ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年1月24日
評価年月日:平成29年1月13日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件概要
(1)供与国名
ミャンマー連邦共和国
(2)案件名
農業・農村開発ツーステップローン計画
(3)目的・事業内容
ミャンマー農業開発銀行(以下MADB)への中長期資金供給を通じた農家等へのツーステップローン供与及びMADBへの能力向上支援を実施することで,ミャンマーの農業・農村開発金融に係わる金融仲介能力の円滑化及び農家の生産性向上を図り,都市・農村間の均衡ある発展並びに農業・農村金融セクターの近代化に寄与する。
- ア 主要事業内容
- 資金供与(MADBからの転貸を通じたツーステップローンの実施)
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 151.35億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価:本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」上,環境や社会への望ましくない影響が最小限であるため,カテゴリCに該当する。
- イ
- 外部要因リスク:特段なし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ミャンマーでは国民の約6割が農業分野に従事し,農林水産業のGDPに占める割合は,約3割である。ミャンマーでは,農家一戸当たりのトラクター等の生産資本所有量は小さく,日雇い労働者への依存度が高い。他方,国内外への出稼ぎや少子化により農業労働者の確保が年々難しくなっている低平地の穀倉地帯においては,営農の機械化が求められる。また,拡大する国内外の食料需要を取り込み地方部の農家の生計を向上するためには,多角化・品質向上のための資本投資を通じた農業競争力向上が求められる。
MADBはこれまで稲作の経常経費(肥料等)を対象とした短期融資を主に行っており,農業機械などの生産資本形成に向けた中長期融資は,MADB,民間金融業者とも,殆ど行っていない。また,農村部(タウンシップレベル)に支店を持つ銀行は限られるため,農村部の住民は高利貸しに頼らざるを得えない状況にある。このため,農村部に既に208支店(2016年5月時点)の支店網を確立しているMADBによる金融サービスの強化が必要である。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
2012年4月に見直した我が国の対ミャンマー経済協力方針においては,「国民の生活向上のための支援」を重点分野としている。本計画は,MADBへの中長期資金供給を通じた農家等へのツーステップローン供与による営農の機械化・農家の生産性向上を図り,都市・農村間の均衡ある発展並びに農業・農村金融セクターの近代化に寄与するものであり同方針に合致している。
(2)効率性
本計画の優先地域を設け,既に実施中の円借款「バゴー地域西部灌漑開発計画」と事業地域を重複させ,農業技術の改善・生産インフラの整備と本事業による生産資本形成との相乗効果による生産性向上を図る。
(3)有効性
本計画を通じ事業完成2年後の2022年には約1万6千戸の農家が生産資本形成に係る投資を行うことが可能となる。特に,高額であるため資金調達が投資のネックになっていると考えられるコンバインハーベスタ―(収穫作業を効率化する機械)等への投資促進を通じた農家の生産性向上が期待される。また,本事業ではMADBの担保要件の緩和等を行い,小規模農家の制度金融による金融包摂を進める予定。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価)」報告書(PDF),「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)
,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。