ODA(政府開発援助)

自治政府誕生の歴史を支える
ミンダナオの平和を目指して

平成27年10月8日

原稿執筆 在フィリピン日本国大使館

バンサモロ包括的能力向上プロジェクト(2013年7月~2016年7月:技術協力)

 本プロジェクトは,ミンダナオ地域が紛争の影響で,行政サービス提供能力が十分でなく,政府に対する信頼が醸成されていないことを踏まえ,2016年に設立が予定されている新自治政府が適切な行政サービスを提供していくことができるよう,体制・制度の構築,行政官の育成及び社会経済開発計画の策定等を促進するものである。

先住民族「モロ族」と政府,紛争の歴史と成長への課題

 7,000以上の島々からなるフィリピン共和国。その島々の中で2番目に大きな島が,フィリピン南部に位置するミンダナオ島だ。このミンダナオ島は,バナナの産地として有名だが,その行く末に今,フィリピン国内外から大きな注目が集まっている。
 ミンダナオ島では,14世紀からイスラム教が根付き,独自の社会や文化をつくってきた。こうしたイスラム教徒を含む先住の民族は,「モロ族」と呼ばれ,ミンダナオ島のバンサモロ(「モロの地」という意味)と呼ばれる地域を中心に,長らく自治・独立を求めフィリピン政府に抵抗を続け,時として激しい武力衝突が起こってきた。40年にもわたる紛争の結果,ミンダナオ島はその肥沃な土地,豊富な鉱物資源,美しい自然にもかかわらず,フィリピンで最も貧しい地域のひとつとなっている。こうした中,我が国は,国際平和協力の観点から,対フィリピン外交の柱の一つとして,ミンダナオ和平を政治面と経済面の双方において積極的に支援してきており,平和構築の取組の価値ある先例となることが期待されている。

「インフラ・食糧・教育・医療・平和構築」,幅広い支援

 例えば,我が国の開発協力を活用したミンダナオ和平支援案件は,J-BIRD(Japan-Bangsamoro Initiatives for Reconstruction and Development)と総称され,道路等インフラ事業,食糧援助,人材育成,学校や診療所の建設といった草の根案件などに対しこれまで総額160億円以上の支援が行われている。また,現地国際監視団(IMT)にも日本からの開発専門家を派遣している。2011年には,日本が仲介役となり,フィリピン政府のアキノ大統領とイスラム教徒の「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」のムラド議長によるトップ会談が成田で実現し,これがきっかけとなって,2014年3月,現在のミンダナオ・ムスリム自治地域(ARMM)政府を発展的に解消し,新たにバンサモロ自治政府を2016年6月に創設するための歴史的な包括的和平合意が調印された。

「信頼される政府作り」は日本がお手本

 「バンサモロ包括的能力向上プロジェクト」は,こうした背景の中で日本が新自治政府の設立をサポートするべく始まったプロジェクトである。新自治政府の設立が合意されたと言っても,それだけで安定した社会ができるわけではない。きちんとしたルールが整備され,そのルールがしっかり守られ,住民から信頼される政府を作っていくため,このプロジェクトを通じて,様々なレベルでの支援を複合的に行っている。例えば,フィリピン政府が起草・成立を図っている「新自治政府基本法」の起草プロセスにおける住民との協議の支援,基本法成立後に予定される関連法や行政規程作成に向けた支援,将来的に行政官となることを期待されている人々の能力強化,住民が実際に平和の訪れを感じとれるような小規模なインフラの整備(小学校や公民館など)だ。行政研修のため,日本を訪れた行政官からは,「日本の明治から平成に至る国造りの知見と経験は,具体的で即効性がある」という声が聞かれており,高い評価を得ている。

2016年「バンサモロ自治政府」設立に向けて

 また,和平を確固たるものとしていくためには,地域の人々が平和の配当として生活がよりよいものとなっていると実感できるよう,経済・社会開発を着実に進めていく必要がある。そのために必要な開発計画をバンサモロの人々が自ら策定していくことが重要であり,そのための支援もこのプロジェクトを通じて実施している。昨年11月には,第一フェーズの開発計画が発表され,現在,第二フェーズの策定が進められている。
 自治政府の設立が予定されている2016年はもう目の前に迫っている。バンサモロ自治政府の誕生という新たな歴史が刻まれるその陰で,日本はこれからも知恵を出していく。

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