ODA(政府開発援助)

令和2年11月9日

評価年月日:令和2年7月30日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋

1 案件概要

(1)供与国名

 ミャンマー連邦共和国(以下、「ミャンマー」という。)

(2)案件名

 東西経済回廊幹線道路整備計画(バゴー-チャイトー間新道路)

(3)目的・事業内容

 交通需要の急増が見込まれる東西経済回廊のバゴー・チャイトー間に新規で整備される予定のバイパス上に新規橋梁を整備するとともに、道路・橋梁の維持管理体制強化に向けてツワナ研究・研修センターを改修することにより、ミャンマー国内及び国際物流の効率化を図り、もってミャンマーの持続的成長に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 新シッタン橋の建設
    • ツワナ研究・研修センターの機材調達・施設建設
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
277.79億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる道路、橋梁セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
用地取得及び住民移転
 本計画では、5.3ヘクタールの用地取得及び物理的な住民移転4世帯(24人)を含む20世帯(106人)の被影響住民が発生し、ミャンマー法令及びJICAガイドラインに基づき作成された住民移転計画に沿って適切な補償及び用地取得が進められる予定。なお、被影響住民から事業に係る特段の反対意見は出ていない。
外部要因リスク:特になし。
その他
 アジア開発銀行(ADB)が整備予定のバイパス区間は、本事業と不可分一体の事業であり、想定される影響に応じた適切な環境社会配慮文書が作成されていることを確認済み。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、タイ及び中国のメコン河流域において、連結性向上を目指し、大メコン圏(GMS)経済回廊の整備が進められており、そのうち東西経済回廊は、ベトナム・ラオス・タイ・ミャンマーを横断するルートであり、タイ・ミャンマー間を陸路で結ぶ主要ルートである。
 ミャンマーにとって主要貿易相手国であるタイとの主な輸送手段は海上輸送であるが、今後も同国との貿易量は増加が見込まれるため、タイ・ミャンマー間を陸路で結ぶ東西経済回廊の整備により、物流効率化を図ることが重要である。他方、東西経済回廊のミャンマー国内区間は、橋梁の老朽化に伴う重量制限、急勾配・急カーブ、市街地の通過等、多くのボトルネックを抱えている。
 また、同国では、新規の道路・橋梁の建設が急速に進められているが、整備された道路・橋梁の維持管理を実施する十分な能力を有した技術者が不足しており増強が急務となっているが、建設省(以下、「MOC」という。)職員の主たる技能研修機関であるツワナ研究・研修センターでは、施設や機材が老朽化しており、質・量ともに十分な研修が実施できなくなっている。
 かかる状況下、同国政府は、全国運輸交通マスタープラン(2015年)において、東西経済回廊を整備の優先度が高い回廊に位置付け、2016年7月に発表した経済政策の中でも「電力、道路、港湾といった基礎的経済インフラの迅速な整備」を優先的に実施するとしている。また、同国政府が2018年8月に発表した「Myanmar Sustainable Development Plan(2018~2030)」においても、アクションプランの一つとして「国際幹線道路の品質向上」が掲げられている。
我が国の基本政策との関係
 2012年4月策定の我が国の対ミャンマー経済協力方針において、「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」が重点分野の一つと位置付けられており、本計画は同方針に合致し、かつSDGsゴール9(強靭なインフラ構築)にも貢献するものである。
 また、東西経済回廊の整備は、2016年7月に我が国が発表した「日メコン連結性イニシアティブ」における協力の柱の一つとされており、東西経済回廊を通じてミャンマーをインド洋のみならず、太平洋側の経済圏とも連結させることで同国の繁栄の選択肢を広げることにより、「自由で開かれたインド太平洋」の実現にも資するものである。
 本計画の実施により、同国の持続的経済成長を後押しすることは、二国間関係の強化に資するとともに、同国における我が国のプレゼンス向上にもつながることから、外交上の意義も大きい。

(2)効率性

 ADBとの協調融資にてコーカレー・モーラミャイン区間を整備・改修中であり、有償資金協力「東西経済回廊整備計画」(2015年)にて、同区間の3橋を整備中である。
 また、技術協力「道路橋梁技術能力強化プロジェクト」(2015年~2019年)にて、本事業の実施機関であるMOCの橋梁・コンクリート建造物建設に係る施工監理能力の向上を支援している。さらに、2020年より「道路橋梁維持管理能力強化プロジェクト」をMOCに対して実施する予定であり、技術者へのトレーニングの実施、各種マニュアルの作成等を通して、維持管理を実施する技術者の能力向上が期待される。なお、同技術協力プロジェクトでは、ツワナ研究・研修センターの講師となり得る人材育成も実施予定であり、連携が期待される。

(3)有効性

 本計画の実施により、バゴー・チャイトー間において事業完成2年後(2028年)には、2017年比で以下の成果が見込まれる。

  • ア 年平均の一日あたり交通量が、15,579台から53,286台(既存一般道+新規バイパス)に増加する。
  • イ 所要時間が、2.27時間から0.8時間(新規バイパス利用時)に短縮される。
  • ウ MOC職員の研修所での受講者数が、1,061人/年から2,000人/年に増加する。
  • エ 物流の効率化を図ることにより、周辺国との貿易活性化に寄与する。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価)」報告書(2014年度)(PDF)別ウィンドウで開くJICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAより提出された資料。
 本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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