ODA(政府開発援助)

平成27年5月22日

【日時】2014年5月20日(火曜日)17時00分~18時30分
【場所】外務省 南180会議室
【参加者】外務省国際協力局2名、JICAアフリカ部・農村開発部5名、NGO13名(6団体)

【議事次第】

  1. 今次意見交換会の議題確認
  2. 「三段表」に関する説明、質疑応答(三段表を事前送付)
  3. コミュニティレベル開発モデル策定プロジェクト(ProSAVANA-PEM)
  4. その他(PEDEC等)

【配布資料】

外務省・JICA配布資料:
資料1:議事次第(PDF)別ウィンドウで開く
資料2:参加者一覧(PDF)別ウィンドウで開く
資料3:マスタープランのコンセプトノートに関する三段表(和訳)(PDF)別ウィンドウで開く
資料4:三段表に関する説明パワーポイント(PDF)別ウィンドウで開く
資料5:PEM案件概要表(PDF)別ウィンドウで開く
資料6:PEDEC案件概要表(PDF)別ウィンドウで開く
NGO配布資料:
資料7:「ProSAVANA市民社会報告2013」英語要約&プレスリリース
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/9kai_shiryo/ref7.pdf別ウィンドウで開く
資料8-1:UNAC年次総会「ナンプラ宣言」(和訳/ポルトガル語)
資料8-2:UNAC年次総会プレスリリース(ポルトガル語)
資料8-3:ProSAVANA-PI成果報告会UNAC参加ノート(ポルトガル語)
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/9kai_shiryo/ref8.pdf別ウィンドウで開く
資料9:プロサバンナ事務局とPPOCS-Nやり取りの日本NGO側まとめ
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/9kai_shiryo/ref9.pdf別ウィンドウで開く

1.はじめに

  • NGO:事前協議で、外務省より(1)議事要旨から発言者名削除、(2)NGO側資料は外務省サイトに非掲載との変更提案があったが、従来どおり(1)発言者名記載、(2)外務省サイト掲載を要請。
  • 外務省:意見交換会は制度化せず率直に意見を交わすほうがお互いに有益ではないかと述べ、議事要旨に発言者名を記載しないこと等を提案。また、公式の議論の場としては、NGO・外務省定期協議会がある旨指摘。
  • 司会:モダリティ問題に関し、別途時間をとって話し合うことを確認。

2.公開書簡を含む、外務省の認識

  • 外務省:プロサバンナの目的は、小規模農民支援との見解で一致している。地元での対話が重要。不当な土地収奪を防ぐもの。公開書簡については、モザンビーク政府が「適切な回答」を行うことを表明している。モザンビーク政府から速やか且つ適切に回答をするよう外務省・JICAから働きかける。
  • NGO:公開書簡はモザンビーク政府のみではなく、日本政府にも回答が求められている。
  • 外務省:モザンビーク政府の回答を見て日本政府として検討する。

3.JICAによる三段表(議事2)、PEM(議事3)の説明

【配布資料3(三段表)】の説明。

  • (1)モザンビーク政府はコンセプトノートを用いて、プロサバンナの概要についてニアッサ州、ナンプラ州、ザンベジア州、マプトで協議を実施した。ニアッサ州とザンベジア州では一定の理解を得たと認識。ナンプラ州では市民社会側からは文書で確認事項が示され、その議論のために5回の協議の場を持った。提案された小農や家族農業の視点がかなり反映できたと考える。
  • (2)上記の協議を通じて提示されたコメントへの回答を整理したものが三段表で、モザンビーク政府が中心となって取りまとめた。JICAもその作成を支援している。

