ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年3月25日
評価年月日:令和6年10月29日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦
1 案件名
1-1 供与国名
タンザニア連合共和国(以下、「タンザニア」という。)
1-2 案件名
母子保健サービス強化のための医療機材整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、タンザニア本土の地域中核病院(6か所)及びザンジバル・ウングジャ島の地域病院(1か所)の計7病院に対し、母子保健に関する医療機材(分娩台、移動式デジタルX線撮影装置等)を整備することにより、州レベルでの診断・検査・治療体制の強化を図り、もって母子保健サービスの改善に寄与するもの。
供与限度額は15.27億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)タンザニア(一人当たり国民総所得(GNI)1,210ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)同国政府の第3次5か年開発計画(2021/22年~2026/27年)及び保健セクター戦略計画(2021~2026年)において、リプロダクティブヘルス及び母子保健は優先課題として位置づけられている。
- (3)同国では、乳児死亡率、5歳未満児死亡率及び妊産婦死亡率に改善がみられるものの、医療施設、機材、中核病院の体制についてはいずれも整備が十分ではなく、妊産婦検診や出産及び妊娠・出産時合併症発生時において適切な検査や治療を適時に提供できないという課題がある。これを受け、同国本土保健省は、州レベルの母子保健サービス体制の強化を目的とし、第二次医療施設である地域中核病院及び地域病院の医療設備の整備拡充及び患者ケア能力の強化に向けた計画を立てている。
- (4)我が国は、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)やG7広島サミット等の機会において、妊産婦、新生児及び乳幼児の死亡率を低減し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に貢献する旨表明しており、本計画はこうした表明を具体化する事業として位置づけられる。また、本計画は、同国の開発課題・開発政策及び保健医療サービスを含む「ガバナンス・行政サービスの向上」を重点分野と位置づける我が国の対タンザニア国別開発協力方針に合致し、医療機材の整備を通じて母子保健サービスの改善に資するものであり、SDGsゴール3(健康な生活の確保、万人の福祉の促進)の達成にも貢献することから、本計画の実施を支援する必要性は高い。さらに、同国は国際社会において基本的に我が国の立場を支持する友好国であり、二国間関係の維持・強化の観点からも本計画を通じた支援の意義は大きい。
2-2 効率性
過去の類似案件では、供与する医療機材を選定する際に、供与先の病院の医師が使用した経験のある機材を選定することを基本とし、使用経験が少ない機材を選定する際には医師への研修、指導を実施することとした結果、供与した機材の有効活用及び適切な維持管理につながっていることが確認されており、本計画でも、病院側の臨床技術レベルや維持管理体制の現状を踏まえ、供与する機材の内容やソフトコンポーネントについて検討した。
2-3 有効性
本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- 対象病院における母子保健サービスの利用者数が、約42,000人/年から約60,000人/年に増加する(約42%増)。
- 新生児の移動式X線画像検査数が、0件/年から約670件/年となる。
- 移動式超音波診断装置検査件数が0件/年から約87,000件/年となり、それによる出産前合併症の診察件数が0件/年から約3,500件/年となる。
- 新生児の移動式X線画像検査数が、0件/年から約670件/年となる。
- 対象病院における母子保健サービスの利用者数が、約42,000人/年から約60,000人/年に増加する(約42%増)。
- (2)定性的効果
- 対象病院の地域中核病院としての機能の向上により、地域におけるリプロダクティブヘルスの状況が改善される。
- 対象病院の地域中核病院としての機能の向上により、病院スタッフの臨床能力が向上する。
- 医療サービスの質が向上する。
- 対象病院の地域中核病院としての機能の向上により、病院スタッフの臨床能力が向上する。
- 対象病院の地域中核病院としての機能の向上により、地域におけるリプロダクティブヘルスの状況が改善される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)タンザニア政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)タンザニア国別評価報告書(2016年度・第三者評価)