ODA(政府開発援助)

令和7年4月14日

評価年月日:令和7年3月5日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦

1 案件名

1-1 供与国名

 ナイジェリア連邦共和国(以下、「ナイジェリア」という。)

1-2 案件名

 社会課題に取り組むスタートアップ企業を支援する環境整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、ナイジェリアの社会課題解決に取り組む現地のスタートアップ(以下、「SU」という。)企業に対して投資を行うため、同国政府が設置するファンドに対して資金供与及びオンショア・ファンド運用環境の整備等を含むSU企業の持続的な成長に資する制度整備のための必要な協力を行うことにより、同国におけるSUエコシステムの形成・強化を図り、もってイノベーションによる社会課題解決を通じた持続可能な経済成長のための基盤づくりに寄与するもの。
 供与限度額は31.42億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、合意文書締結前にサブプロジェクトが特定できず、かつ、そのようなサブプロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるため「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)におけるカテゴリはFIである。なお、サブプロジェクトはカテゴリAに該当する案件を選定しないことを選定基準としている。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  1. ナイジェリア(一人当たり国民総所得(GNI)1,930ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  2. 同国は、アフリカにおいて人口規模第1位、経済規模もアフリカ有数の大国である一方、経済成長の原油依存及び貧困格差拡大が社会課題となっており、原油依存からの脱却、産業の多角化及び雇用創出の必要性が謳われている。かかる状況を踏まえ、同国政府は「国家開発計画2021-2025」において、産業多角化・経済改革を戦略課題の一つと位置付け、また、「国家デジタル経済政策・戦略」(2019年)においても、デジタル技術活用による経済多角化の方針を掲げている。
  3. 同国では、産業多角化をリードする存在として、SUへの注目が高まっている。同国には、巨大な市場と山積する社会課題にビジネスチャンスを見出す起業家やSUが多数存在する。2022年のSU資金調達額は約12億米ドルであり、4年連続(2019-2022年)でアフリカ最大となるなど、目覚ましい成長を遂げている。
  4. 他方、SUへの投資の半数以上が、金融に集中し、保健、教育、農業などの生活に密接する分野への投資額はそれぞれ数%にとどまり、投資が不足している。また、SUの資金は、ほぼ全てがオフショア・ファンドを通じた外国資本となっているが、国内に資金が還流しにくいという問題があるため、オンショア・ファンドによる資本市場形成が待たれている。オンショア・ファンドは、現地通貨での投資も可能であり創業初期段階のSUの資金ニーズに合致し、社会課題解決に取り組むSUの成長機会を実現しやすく、国内SUへの投資機会の増大、投資家層の多様化・拡大が見込まれることが期待される。
  5. この観点から、本計画は、これまでにないテクノロジーとアプローチを用いて現地の社会課題解決に取り組むSUを育成するための投資ファンドに対して、資金供与及びSU企業の持続的成長に資する制度整備のための協力を行うものであり、多様なSUを育成して同国のSUエコシステムの形成・強化を図り、もってイノベーションによる社会課題解決を通じた持続可能な経済成長のための基盤づくりを促進する上で有意義である。また、我が国の対ナイジェリア国別開発協力方針(2023年9月)においては、「持続可能な経済成長のための基盤づくり」を重点分野の一つと位置づけ、SUエコシステム構築・強化に取り組むとともにビジネス環境改善・イノベーション推進に協力することとしており、本計画は同方針に合致する。また、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)でも「SU中心の社会課題解決型ビジネス」への支援の重要性が確認されている。さらに、SDGsゴール8(包摂的で持続可能な経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ構築)に貢献し、SUの活動分野に応じ、その他のSDGsゴール(2(農業)、3(保健)4(教育)、6(水と衛生)等)にも貢献することが見込まれる。
  6. 2-2 効率性

     設計監理業者(コンサルタント)については本邦企業とすることが想定されているが、運営管理者(ファンドマネージャー)については、現地企業又は第三国企業を活用することにより、コスト縮減を図っている。

    2-3 有効性

     本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成年の2038年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

    1. 定量的効果
      1. 本ファンドによるSUへの投資件数が、0件から90~120件となる。
      2. 民間等からの追加的資金動員額が、0から3.5ドル(1ドル当たり)となる。
      3. 本ファンドによる経営支援サービスを受けたSUの割合(投資を受けたSU比)が、0社から7割となる。
      4. ファンド運営機関がSUに対して実施するインパクト評価が、0社から90~120社となる。
    2. 定性的効果
      1. 本事業で組成されたファンドの運営を通して、ナイジェリアにおける社会課題解決に取り組むSUエコシステムが構築・強化される。
      2. 政府/民間のオンショア・ファンド市場が活性化される。
      3. ナイジェリアにおけるSUエコシステムと日本企業とのネットワーク強化や、日本企業(投資家含む)から投資の促進がされる。
      4. ナイジェリアにおける社会課題解決に取り組むSUが持続的に生まれ成長することによって、インパクト評価達成に付随した同国の社会的課題の解決につながる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  1. ナイジェリア政府からの要請書
  2. JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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