ODA(政府開発援助)

令和7年3月31日

評価年月日:令和7年2月7日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦

1 案件名

1-1 供与国名

 ウガンダ共和国(以下、「ウガンダ」という。)

1-2 案件名

 カルマ橋架け替え計画

1-3 目的・事業内容

 ウガンダ北部及び南スーダンと首都カンパラを結ぶ唯一の幹線道路である東アフリカ北部回廊上にあるカルマ橋を架け替えるもの。
 供与限度額は49.39億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)環境影響評価
     本計画は、対象地域が国立公園の東端の野生生物保護区に位置しており、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)の環境カテゴリーAである。本計画に係る環境影響評価報告書は、2016年8月に国家環境管理庁により承認済であったものを補完する形で、2024年10月にウガンダ国道公社からも承認済み。
  • (2)自然環境対策
     上記(1)の環境影響評価に加え、国内法(野生生物法等)とそれに基づく保護地域等での開発実施のためのガイドラインでは、保護地域での道路や橋の建設にあたり、適切な環境アセスメントを実施し、国家環境管理庁から承認を得る必要があり、本計画の実施にあたり同承認を得ている。また、工事中は約29,000平方メートル(約4,400本)の樹木が伐採されるものの、植林が実施される他、重要な種の移植、発破の禁止、低騒音・低振動工法の採用等の緩和策が実施される予定。さらに、供用時についても制限速度や警笛禁止の標識の設置、ロードキル防止のためのハンプの予定、アプローチ道路の盛土の下への動物用道路の設置などの緩和策が実施される事で影響は最小化される見込み。なお、本計画では、用地取得及び住民移転を伴わない。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ウガンダ(一人当たり国民総所得(GNI)980米ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)カルマ橋は、ウガンダの首都カンパラから北部の中核都市グルに向かう途中で横断するナイル川を渡河する橋梁であり、ケニア共和国のモンバサ港から南スーダン共和国を繋ぐ国際幹線網である東アフリカ北部回廊(以下、「北部回廊」という。)上の物流・交通の要となっている。ウガンダ北部は紛争の影響により開発が停滞し、南部との格差が生じていることに加え、北部のアチョリ地域及び西ナイル地域には南スーダンやコンゴ民主共和国等から約90万人の難民が流入している(UNHCR、2024年10月)。多くの支援物資がカンパラからカルマ橋を通り、難民居住地域に運搬されており、カルマ橋は政治・経済的な面での重要性に加え、難民支援や南北格差是正の観点からも重要な役割を有している。
  • (3)現行の橋は1964年に建設されており、コンクリート部材の亀裂や鉄筋露出等の損傷、漏水による腐食等の老朽化がみられる。両岸道路は勾配と曲線が急なため、交通容量が制限されるとともに、車両が川に転落する死亡事故や交通が遮断される橋梁上の事故が毎年1~2件発生している。また、川の水位が近年上昇し、増水時に橋桁下近くに達したとの報告もある。老朽化や事故により橋梁が閉鎖された場合、200km以上迂回せねばならず、通行車両の安全確保及び交通円滑化の観点から橋梁整備の緊急性は高い。加えて、橋梁の閉鎖等により難民居住地域及び南スーダン等との人の移動・物資等の運搬に制限が生じており、UNHCRから難民移送への影響も報告されるなど、人道面の観点からも緊急性が高まっている。
  • (4)かかる状況の下、本計画は、老朽化した橋梁の架け替えにより、対象区間の交通円滑化と安全の確保を図り、もって北部回廊の物流・交通の円滑化に寄与するものである。ウガンダの国家開発計画(2020/21-2024/25)(National Development Plan III)では、ウガンダが貨物及び旅客運搬の90%以上を道路に依存していることに鑑み、「統合的交通インフラ振興プログラム」を重点分野に掲げ、走行時間の短縮、運搬費用の削減、交通事故の削減等を目指しており、本計画は、国家開発計画における優先度の高い事業として位置づけられている。
  • (5)対ウガンダ共和国国別開発協力方針(2023年9月)では、経済成長を通じた貧困削減と地域格差是正の支援を基本方針に掲げており、インフラ整備を通じてウガンダの持続可能な経済成長の実現に貢献することとしている。また、我が国は、TICAD8において我が国が表明した「質の高いインフラへの投資を通じて地域の物流を改善し、経済連結性を高めること」を表明しており、本計画は同表明を具体化するものである。さらに、架け替えの緊急性が高く、難民支援の観点で人道上のニーズに対応するとともに、SDGsゴール3(健康と福祉、交通安全)、ゴール9(強靭なインフラの構築)、ゴール10(不平等削減)及びゴール13(気候変動対策)に貢献する。

2-2 効率性

 我が国は、ウガンダにおいて無償資金協力「西ナイル地域の難民受入地域における国道改修計画」(2021年2月G/A締結、38.21億円)を通じて、同地域の主要道路及び橋梁の改修を図り、技術協力プロジェクト「西ナイル・難民受入地域レジリエンス強化プロジェクト」(2021-2026)を通じて難民・受入地域住民の双方に裨益する総合開発計画の推進を支援し、また、同じく技術協力プロジェクト「北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト フェーズ2」(2021-2026)では貧困度の高い北部のアチョリ地域の小規模農家の生計向上に貢献している。本計画は、これら事業の対象地域である西ナイル地域へのアクセス改善に資するものであり、相乗効果が期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2032年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア カルマ橋を通過する際の車両の平均走行速度が、時速20キロメートルから40キロメートルに上昇する。
    • イ カルマ橋を通過する二輪車を除く平均日交通量が、1日当たり2,749台から4,762台に増加する。
    • ウ カルマ橋での交通事故発生件数が、年間10件から0件に減少する。
  • (2)定性的効果
     橋梁及び取付道路の安全性の向上、北部回廊を軸とした物流の促進と地域経済の活性化、交通事故の減少に資する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ウガンダ政府からの要請書
  • (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)ウガンダ国別評価報告書(2017年度・第三者評価)
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