【配布資料3と4】に沿い、聴取した指摘と三か国の検討結果を説明。

  • (1)項目1)【目的】:「全アプローチを小規模農家の開発をもたらす計画に」
    →「プロサバンナのビジョンはナカラ回廊地域の小規模農家の生計向上」であり、協議で示された指摘に同意。
  • (2)項目2)【食料主権】:「食料主権は、人びと、コミュニティ、国の基本的権利で侵すべきでない」
    →「地域農民の食糧生産、栽培作物選定の権利は保護される。農民や農民組織は、栽培する作物やその品種を強要されない」。
  • (3)項目3)【2030年マスタープラン目標年の姿】
    →「小規模農家が移動耕作から定着農業に移行(2020年30%、30年40%)」。人口圧で生計が成り立たないため。2030年以降は想定せず。
  • (4)民間投資:「契約栽培や農業普及を通じ、近代的農業技術の普及が進み、生産性が向上し、農家の所得も向上する。農業投資と契約栽培で起こる懸念がある争議については、市民社会組織や学界有識者を含む第三者委員会を設置し、監理・仲裁機能を持たせることを想定」。「この監理・仲裁機能を整備することが先決で投資の受け入れはその後」との基本的なスタンスを三か国で共有。
  • (5)「プロサバンナの提案」項目1)【直接的な土地管理】:「プロサバンナによる用地取得や農地を開発はあるのか」
    →「プロサバンナにおける民間投資は、住民の土地利用権を尊重・保証する提言・方針に従って実施」。プロサバンナによる用地取得や取得による農地開発はない。
  • (6)項目2)【作物の選定、多様化】:「食料作物の増産を目指すべき/日本に輸出する大豆生産が目的ではないか」
    →「PEDESA、生産ポテンシャル、価格、地域食料安全保障への寄与、市場の需要を考慮し、優先作物を選定」。大豆は換金作物の選択肢の一つであり、日本への輸出が念頭にあるわけではない。
  • (7)項目3)【生産性向上の手段】「家族農業が大規模農業より優れる。UNACの(家族)農民支援国家計画を反映させた持続的農業計画に」
    →UNACの(家族)農民支援国家計画の詳細について提示されていないが、同計画の6項目の重要性を改めて認識。
  • (8)項目5)【対象地域のゾーニング】:「ゾーニングは現状無視の企業進出のガイドライン」
    →社会経済的・農業生態的特性(営農適正、社会環境の脆弱性等)を分析し6つの地域に分類。農業の提言を行うためのツールであり、企業向けだけではない。
  • (9)項目8)【アグリビジネスと地域農家の発展の関係】、9)【Out-growerスキームの適用】「アグリビジネスを適切に監督・監視し、食料安全及び食料主権を脅かすべきでない」「契約栽培導入による住民の土地利用権喪失を防ぐ対策が必要」
    →「大規模投資は、国内法に基づき適切な手続きを経てコミュニティの権利を脅かさないよう実施」「監理のため第三者委員会を設置」。「適切な条件と運用規則に配慮した契約栽培を推進」。手法を検証中。
  • (10)項目13)【ナカラ回廊での雇用の創出】:「小規模農家には、外国企業の圃場労働者としての雇用確保より経済的に自立農家として生活が確保されるべき」

【配布資料5】に基づきPEMについて説明。

  • (1)上位目標は「プロサバンナ対象地域の農家の農業生産が増加」、目標は「農業開発モデル導入地域で、農家それぞれの営農規模において農業生産が増加」。柱として、地域に合わせた農業開発モデル作りの強化・実践、小農を意識した農業普及サービスの強化がある。
  • (2)現在、主に進んでいるのは前者。モデルの種類を検討中で、現段階で次の5モデルあり。
    • モデル1:「農村コミュニティ支援」。伝統的営農の農家を対象に農業の質を強化。コミュニティのエンパワーメントが大きな柱。現在、検証作業を実施。
    • モデル2:「アソシエーション支援」。DPA(州農業局)のSDAEと対象となるアソシエーションを検討中。
    • モデル3:「農協支援」。構想段階。
    • モデル4:「アウトグローワー(契約栽培)スキーム」。農業企業や篤農家と小農が契約を結び、投入材や農業技術普及のサービスを受ける。
    • モデル5:「バリューチェーン構築モデル」。バリューチェーン構築を目指す。
  • (3)普及は3年次以降の実施を計画している。公的普及サービス強化を図る。普及員の数が少なく、モデル1で「キーファーマー」の育成に取り組んでいる。ファーマーズ・フィールド・スクール形式を活用。
  • (4)投資の話が入っているが、コンセプトは小農支援。責任ある投資のガイドラインを作成していく。
  • (5)大規模な投資を進めるのではなく、投資が入る際に適切な政府のガバナンスや能力を検討する。

