ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第466号
世界と日本を豊かにするODA(日本への裨益の事例2)
外務省国際協力局政策課
前回、ODAの日本への裨益の事例を紹介するシリーズの第1弾として「海洋を通じた結びつき」をご紹介しました。今回は第2弾として、「日本企業の海外展開支援」をご紹介します。
日本企業の海外展開支援
ODAによるインフラ整備支援は、日本企業の海外でのサプライチェーンや連結性の強化に繋がり、その海外展開を支えています。
インド初の地下鉄デリーメトロ(正確な運行、女性専用車両等)


日本は計画段階の1995年からデリーメトロを支援し、開業20周年を迎えました。メトロ建設工事だけではなく、日本は女性専用車両や整列乗車等も導入するなど、インドのメトロ分野では画期的な取り組みを続けています。日本の支援は、インドの混雑した通勤事情の緩和、大気汚染の削減や女性の利用しやすさに大きく貢献し、現地の政府や国民から感謝されています。また、インドの鉄道乗車に苦労していた在留邦人や海外旅行者も安心して乗車できる環境整備にも貢献しています。
日本企業の物流円滑化・貿易促進

インドネシアのパティンバン港では、日本企業も参加し、円借款による新港建設(コンテナターミナル及び自動車ターミナル等)が進められています。既存港の逼迫状況を改善し、物流の分散を図ることで首都圏全体の物流の効率化を図り、インドネシアの投資環境改善を通した更なる経済成長に寄与します。また、同地では、自動車関連企業を始めとした日系企業が多く集積しており、日系企業による自動車ターミナルの運営や日系メーカーの自動車輸出を通じて、日本企業の物流の円滑化・促進を後押しします。
タイの洪水対策支援で日本企業を支える

2011年8月から12月にかけて、タイ国を襲ったチャオプラヤ川最大の洪水は、死者752人と大きな被害をもたらしました。工業部門では7工業団地804企業が浸水被害にあい、そのうち日系企業は449社を占めました。将来、同じような災害を起こさぬよう、中・長期的な視点に立った対策支援(チャオプラヤ川流域の洪水対策マスタープランの策定、防災・災害復興に向けて必要な事業の概略設計、洪水予測システムの構築および洪水情報管理システムの計画策定)を実施することで同国の洪水対策の拡充に貢献しました。現地の日系企業の未来を守ると共に日本とタイ間サプライチェーンを守っています。
調査・普及実証等の支援で中小企業の海外展開を後押し(中小企業・SDGs ビジネス支援事業)
- (1)ボリビアの使われなくなった井戸修復のため井戸内部を可視化できるカメラで井戸を診断。その後、上記カメラの受注あり。同プロジェクトを通じ同社にとっても社員の海外経験・キャパビルに貢献(レアックス)。
- (2)雷災害の多いルワンダについて、ABEイニシアティブで来日したルワンダ人留学生からの雷災害の深刻さの話を聞いて同国でのビジネス展開を検討。避雷器の導入や、現地の人々(雷の正体が電気であり、基本的な科学の知識がないために被害に合うケースが多い)に対して技術支援を行うことで、同国の雷被害の対策に貢献することが見込まれます(音羽電機工業)。
(注)ABEイニシアティブ:「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」の略称。アフリカの若者に日本の大学の修士号取得の機会や、日本企業などでのインターンシップ、日本語研修、ビジネス・スキル研修などのビジネス・プログラムを提供し、アフリカの産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスの水先案内人となるような人材の育成を目的とするプログラム。 - (3)日本人観光客も多く訪れるフィリピンの観光地ボラカイ島では、飲食店や家庭から排出される廃食油の不適切な処理による環境負荷が課題となっています。日本の技術による廃食油の再資源化は、島の観光資源でもある豊かな自然環境保全への貢献と共に、廃食油を活用した地産地消のエネルギーとして期待されています。(金沢エンジニアリングシステムズ)。