー平等及び女性と女児の権利擁護のための方策、対応を検討。
  • 環境と開発協力ネットワーク(ENVIRONET):持続可能な開発のための一貫したアプローチの促進。環境と開発のリンケージに注目した議論を行っている。
  • ガバナンスネットワーク(GOVNET):開発協力の重要な視点の一つである良い統治と、それを実現するために必要な汚職防止や人権保護に関する協力のあり方を検討。
  • 紛争と脆弱に関する国際ネットワーク(INCAF):開発の阻害要因でもある紛争の予防、紛争後の復興及び脆弱国の開発において開発協力が果たす役割を検討。

6 DACにおける最近の主な議論

(1)非DACメンバーへのアウトリーチ

 DACメンバー以外の開発協力の供与国に対し、透明性と説明責任を向上させるよう国際的なスタンダードや慣行を一層遵守し、透明性向上を図るべくアウトリーチの強化につき検討を行っている。持続可能な開発を目的としていればODAか否かに関わらず途上国への公的資金を捕捉する新たな統計枠組みである「持続可能な開発のための公的総支援(TOSSD)」は、開発協力の透明性の向上に寄与するものとして、OECDを中心に取組が行われている。

(2)ODA卒業国のDACリストへの再掲載

 2017年10月のDACハイレベル会合において、DACのODA受取国リスト(DACリスト)から卒業した国のDACリストへの再掲載に関するルールについて検討を進めることが合意された。検討の結果、前年の一人当たりGNIが世界銀行の高所得国水準を下回った卒業国は、当該国の意向があれば、DAC定例会合での合意を経て、その年よりDACリストに再掲載されることとなった(最近の例ではパラオ(2022年))。DACリストへの再掲載の見直しは毎年実施されるが、再掲載された国が再度卒業となるのは、通常の卒業要件と同様、3年毎のDACリスト見直しの際に一人当たりGNIが直近3年間連続して高所得水準を超えた場合となる。

(3)人道・開発・平和の連携

 近年世界の紛争や、人道危機が長期化・深刻化する傾向にあることを踏まえ、人道支援と開発協力に平和構築・紛争予防支援等を組み合わせることにより、紛争発生後の対応のみならず紛争の発生・再発予防にも重点を置くべきとの考え方が提唱されている。DACにおいても、「人道・開発・平和の連携の一貫性に関するDAC勧告」が採択され、DACの下部組織である「紛争と脆弱に関する国際ネットワーク(INCAF)」を中心に、実施促進に向けたトレーニング、分析、各種会合等が開催されている。

(4)開発分野における性的搾取・虐待及びセクシャルハラスメント(SEAH)の防止

 開発及び人道支援分野におけるSEAH問題への国際的関心の高まりを受け、右問題の防止、対応のためのDAC勧告が採択された。現在DACの下部組織である非公式グループを中心に実施促進のためのツールキットの作成が進むと共に、国際機関を含めた関係者との事例共有、相互学習のための会合が定期的に開催されている。

(5)開発協力における市民社会の関与

 持続可能な開発目標(SDGs)の実施において市民社会は重要な役割を担っており、OECDは政府および市民社会組織と協力し、SDGs達成のための開発協力の有効性を向上させるための活動を行っている。「開発協力および人道支援における市民社会の実現に関するDAC勧告」が採択された。


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