4.JICAの説明に対する議論

  • NGO:(1)今後のプロセスは。(2)「三段表」が前回説明の「コンセプトノート2/ダッシュ」か。(3)ナンプラ州市民社会フォーラム(PPOSC-N)によるマトリックス(問題指摘表)の内容が包含されているか。(4)対象地人口の何割をナンプラ州の農民が占めるのか。
  • JICA:(1)引き続き対話を行っていくものと理解。(2)2013年9~12月の協議での指摘を3か国で議論し重要ポイントを纏めたもの。(3)それを含め色々な団体の意見を網羅。(4)人口の半分以上。
  • NGO:ナンプラ州では対話は進んでおらず、むしろ拒否しているとのJICA説明と齟齬のある現地情報に基づき、状況認識について改めて確認を依頼。
  • JICA:(1)(この三段表では)不十分との指摘。現地市民社会や農民と同じテーブルについて三段表を議論することを希望しており、引き続き努力する。対話を行わないと良い方向に向かうことはない。家族農業を中心にした農業開発への要望を聞いている。(2)三段表の議論が困難な場合、公開書簡への回答後に、家族農業に特化して意見交換を行うなどを検討。
  • NGO:このような議論を日本でしている間にも、現地では(プロサバンナの関連事業が)既に進んでしまっているとの懸念がある。
  • NGO:(1)現地が三段表を対話の中身として受け入れるか懸念。(2)公開書簡への返答がない中で対話だけ先行は無理。返答を迅速に。(3)PPOSC-Nとの対話が進んでいるように報告されたが、現地情報ではこれを「対話」として位置づけていない。
  • JICA:(1)モザンビーク政府と農民の対話が大事。(2)農業分野でこれほどまでに対話を重視する事業は他にない。日本の市民社会の支援もあり、モザンビーク政府は農民の声を聞き計画に取り入れ、プロセスを踏むようになっている。(3)モザンビーク政府にとり北部の開発は重要。日本がこれを停止すると、他国の資金援助を受ける可能性がある。事業を止めても、北部にはポテンシャルがあり投資は入る。モザンビーク政府は、農民の保護、農村の健全な経済開発と社会開発のバランスを目指す手法を追求すべきで、そこをJICAは支援したい。日本の市民社会からはその点について意見を貰ってきたし、今後も建設的な意見を貰いたい。
  • NGO:(1)公聴会主催者と表作成者は誰か。(2)ニアッサ州で公聴会3回合計160人、サンベジア州3回合計165人のみが参加か。
  • JICA:(1)主催はモザンビーク政府。日本・ブラジル(以下、伯)・モザンビークで作成。(2)指摘の通り。
  • NGO:UNAC(全国農民連合)の主張を踏まえて対話拒否の理由を指摘。(1)「対話」は互いに対等なレベルが確保されて初めて成立。(2)公開書簡への返事が不可欠。書簡を三か国政府首脳に出している以上、三か国からの回答を要求。日本政府としても回答をすべき。
  • 外務省:問題は形式(書簡返答者)ではなく中身。日本政府とブラジル政府はモザンビーク政府の取組みを支援する立場。同国政府の回答を確認した上で対応を検討する。
  • 司会:
    • NGO側より、モザンビーク市民社会が対話テーブルにつくには書簡への返答が重要との回答があった。
    • 投資等の心配のために「できることを進め青信号に備える」とするのは違う。現地市民社会が不信感を持つ中、「何をやるか」でなく「何をやらない方がいいのか」という判断もある。
    • NGO側の指摘は、モザンビーク政府の返答だけでは、日本政府は何もしないのではとの不安が現地市民社会にあり、その結果「形式」への拘わりを有するという点にある。

