ODA(政府開発援助)
マレーシア日本国際工科院整備(MJIIT) 円借款事業/技術協力プロジェクト
日・馬の相互成長をかなえる
原稿執筆 在マレーシア日本国大使館
研究重視,日本式教育でマレーシアの産業を支える
マレーシアは,1980年代以降,それまでの中心であった農林水産業に代わり製造業の発展に力を入れてきた。その中で,かつては単純な組み立てや加工を中心とする労働集約型の産業が中心を占めていたが,近年では製品設計や研究・開発機能を併せた生産拠点となることを掲げ,高度な技術を持つ人材の需要が高まってきた。
日本は,このようなマレーシアの取組を支援するために,マレーシア政府と協働で,マレーシア工科大学に「マレーシア日本国際工科院(MJIIT)」を設立した。マレーシアの学生らに対して,日本の工学系大学が取り入れている研究重視・研究室中心の日本式の教育を実施することによって,最先端の技術知識や労働倫理などの習得を促進することが狙いである。
2011年に開始された円借款事業「マレーシア日本国際工科院整備事業」では,MJIITの教育・研究資機材等を整備するとともに,2013年からは技術協力として大学運営を担当する複数の日本人専門家を派遣している。さらには日本の26大学が構成するコンソーシアムの支援の下で日本の大学から工学系教員も派遣するなど,日本式の工学教育の特長を生かした教育・研究拠点の確立を支援している。
MJIIT卒業生に高まる期待,日系企業での活躍も?!


2011年9月より学生の受け入れを開始したMJIITは,現在,約500名の学部生,約350名の大学院生が在籍し,日本人教員等の指導の下で日本式の工学教育を受けている。また,MJIITは今年8月に初めての学部卒業生75人を輩出する。MJIITで培かった高度な技術や知識をもとに,マレーシアに進出している日系企業をはじめとする産業界で活躍することが期待されている。
マレーシアは,80年代に始まったルックイーストポリシー(東方政策)(注)の実施に代表されるように,日本からの製造業の誘致・投資を熱心に続けてきた結果,現在では約1,400社の日本企業がマレーシアに進出している。高度な産業技術を学びたいと望むマレーシア側の要望と,日本式教育を受けた優秀な人材を得て質の高い産業を展開しようとする日本企業等の想いがマッチすることにより,今後,日本とマレーシア双方の産業界の更なる発展が期待されている。MJIITは,この東方政策の集大成と位置付けられる事業でもある。
(注)ルックイーストポリシー(東方政策):1981年にマハティール元首相が提唱した構想で,日本等の成功と発展の秘訣が国民の労働倫理,学習・勤労意欲,道徳,経営能力等にあるとして,日本等からそうした要素を学び,マレーシアの経済社会の発展と産業基盤の確立に寄与させようとするマレーシア政府の政策。東方政策は2012年に30周年を迎え,さらなる関係強化が期待されている。
