ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年5月19日
評価年月日:令和7年4月10日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦
1 案件名
1-1 供与国名
エチオピア連邦民主共和国(以下「エチオピア」という。)
1-2 案件名
アディスアベバにおける感染症治療専門病院整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、アディスアベバ市内の国立セントピーターズ専門病院(以下「SPSH」という。)において、感染症診断・治療及び研修のための施設・機材を整備することにより、質の高い医療及び研修の提供が可能な体制強化を図り、もってエチオピアの保健システムの構築及び医療サービスの質の向上に寄与する。
供与限度額は、25.21億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- エチオピア(一人当たり国民総所得(GNI)1,130ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- エチオピアでは、呼吸器感染症が死因の第三位に挙げられる等、感染症疾患による死亡が依然として多い。SPSHは、アディスアベバ市内の公立三次医療施設9か所の中で、唯一、多剤耐性結核の治療、教育、研究を行う病院として認証を得ているほか、保健省から感染症に係る中核的拠点と位置付けられており、感染症専門のトップリファラル病院(国の拠点となる高次医療機関)である。他方、SPSHは、治療のための感染予防設備を備えた施設、病床、機材等が不足しているため、その役割を十分に果たせていない。
- エチオピア政府は、「10か年開発計画(2021-2030年)」において、感染症対策に係る医療体制の整備を掲げるとともに、「保健セクター開発計画II(2020-2025年)」において、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成や医療体制強化を重点課題に掲げている。新興・再興感染症のアウトブレイク等の危機に備える観点からも、感染症の診断・治療強化は最優先課題の一つとなっている。
- 日本の対エチオピア国別開発協力方針では、「教育・保健」が重点分野とされており、JICAグローバル・アジェンダの「保健医療」においても、「中核病院診断・治療強化」及び「感染症対策・検査拠点強化」が重点的に取り組むクラスターとされている。また、我が国は、2022年(令和4年)8月に開催した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において、感染症対策及びUHCの達成への貢献を表明しており、本計画は同表明を具体化するものである。
- さらに、本計画は、アフリカ公衆衛生危機対応の拠点たるエチオピアの健康危機対応力強化に資するものであり、SDGsゴール3(健康な生活の確保、万人の福祉の促進)に貢献することから、事業の実施を支援する必要性は高い。
2-2 効率性
エチオピア政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。また、病院施設の建設予定地の形状(狭い斜面)を踏まえ、建物の設計を工夫し、地上2階地下3階とすることで、当初目安の範囲にコストを押さえつつ、かつ、当初予定の平米数を実現した。
2-3 有効性
本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2031年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- 定量的効果
- 感染症に係る臨床研修を修了し、修了時試験に合格した医療従事者が配置される医療施設数が0件から30件になる。
- 医療従事者の院内感染者数が0人になる。
- 本件施設で分娩した/手術を受けた患者であって術後30日以内に新たに感染症に罹患する患者の数が0人になる。
- 定性的効果
- 適切な感染管理を行うことができる施設整備により医療従事者の安全が確保され、医療従事者への院内感染・患者間の院内感染予防が徹底される。
- 検疫を行うエチオピア公衆衛生研究所との適切な連携によりアディスアベバ空港等の国境における海外からの重篤な感染症患者(疑い患者を含む。)を適切に隔離できる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- エチオピア政府からの要請書
- JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)