ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年4月14日
評価年月日:令和6年11月6日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦
1 案件名
1-1 供与国名
ナイジェリア連邦共和国(以下、「ナイジェリア」という。)
1-2 案件名
アブジャにおける起業家支援施設整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、首都アブジャにデジタル工作機材等を有するスタートアップ(以下、「SU」という。)・ハブ施設を新設することで、製造業のビジネス創出機会の拡大及びSUエコシステム関係者間の連携促進を図り、もってナイジェリアにおけるイノベーションによる社会課題解決と新規産業創出による産業多角化に寄与するもの。
供与限度額は16.34億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- ナイジェリア(一人当たり国民総所得(GNI)1,930ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
- 同国は、アフリカにおいて人口規模第1位、経済規模が有数の大国である一方、経済成長の原油依存及び貧困格差拡大が社会課題となっており、原油依存からの脱却、産業の多角化及び雇用創出の必要性が謳われている。かかる状況を踏まえ、同国政府は「国家開発計画2021-2025」において、産業多角化・経済改革を戦略課題の一つと位置付け、「国家デジタル経済政策・戦略」(2019年)において、デジタル技術活用による経済多角化の方針を掲げている。
- この点、同国では、産業多角化をリードする存在として、SUへの注目が高まっている。同国には巨大な市場と山積する社会課題にビジネスチャンスを見出す起業家やSUが多数存在する。2022年のSU資金調達額は約12億米ドルであり、4年連続(2019-2022年)でアフリカ最大となるなど、目覚ましい成長を遂げている。
- 他方、同国のSU市場は拡大傾向にあるものの、同国発の革新的な新技術・産業の創出とその社会実装を進めるためには、資金・技術・人的リソースを持つ産官学の様々な関係者が有機的に連携し、SUの創業・成長支援を行う環境であるSUエコシステムの構築・強化が必要である。
- この観点から、本事業は、デジタル工作機材等を有するSUハブ施設を建設するものであり、包括的かつ切れ目のないSU向け支援の提供及び関係者間の連携を促進する上で有意義である。また、我が国の対ナイジェリア国別開発協力方針(2023年9月)においては、「持続可能な経済成長のための基盤づくり」を重点分野の一つと位置づけ、SUエコシステム構築・強化に取り組むとともにビジネス環境改善・イノベーション推進に協力することとしており、本計画は同方針に合致する。さらに、SDGsゴール8(包摂的で持続可能な経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ構築)にも貢献するものである。
- 同国は、JETROが実施する「2023年度アフリカ進出日系企業実態調査」において、日系企業が注目する国として第2位となり、同国への進出日系企業も50社以上に上るなど、日系企業の同国への関心は高い。この点、本事業は、ナイジェリアが切望する自国の工業化を後押ししながら、日系企業とナイジェリアSU企業との連携強化促進の機会を創出することができ、ひいては二国間関係強化にも資するものである。
- 定量的効果
- 新設されるハブ施設の年間利用者数が、0人から3,000人となる。
- ハブ施設を活用した年間SU数が、0社から30社となる(うち2社は日系企業と連携しているSUの想定)
- ハブ施設が提供する年間SUエコシステム間ネットワーク形成促進プログラム数が、0件から40件となる。
- ハブ施設を利用して複数機関が連携して実施した年間共同プロジェクト数が、0件から18件となる。(うち2件は日系企業が連携して実施した共同プロジェクトの想定)
- 定性的効果
- ナイジェリアにおけるSU起業支援環境の改善(ナイジェリア政府により提供されるSU支援プログラムの量・質が強化される)
- ものづくり市場の活性化、ものづくり系SU創業のボトルネックの解消・低減、SUエコシステムの活性化
2-2 効率性
品質及び生産量ともに問題のない建設資機材に関しては、可能な限りナイジェリア国内での調達を検討し、コスト低減、維持管理の容易性を図る。また、材料の入手とメンテナンスが比較的容易な機材、原則として既存機材と重複しない、機材の運用維持管理などの観点から機材を絞り込む。
2-3 有効性
本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- ナイジェリア政府からの要請書
- JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)