ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和2年3月13日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋
1 案件概要
(1)供与国名
インドネシア共和国(以下,「インドネシア」という。)
(2)案件名
ジャカルタ下水道整備計画(第1区)
(3)目的・事業内容
ジャカルタ特別州において,下水処理施設の建設及び下水管渠の整備等を行うことにより,同州の適正な下水処理の促進を図り,もって住民の生活・衛生環境の改善及び環境改善を図るもの。
- ア 主要事業内容
- 下水処理施設建設(処理能力240,000立方メートル/日)
- 下水管渠整備(総延長80キロメートル)
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 570.61億円 1.2%(固定) 25(7)年 アンタイド (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下,「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに分類される。なお,本計画の環境影響評価(EIA)報告書は,2018年12月にジャカルタ特別州の環境管理局が承認済み。
- イ
- 本計画は,政府所有地の下水処理施設の整備及び管渠の埋設であり,用地取得及び住民移転は伴わない。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドネシアでは,近年の好調な経済成長に伴い,ジャカルタ首都圏や地方の拠点都市において都市問題(交通網・上下水道の整備や廃棄物処理の遅れ)が顕在化し,急速な経済成長にハードインフラの整備が追いついておらず,ジャカルタ特別州における下水道普及率は11%(2017年時点)に留まっている。こうした中,河川等の公共用水域や地下水の水質汚染に起因する環境問題,住民の健康被害等,水環境問題が深刻化しており,下水道の普及と下水処理施設の整備が急務になっている。
ジャカルタ特別州では,JICAの技術協力により改訂された「ジャカルタ汚水管理マスタープラン」において下水処理区を15に分割し,施設整備率を20%(短期目標:2020年まで),50%(中期目標:2030年まで),80%(長期目標:2050年まで)に段階的に引き上げる整備計画を定め,同州中心部に位置する第1区及び第6区を2020年までに整備されるべき「優先事業」としている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
- (ア)2017年9月に発表した,我が国の対インドネシア国別開発協力方針では,(i)国際競争力の向上に向けた支援,(ii)均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に向けた支援,(iii)アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に向けた支援を重点分野としている。本計画は,下水処理施設の整備を通じてジャカルタ特別州の公衆衛生環境を改善することにより,均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に寄与するものであり,同方針に合致する。
さらに,本計画は,下水道整備を通じて水環境改善や下水・廃棄物処理などの衛生サービスへのアクセス確保に資するものであり,SDGsゴール6(安全な水と衛生へのアクセス確保)にも貢献すると考えられる。 - (イ)2017年11月の日インドネシア首脳会談において,本計画は,両国間の重要な協力案件として言及されていることから,本計画の実施を支援することは,両国間の協力関係を強化する観点から外交上の意義も高い。
- (ア)2017年9月に発表した,我が国の対インドネシア国別開発協力方針では,(i)国際競争力の向上に向けた支援,(ii)均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に向けた支援,(iii)アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に向けた支援を重点分野としている。本計画は,下水処理施設の整備を通じてジャカルタ特別州の公衆衛生環境を改善することにより,均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に寄与するものであり,同方針に合致する。
(2)効率性
2010年から2012年まで実施された「ジャカルタ汚水管理マスタープランの見直しを通じた汚水管理能力強化向上計画プロジェクト」では,ジャカルタ全域を15区に分け,短・中・長期計画を策定し,第1区,第6区を優先地域と位置づけた。また,2015年から2018年まで実施された「ジャカルタ特別州下水道整備にかかる計画策定能力向上プロジェクト」では,下水分野に係る計画策定強化,人材育成に寄与した。さらに,2014年以降,下水管理アドバイザーを公共事業・国民住宅省に派遣中であり,本計画の円滑な実施のために同省に対し助言を行う予定であることから,これらの技術協力案件との相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画の実施により,事業完成3年後(2028年)には,以下のような成果が期待される。
- ア 定量的効果
- (ア)下水道処理人口が989,389人増える。
- (イ)下水処理能力が240,000立法メートル/日増える。
- (ウ)下水処理施設からの放流水に占めるBOD濃度のデータが得られるようになり,かつ,20ミリグラムパ-リットル以下となる。
- (注)BOD:水中の有機物が生物化学的に酸化されるのに必要な酸素量のことで,生物化学的酸素要求量ともいう。
- イ 定性的効果
ジャカルタ特別州における下水道普及率の向上,住民の衛生環境の改善及び水環境保全に寄与する。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インドネシア国別評価報告書(第三者評価/2018年度),JICA環境社会配慮ガイドライン,その他JICAより提出された資料。
本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。