ODA(政府開発援助)

令和7年3月31日

評価年月日:令和7年3月24日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子

1 案件概要

(1)供与国名

 インド

(2)案件名

 デリー高速輸送システム建設計画(フェーズ4追加路線)(第一期)

(3)目的・事業内容

 インドのデリー首都圏において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通混雑の緩和と自動車公害減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善ひいては気候変動の緩和に寄与するもの。
 本事業は、フェーズ4にて計画されている6路線の内、3路線を整備することにより、デリー首都圏において増加する輸送需要に対応するもの。

主要事業内容
  • (ア)地下鉄道(約11キロメートル)、高架/地上鉄道(約36キロメートル)、地下駅(9駅)、地上駅(1駅)、高架駅(29駅)の土木・建築工事
  • (イ)電気・通信・信号システム・駅部設備工事・新設車両基地工事・車両基地拡張工事・自動運賃収受システム等
  • (ウ)車両調達(178両)
  • (エ)コンサルティング・サービス(設計レビュー・施工監理支援等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
797.26億円 変動金利(TORF+90bp) 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.55%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布)に掲げる鉄道セクターに該当するため、カテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は、インド国内法上作成が義務付けられていないものの、デリーメトロ公社(DMRC)が2018年5月に作成。2024年11月に最新の状況に基づいた改訂版についてDMRCの承認を取得し、公開済。
用地取得及び住民移転
 本計画は実施機関が政府機関から必要な用地(官地)を取得して実施するため、民地の用地取得および住民移転を伴わない。また、非正規住民も確認されていない。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進み、自動車登録台数の急増に伴う道路交通需要が拡大する一方で、公共交通インフラの整備が進んでいない。特にデリー、ムンバイ、コルカタ、チェンナイ、ベンガルール、ハイデラバードの6大都市圏では、道路交通需要の拡大に伴う交通渋滞は、経済損失のほか、大気汚染・騒音等の自動車公害による都市環境の悪化や健康被害等の深刻化をもたらしている。
 インド政府は上記の課題に対応するため、2025年までに27都市においてメトロを整備すべく、「メトロ政策」(Metro Rail Policy、最新版は2017年に更新)において、近年の経済成長に伴う輸送需要への対応、交通渋滞緩和に加え、安全性・エネルギー効率等の観点から、メトロ・鉄道等の公共交通システムの整備を推進する方針を掲げている。また、大都市においては、既存道路容量を圧迫することなく大量輸送を可能とする等の理由から、特にメトロの建設が推奨されている。
我が国の基本政策との関係
 本計画は、対インド国別開発協力方針(2023年11月)の重点分野の一つとして位置付けられる「多層的な連結性の強化」に合致するものである。また、本計画はデリー首都圏の輸送システム整備を通じた都市交通セクターの低・脱炭素化に資することから、対インド国別開発協力方針の重点分野の一つである「クリーンな社会経済開発」に合致するとともに、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のための新たなプラン」における「インド太平洋流の課題対処(気候・環境)」の取組にも合致するものである。
 本計画は上記のとおり、インドの開発課題・開発政策並びに我が国及びJICAの協力方針・分析と合致することに加え、SDGsのゴール8「持続的、包摂的で持続可能な経済成長と、万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進」、ゴール9「強靭なインフラの構築、包摂的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成」、ゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築」、及びゴール13「気候変動とその影響への緊急の対処」に貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
 さらに、近年の日印首脳会談において「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下、両国関係を更に発展させることを累次にわたり確認してきており、両国の関係強化が着実に進んでいる中、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める世界最大の民主主義国であるインドの発展を支援することは、二国間関係の更なる強化につながるものであり、外交政策上の意義も高い。

(2)効率性

 DMRCは、事業DXの一環として、今まで異なるソフトウェアで管理されてきた設計図面、コスト、点検結果などの各種情報を仮想空間上で一元的に管理し、統合して扱うことで、維持管理の効率を向上することができる7D Building Information Modeling(以下、「7D BIM」と言う。)の導入に高い関心があることを審査にて確認済。本事業の実施と同時並行で、デリーメトロ事業における7D BIM導入に係るJICAの協力可能性につき、今後、詳細な議論を実施することをDMRCと合意した。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2031年)には、以下のような成果が期待される。

定量的効果
 新規路線のため、初期値はいずれもなし。
  • (ア)1号線、5号線、11号線の運行数は、それぞれ278本/日、384本/日、190本/日となる。
  • (イ)1号線、5号線、11号線の乗客輸送量は、それぞれ343万人・キロメートル/日、272万人・キロメートル/日、58万人・キロメートル/日となる。
  • (ウ)1号線、5号線、11号線の旅客収入は、それぞれ1,078万ルピー/日、1,763万ルピー/日、553万ルピー/日となる。
定性的効果
 デリー首都圏における自動車公害の緩和、気候変動の緩和、移動の定時性確保による利便性の向上、デリー首都圏の経済発展、女性・障がい者の社会進出促進が期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本案件に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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