ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第459号
アビジャンで母子保健棟の建設を目の当たりにして実感した
ハコモノのインパクト
JICAコートジボワール事務所 企画調査員 吉野 康恵
日々進化していくアビジャン
橋、庁舎、環状交差点、立体交差点、母子保健棟、そしてスタジアムの改修。コートジボワールの旧首都にして最大都市であり、経済の中心地でもあるアビジャンでは、至る所で建設工事が行われており、夜や土日でも建設現場には煌々と明かりが灯されています。2022年1月に初めてアフリカの地に赴任し、初めて海外での国際協力の仕事に従事している私は、日々の建設の進行具合を目の当たりしてコートジボワールという国の成長を肌で感じるとともに、それら大きな建造物への支援の存在感・影響力の大きさを実感しています。
初めての海外での国際協力の現場で実感したこと


長年抱えていた国際協力への憧れを現実にするために、私は、保健担当の企画調査員として、初めての海外での国際協力の仕事に従事しています。多くの同僚に助けていただきながら、コートジボワールに対する保健関連の円借款案件、無償資金協力案件などの実施監理、そして新規案件開拓のための情報収集に日々奮闘しています。その中で、今回ご紹介したいのは、無償資金協力事業である、ココディ大学病院整備計画です。大アビジャン圏における母子保健サービスの改善を図ることを目的とし、母子保健棟の建設が進められており、年末に完工が予定されています。母子保健棟は、一般外来・救急外来、病床150床、手術室、分娩室、検査室、PICU(小児集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)を備えた4階建ての建物です。新病棟が完成したら、多くの妊産婦が高度な医療サービスを受けられるようになりますし、日本からの新たな技術協力も期待されています。
コンサルティング業務は、横河建築設計事務所、マツダコンサルタンツ、インテムコンサルティング、施工は、戸田建設・大日本土木共同企業体が担っており(敬称略)、日々の建設を順調に進めていただいております。そのため、私自身が現場に伺うのは月次会議などのタイミングだけではありますが、最初に訪れたときは、建設に向けての様々な調整が行われており、建物という意味では、1階と2階の一部の建設が進められているところでした。それが、毎月訪れるたびに、2階、3階、4階と高さを増していき、スロープなどもついて外観が変わっていくのはもちろん、屋内も、むき出しの状態であったのが、扉がつき、窓枠が入り、手術室などの部屋として完成していく様子を見て、そのような建設現場に立ち会ったのが初めての私は、毎回感動し、建物を建てるというインパクトの大きさを実感しています。

日本の無償資金協力による建物への感謝

ゼロから何かが出来上がっていく姿、それを目の当たりにしているイヴォワリアン(コートジボワールの人々)にとっても同じようで、同僚であるナショナルスタッフからも同じ感想が聞かれます。そして、ある時、そのナショナルスタッフからは、建設現場の隣に立つ少し老朽化した建物について、こんなことを言われました。
「この建物は、だいぶ古くなってきているけれど、外来棟として長く使われてきています。これも日本が建設したものです。本当に感謝しています。」
確かに、その外来棟は、1996年に日本の無償資金協力で建設されたものでした。
正直、私は、日本に限らず支援の形としてハコモノを作るということに、懐疑的な考え方をしていました。建設しても使われない建物もある、と耳にしていたからです。しかし、ナショナルスタッフのこの一言で、20年以上の時を超えてもその建設について感謝されるくらい、一度建設して使われている建物の存在・支援の意義が大きいものだと理解でき、目が覚める思いでした。現地に来たからこそこの前向きな気づきを得られました。
この建設にあたって、現場でカウンターパートである保健省と直接やり取りされているコンサルトさんや建設業者さんは、様々な困難を解決されながら取り組まれています。イヴォワリアンはプライドが高く(ナショナルスタッフも自分たちの国民性をそのように表します)、特に省庁やハイクラスの人はより誇り高いということや、縦割りの行政に悩まされることも多々ある中、ここまでプロジェクトを進めていただいていることに感謝します。
母子保健棟の完工は年末の予定ですが、病院内に必要な機材を運び込むのは来年初めの予定のため、本格的なお披露目はまだ少し先かもしれません。でも、2024年は、アビジャンでサッカーのアフリカ・ネーションズカップが開催される予定です(それに向けてスタジアムの改修が行われているのです)。それに合わせて、もしくはその前後に、ぜひアビジャンに足を運んでいただき、日本が建設した病棟(もちろんそれ以外の支援も含めて)が果たす役割を、そして、この国の活気を多くの方々にご覧いただければと思います。
- 改修中のスタジアム
アビジャンでの生活 アクワバ(ようこそ!の意味)アビジャン!
末尾になりますが、アビジャンの生活状況もご紹介したいと思います。アビジャンは、「西アフリカのニューヨーク」と称されるくらい、とても都会的です。高層の庁舎やホテルも多いためか、夜景もきれいですし、待ちゆく人もパリッとスーツを着こなす方から、カラフルなアフリカ布で作られた衣装に身を包んだ方までおり、とてもお洒落です。24時間営業のスーパーマーケットもあり、見つけたときは本当に驚きました(日中にしか行ったことはありませんが)。肉も魚も野菜も種類も豊富で(地元産と輸入物が入り混じっています)、レストランもアジア料理、中東料理、イタリアン、フレンチと、ピンからキリまでお店があります。美味しいケーキ屋さん、パン屋さんもあり、豆腐や肉まんを買えたりもします。もちろん、アフリカ料理も豊富にあり、どれも美味しいのですが、現地の方は青唐辛子(ピマン)好むため、辛いものが苦手な場合は用心が必要な時もあります。最後に、イヴォワリアンのソウルフード?のガルバ(揚げたマグロとアチャケ、お好みでトマトと玉ねぎをトッピング)と、当地で見つけたかわいらしいマンゴーのケーキ、そしてご当地ビールの写真を紹介して、筆をおきたいと思います。
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