ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年5月27日
評価年月日 平成30年9月4日
評価責任者 国別開発協力第一課長 岡野結城子
1 案件概要
(1)供与国名
インドネシア共和国
(2)案件名
ジャカルタ下水道整備計画(第6区)(フェーズ1)
(3)目的・事業内容
ジャカルタ特別州において,下水処理施設の建設及び下水管渠の整備等を行うことによって,同州の適正な下水処理の促進を図り,もって住民の生活・衛生環境の改善及び環境改善を図るもの。
- ア 主要事業内容
- 下水処理施設建設 処理能力 47,500立法メートル/日
- 下水管渠整備 総延長 144キロメートル
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 309.80億円 1.3%(固定) 25(7)年 アンタイド (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに分類される。本事業の環境影響評価(EIA)報告書は2019年12月までにジャカルタ特別州の環境管理局により承認見込み。
- イ
- 本計画は政府所有地の下水処理施設の整備及び管渠の埋設であり,用地取得及び住民移転は伴わない。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドネシアでは,近年の好調な経済成長に伴い,ジャカルタ首都圏や地方の拠点都市において都市問題(交通網・上下水道の整備や廃棄物処理の遅れ)が顕在化し,急速な経済成長にハードインフラの整備が追いついていない。ジャカルタ特別州における下水道普及率は7%に留まっており,河川等の公共用水域や地下水の水質汚染に起因する環境問題や住民の健康被害等,水環境問題が深刻化しており,下水道の普及と下水処理施設の整備が急務になっている。
ジョコ政権は「中期国家開発計画」において2019年までに公衆衛生施設(家庭排水,下水及び廃棄物管理サービス)へのアクセス率100%を達成することを目標として掲げ,公衆インフラ拡充を重視している。
本件はインフラ整備の遅れに起因する都市問題を解決し,更なる成長を目指しているインドネシアにとって優先度の高い事業であるといえる。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
- (ア)2017年9月に発表した対インドネシア国別開発協力方針では,(i)国際競争力の向上に向けた支援,(ii)均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に向けた支援,(iii)アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に向けた支援を重点分野としている。本計画は,下水処理施設の整備を通じてジャカルタ特別州の公衆衛生環境を改善することにより,均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に寄与するものであり,同方針に合致する。
さらに本計画は,下水道整備を通じて水環境改善や衛生へのアクセス確保に資するものであり,SDGsゴール6(安全な水と衛生へのアクセス確保)に貢献すると考えられる。 - (イ)2017年11月の日インドネシア首脳会談において,本計画は両国間の重要な協力案件として言及されているところ,本計画は両国間の協力強化及び日本の外交政策の推進の観点から重要である。
- (ア)2017年9月に発表した対インドネシア国別開発協力方針では,(i)国際競争力の向上に向けた支援,(ii)均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に向けた支援,(iii)アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に向けた支援を重点分野としている。本計画は,下水処理施設の整備を通じてジャカルタ特別州の公衆衛生環境を改善することにより,均衡ある発展を通じた安全で公正な社会の実現に寄与するものであり,同方針に合致する。
(2)効率性
2010年から2012年まで実施された「ジャカルタ汚水管理マスタープランの見直しを通じた汚水管理能力強化向上計画プロジェクト」では,ジャカルタ全域を15区に分け,短・中・長期計画を策定し,第1区,第6区を優先地域と位置づけた。2015年から2018年まで実施された「ジャカルタ特別州下水道整備にかかる計画策定能力向上プロジェクト」では、下水分野に係る計画策定強化、人材育成に寄与した。また,2014年以降,下水管理アドバイザーを公共事業・国民住宅省に派遣中であり,本事業の円滑な実施のために同省に対し助言を行う予定。
本件の実施については,これらの技術協力案件との相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア
- 定量的効果(2016年実績値から2028年:事業完成3年後)
- (ア)下水処理人口(人) 0から195,000人
- (イ)下水処理能力(立法メートル/日)0から47,500
- (ウ)下水処理施設からの放流水のBOD濃度 データなしから20ミリグラム/リットル以下
- イ
- 定性的効果
ジャカルタ特別州における下水道普及率の向上,住民の衛生環境の改善及び水環境保全に寄与する。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インドネシア国別評価報告書(2007年度),JICA環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース,事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。