ODA(政府開発援助)

令和2年11月9日

評価年月日:令和2年8月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋

1 案件概要

(1)供与国名

 ミャンマー連邦共和国(以下、「ミャンマー」という。)

(2)案件名

 中小企業金融強化計画(フェーズ3)

(3)目的・事業内容

 中長期及び緩和的な担保条件による中小企業向けの資金の供与及び金融機関向けの能力強化支援を実施することにより、ミャンマーの中小企業金融に係る資金仲介機能の円滑化、及び中小企業の生産・投資の維持・拡大を図り、もって新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)による経済的影響の緩和・安定化、及び同国の産業及び経済の健全な発展並びに雇用維持・創出に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 中小企業育成ツーステップ・ローン
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
    150.0億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境社会配慮
本計画は、JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず、かつ想定されるサブ・プロジェクトが環境に影響を及ぼすことが想定されるため、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)上、カテゴリFIに該当する。
 本計画では、金融仲介者/実施機関が、ミャンマー国内法制度及びJICAガイドラインに基づき、各プロジェクトについてカテゴリ分類を行い、該当するカテゴリに必要な対応策がとられることになっている。なお、想定されるサブ・プロジェクトにカテゴリA案件は含まれない。
外部要因リスク
特段なし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ミャンマーでは、中小企業が登録企業の99%、雇用全体の約8割を占めるとも言われており、主要な経済主体となっている。しかし、多くの中小企業は、高い金利条件や短い返済期間、厳格な不動産担保条件等の制約から、金融機関からの借り入れによる資金調達が困難な状況にあり、中小企業は経営の安定化や事業の拡大に必要な資金を十分に確保することができず、成長の大きな足枷となっている。特に、2020年1月以降、COVID-19の感染拡大により、手元資金が十分でない中小企業は特に大きな打撃を受けており、縫製業、観光業、農産品輸出等のセクターでは、一部の中小企業が需要減や資金繰り難等から企業活動の停止や従業員解雇に追い込まれている。
 こうした中、同国政府は、COVID-19の感染拡大を受けた経済対策として、2020年3月には、COVID-19の影響により最も経済的打撃を受けた企業を支援するため、1,000億チャット(約76億円)の基金を創設し、中小企業を同基金の優先支援セクターの一つに位置付けたほか、4月27日にはCOVID-19 Economic Relief Planを発表し、同基金の拡大方針を掲げており、これまで実施した同計画フェーズ1及びフェーズ2が最終貸付を完了していることから、間断なく支援を継続するため本計画を早期に実施する必要がある。
 なお、同国政府は、2018年8月の「ミャンマー持続可能な開発プラン」において、雇用創出・民間セクター主導型成長を目標の一つとしており、特に、中小企業の発展を通じた雇用創出を支援するとともに、金融サービスへのアクセス拡大に取り組んできている。
我が国の基本政策との関係
 2012年4月策定の我が国の対ミャンマー経済協力方針において、「経済・社会を支える人材の能力向上や制度の整備のための支援」が重点分野の一つと位置付けられ、また、2016年11月に発表された「日ミャンマー協力プログラム」においては、「都市部の製造業集積・産業振興」、「金融制度整備支援」が9つの柱の一つとして掲げられており、本計画はこれらの方針に合致する。さらに、SDGsゴール8(経済成長・雇用)及びゴール10(不平等の是正)にも貢献するものである。
 また、本計画により、COVID-19による経済的影響の緩和・安定化、ミャンマー産業及び経済の健全な発展並びに雇用維持・創出に寄与することが期待され、同国の持続的経済成長を後押しすることは、二国間関係の強化に資するとともに、同国における我が国のプレゼンス向上にもつながることから、外交上の意義も大きい。

(2)効率性

 円借款「中小企業金融強化計画(フェーズ1及び2)」においてツーステップ・ローンの実施に係る業務手順書を作成しており、本計画においてはその業務手順書を活用する。また、技術協力「産業競争力強化に向けた投資振興プロジェクト」(2019年~2024年)においては、サプライヤー育成支援のための地場企業と外資企業のマッチングプログラムを立ち上げ予定であり、さらに、技術協力「ミャンマー日本人材開発センタープロジェクト(フェーズ2)」(2018年~2023年)においては、中間管理職層を中心とした経営管理層を対象としてビジネスコースや、ビジネス情報・ネットワーク機会を提供しているミャンマー日本人材開発センターの組織体制強化を支援していることから、これら技術協力との連携を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により、仲介金融機関等の能力強化(新融資手法、審査能力・リスク管理能力強化等)を通じた中小企業金融機能の強化を図り、もってCOVID-19による経済的影響の緩和・安定化、ミャンマー産業及び経済の健全な発展並びに雇用維持・創出に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価)」報告書(2014年度)(PDF)別ウィンドウで開くJICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAより提出された資料。
 本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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