5.NGOの報告・説明、意見交換

  • NGO:【配布資料9】をもとに、以下のとおりPPOSC-Nが議論のテーブルにつかない理由を共有。
    • (1)コンセプトノートが出された9月時点、マプトでもナンプラでも「対話のための対話」の方法論を議論する段階にあった。よって、内容に関する協議は始まっていなかった。
    • (2)ナンプラの市民社会は、同ノートの各項目並びに全体に賛同できず、協議をボイコットしたままでは、示されたコンセプトが承認される可能性があると懸念した。
    • (3)この間現地では、議事要旨や「リフレクションポイント」等への署名が政府に強要され、日本の援助関係者による無断でのビデオ撮影などがあったため、「同意」と悪用されないよう、PPOSC-Nとして「対話」ではなく単なる「説明の場」として行ったという経緯がある。
    • (4)(以上の「場」は)2013年12月以降中断しており、PPOSC-Nは説明は終わっていないと理解。しかし、今年3月に突如「コンセプトノート2(現地での呼称)」が「(PPOSC-Nとの)話し合いに基づいたもの」として出されたことなどにより拒否している。
    • (5)さらに、「ノート」に関する協議が一方的に4月4日に設定されたが、その連絡がPPOSC-Nになされたのは4月1日で、また招待状の日付は3月28日となっており、さらなる疑心暗鬼を招いた。
    • (6)PPOSC-Nは、三段表の分析結果として以下を指摘:
      • MP(マスタープラン)作成前に、先行的な環境社会影響の評価を要望。PEDSA/PNISA以前に食料主権に関する考えを示すよう提起。三段表には、大・中・小規模農家が混在。モザンビークにおける二/三元性を持つ農業政策モデルは、既に問題を起こしているとの指摘。
      • 「(土地の)第三者委員会」には拘束力が欠如しておりその土台に問題があるとの指摘。土地登記も、小農が投資家と対峙する交渉力を付与されることが目的であるべきと主張。
      • 以上の重要な点は、今回の三段表に反映されず、三段表の位置づけに疑問を抱くとともに、刷新なしには話にならないとのスタンス。
    • (7)公開書簡の署名団体の1つだけが、プロサバンナとJICA関係者の会議(4月上旬)に招待され参加したことが現地で確認され、「分断工作の試み」と捉えられている。プロサバンナに対する姿勢が「頑な」に見えても、その理由となる状況が現地の側から見ると存在する。
    • (8)マプトでは、同ノートの根拠となるデータが継続的要求に反し共有されていないため、対話がストップ。本日、JICA側報告でゾーニングが言及され、具体的な分析があると説明された。その分析結果の公開を要請。
  • JICA:
    • 現地市民社会の懸念に応え得る形で対応すべき。その方法として、(三段表の)書き換えか、対話の中で説明か、選択肢は一つではない。「説明して終わり」ではない。
    • データを提供しても根拠として十分理解されなかったり、誤解を与えたりする場合もある。対話や説明の場があれば、データも含め納得のいく説明をする責任はあると承知。
    • 指摘の「サイン(署名)」の意義はJICAも疑問。対話プロセスの途中であり、「サイン」「参加」=「了解を得た」ではない。多様な意見を述べあい、政府が勝手に進めたとならないよう、現地と相談しつつ、方法を検討。
  • NGO:現実には(議事要旨への)サインを以って、「合意した」「対話が進展」とメディア等で報じられた結果、(対話を)一切拒否となっている。現地でやり方を相談との考えに賛同。
  • 外務省:書簡への返答が出て内容が適切であれば、ナンプラ州は対話に応じるのか、返答なければ対話に応じないのか。
  • NGO:
    • 返答内容に納得がいかなければ意見が出るが、(納得がいけば)その通りと考える。しかし、書簡の要望は、「プロセスの中断」。(中断の後)「対話の方法論」を共に検討した上で、彼らの不安を話し合いたいとのこと。
    • UNACが対話の仕組みに拘る理由は、土地法制定プロセスにおける政府との協働の経験とそれへの自負がある。昨年二度UNAC代表が来日し、公開書簡を持参して日本政府の対応が変わった。
    • 過去1年、日・伯・モ国政府見解が異なっており、現地は疑心暗鬼のため、書簡への返答をもって公式確認をしたいと希望。

6.事実関係の確認

  • NGO:三段表の英語版の有無。情報が錯綜する中で信頼を回復するため適切な情報提供が重要。問題の国際化により英語訳が不可欠。コンセプトノートには英語とポルトガル語版が存在。
  • JICA:ポルトガル語もしくは日本語でのみ提供することで混乱を避けたい。公式文書がポルトガル語で日本語は仮訳。
  • NGO:(1)PEMをMPに反映させるのであれば、検証が終わるまではMPは完成せずか。(2)同じプログラムの事業だが両者の位置づけについてNGO側は曖昧だと感じている。PEMとPDを同時に実施する理由は何か。(3)PEMがMP完成前に実施されることにつき現地で十分な説明と協議がされているか。
  • JICA:(1)(2)PEMが終わるまでマスタープランは完成しないということではない。(3)DPAやコミュニティと丁寧な対話を経ている。
  • NGO:PEMはアソシエーション支援を含むが、UNACは2千以上のアソシエーションの連合体で地域に数百の加盟組織がある。同連合に相談せずでは混乱が起きるため、協議を強調。

7.NGOからの情報提供と要請

 7月にUNACとモ国市民社会主催で「プロサバンナ三カ国民衆会議」を開催。昨年度はモザンビーク農業大臣も出席したが、日本政府の出席はなかったので、対話の一環としての参加を要請する。

8.司会によるまとめ

  • NGOより、モザンビーク市民社会の不信感が伝えられた。当初から、この意見交換会では、現地状況を共有し、JICAとモザンビーク政府の話し合いを促進し、事業改善に繋げる狙いがあった。
  • 公開書簡とその返答は重要だという認識が、日本市民社会とJICAの間で合意された。
  • JICAからモザンビーク市民社会と対話の意思表示があった。コミュニケーションのツールとして三段表が示されたが、逆に不信感が生まれているとの指摘がNGOからあった。
  • (JICAの)対話の意思について、日本のNGOとしてどう現地に伝えるのか。公開書簡への返答が出そうな状況変化の中で、モザンビーク市民社会も変化している可能性もある。

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