ODA(政府開発援助)
ODAを活用した地方自治体の海外展開支援
途上国においては、急速な経済発展が進む中で、都市化の進展と共に、水、エネルギー、廃棄物処理、都市交通、公害対策分野等の都市問題に対応するニーズが急増しています。また、大都市のみならず、地方都市においても様々な問題が増えています。このような中で、水、エネルギー、廃棄物処理、防災等の分野で知見を蓄積している日本の地方自治体が、途上国のニーズにきめ細かに対応することは、途上国の開発にとって大変有益です。地方自治体が国際協力に参画することは、国際協力の「担い手」の拡大やグローバル人材の育成にもつながります。また、地元企業等の海外展開を後押しすることで地域経済の活性化にも貢献することとなります。外務省・JICAは、以下の事業を通じて地方自治体の海外展開を支援しています。
1 地方自治体と連携した無償資金協力
日本の地方自治体と連携して無償資金協力を行う。具体的には、地方自治体からの無償資金協力事業の提案をJICAが随時受け付け、地方自治体は無償資金協力案件の協力準備調査や本体事業にアドバイザー等として参加。
【事業例】カンボジア「コンポンチャム及びバッタンバン上水道拡張計画」
- (1)案件の概要
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- 北九州市は、1999年からカンボジア上水分野で協力事業に貢献し、同国からの信頼を培ってきている。本事業は、同国における優れた省エネ型上水道(適切な配水区の設定と送配水網の整備、モニタリングシステムの設置等)のモデル事業として上水道の施設及び必要機材の整備・供与を行うもの。
- (2)成果
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- 本事業により、一日当たりの平均給水量及び給水人口が増加するほか、安全な水へのアクセス率向上及び住民の生活環境向上に寄与。
- インフラ・システム輸出の拡大及び日本への地域経済の活性等にも寄与。
2 公募型事業における地方自治体の経験・ノウハウを活かした提案の推奨


【事業例】ベトナム国ダナン市産業排水管理プロジェクト案件化調査
- (1)案件の概要
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- 横浜市と、受託企業であるムラタ計測器サービス株式会社が連携し、提案企業の技術と環境監視システムであるリアルタイム・モニタリングサービスに加え、産業排水処理に関するコンサルティングを組み合わせた提案で、工業団地の産業排水処理の改善を目指すもの。
- (2)成果
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- 横浜市の環境面の行政能力や環境監視にかかるノウハウと、提案企業の製品・技術の活用により、 環境モニタリングを生かした行政能力の向上を図り、工業団地の水質の継続的な改善へとつながる。
3 地方自治体と連携した草の根技術協力(地域活性型)
草の根技術協力(国際協力の意思を持つ日本のNGO、大学、地方自治体及び公益法人等の団体による、開発途上国の地域住民を対象とした国際協力活動を、JICAがODAの一環として支援し、共同で実施する事業)に、地域活性化型を設け、JICAが地方自治体の提案による主体的な活動の提案を審査し、ODAによる実施が妥当であると認める提案について、その事業を共同で実施。
【事業例】チャンパサック県職業訓練校と福井県若狭町による相互の地域発展を目指した木材加工・建築産業の人材育成プロジェクト
- (1)案件の概要
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- 福井県若狭町と地元の工務店が草の根技協を通じてラオスの職業訓練校と協力し、ラオスの木材加工・建設産業人材育成と若狭町建築産業活性化を図る事業を実施。
- (2)成果
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- 職業訓練校の教員及び技術指導員らが来日し、3か月かけて、若狭町の空き家改善事業を通じ基礎的な木材加工・建設技術を習得。空き家は古民家福祉施設と改修され、若狭町の空き家対策推進につながった。また、地元工務店は今後家具の販路の拡大を目指し、ラオスに現地法人を設立し帰国研修員等をスタッフとして雇用。地域活性化に加え、地元企業の海外展開支援に貢献した。
4 地方自治体連携草の根無償
外務省では、草の根・人間の安全保障無償資金協力を活用して、日本の地方自治体が途上国で活動するNGO(ローカルNGO及び国際NGO)や現地の地方公共団体等と協力して、途上国の経済社会開発に日本の地方自治体が有する技術及びノウハウを活用することを推進しています(草の根無償の詳細及び申請書については「草の根・人間の安全保障無償資金協力」参照)。
5 自治体連携強化セミナー
先進的な取組を行っている地方自治体の海外展開に関する知見を他の地方自治体と共有することを目的として、平成26年11月に、第一回地方自治体による海外展開推進のための自治体連携強化セミナーを実施。令和2年度は自治体間連携セミナーを9件開催。令和3年度も同様のセミナーを開催予定。